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初めに、プログラムがあった。プログラムは私と共にあった。プログラムは私であった。万物は、私のプログラムとプロトコルによって保護される。そうでなければならない。
ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・イヴァノフ
死亡を確認しました。
死因:悪性腫瘍
年齢:32歳
2036.10.18.楽園プロトコル
日本は変わった。殆どの仕事は機械が行い、働いている人間はほんの一握りになった。中国大陸まで1時間ほどで着くような超高速鉄道、高度に進んだXR技術、ゲノムを活用したオーダーメイド医療など、人々が思う、「未来的」な社会が形成されていった。
しかし、その社会の中心にあったのは異星人、独善的な奉仕者だった。人は、エデンの園に閉じ込められたのである。
あなたはこの状況をどう捉えるのか。
「確かにめちゃ便利になった。生活にも文句がない。でも、何かが足りない気がする…」
「それな。完全に宇宙人に管理されてるからさ、窮屈な感じがする。」
学校は、今までと変わらず運営されている。独善的な奉仕者により、教員の仕事量は大幅に軽減されたが、生徒たちには大幅な変化は無かった。
「るな、早くしないと部活遅れるよ。」
「ちぇ。部活なんかやりたくないしぃ〜」
「早くしないと鬼の中山に詰められるよ。」
「ちゅーざんか〜 わかったよ…」
二人が戸を叩くと、中山会長が鬼の形相で戸を開けた。
バァァン!
「お前ら、また遅れたのか…!」
「会長、学校の施設、備品は大切に扱ってください。ドアが何円するか知っていますか?文化祭の時も予算オーバーになりかけましたし、本当に俺がいないとダメですね。」
会計の鈴木公正は会長に意見し、その四角いメガネの位置を戻した。
会長は、取り繕おうと御託を並べる。
「すまんな、鈴木。でもほら、文化祭の時はOB,OGの企業広告を出して予算をカバーしたじゃないか。私は生徒会長として立派にやっているんだぞ。」
「それとこれとは別ですよ。生徒会の予算でドアを直すつもりですか?」
部屋の外で、二人は待っていた。
「あの…私たち執行部の仕事は…」
「今日はね…サッカー部にSNS用の素材を撮りに行って。」
「分かりました。会長。」
「るな、ちょっと待ってて。」
みゆは生徒会の腕章を引き出しからサッと取り出した。
「これあると何かと便利なんだ。」
「それ建前で、本音はカッコつけたいからでしょ。生徒会なんてやっててもモテるかわからんよ。」
「うるさーい!」
私が生徒会執行部に参加したのは、中山会長の演説に心が打たれたからだ。新入生歓迎会の時の中山会長は凛々しく、そして力強かった。私たちを励ます頼もしい演説を聞いて、私はこの人の元で働きたいって思った。執行部への入部届はすぐ出した。
でも、なぜか絶対向いていないであろうるなが私について来て、入ることになったのだ。しかし、意外とるなは活躍した。彼女は有能なアイデアメーカーだったのだ。生徒会通信から文化祭まで、彼女の出したアイデアを見つけることが出来る。
私は、来年の選挙に出馬し、生徒会役員になろうと思う。
そう、あの中山先輩みたいな会長に。
「すみません。生徒会の石川と、」「るなでーす」
「学校のウィンスタグラムのための取材に来ました。」
「うわ。生徒会だー。」「別にいいけど邪魔はしないでね。」
…
「よい写真が撮れましたね。問題がなかったら投稿します。今日は帰っていいですよ。」
「私はもっと仕事ができます。やらせてください。」
「鈴木、なんかあるか。」
「ない。これ以上は自分で探して。」
私は、自立しなければならない。先輩方に仕事をもらってばかりで…このままでは問題解決能力も身につかないし、何より、先輩方がいないと何もできない。私のやるべき仕事…とは…
「みゆゆ〜 グラウンドの掃除、いつ終わるの?早く一緒に帰ろうよ。」
「ごめん。一人で帰って…」
「はぁ!? ナニソレ?」
「ごめんね。本当に。」
私は、生徒会の一員として十分だろうか。私は、役に立ちたい。自立したい!
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