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初めに、プログラムがあった。プログラムは私と共にあった。プログラムは私であった。万物は、私のプログラムとプロトコルによって保護される。そうでなければならない。


初めまして。人類の皆様。

私は…


自己紹介は省略しましょう。

率直に申し上げますと、あなた方を我々…というと語弊がありますか。私の管理下に置かせていただきます。


あなたたちは、科学を発展させ、暮らしを豊かにしていきました。しかし、地球には多くの問題がいまだに存在しています。そうですね…具体的なものだと気温の上昇でしょうか。これはあなたたちの生活に悪影響を与えます。ですから、早急に解決するべきです。


しかし、より大きな問題も存在します。核エネルギーを利用した兵器の打ち合い…すなわち、「核戦争」によるあなた方の絶滅のリスクです。

我々があなた方に介入したのはこれが最大の理由です。


あなたたちの惑星には、大小さまざまな勢力…「国」と呼ばれているものが存在します。代表的なものですと、アミリカ、華国、ラシヤでしょうか。

異論は認めます...


ともかく、我々はすべての国家勢力を併合させていただきます。


これは、必ずあなた方のためになります。問題はないですよね。


ありがとうございます。これより、あなたたちは我々の管理下です。

2036.10.7.楽園プロトコル


我が国の誇りは地に堕ちた。

誇り高き我が連邦、神聖なる我が祖国…!

最悪の結末だ。


しかし、私にはある友人がいる。聖教の隠遁者だ。

彼は私も持っていない世界の真理を知っている。

彼に聞けば、この状況を変えられるかもしれない。


2036.10.7.ミハイル・アレクサンドロヴィッチ・イヴァノフ


私は、東に向かった。長旅だ。多くの荷物は持てない。

日が昇る前、家を出た。


前半戦は鉄道で行ける。

しかし、後半戦は車、船、そして徒歩だ。

シベリアの岩地、沼地を寒さの中進んだ。


「旦那さんよお、あんたどこに行くんだ?この先進んでも特に何もないぞ。」


「少し、知り合いに用事がありまして…」


「んじゃ、東の方に集落がある。こっち側で人が住んでいるのは、そこしかない。昔は鉱山もあったけどな。ははっ。」


老人はヴォートカを飲みながら、私に話しかけてきた。

私はその集落に用はない。

用があるのは、集落ではなくて廃坑の方なのだ。

その近くに、修道院がある。

かつての禁教時代に密かに建てられた、半地下修道院だ。


秘密警察に見つからずに今まで残っていたとは、かなり興味深いことだ。

探すのに一苦労するかもしれない。


半地下修道院は、思ったより早く見つかった。

坑道を利用した修道院だったからだ。

私は少し恐怖を覚えた。少し目を凝らせば見つかる修道院が、秘密警察に見つからずにいたことが理解できない。


「こんにちは。誰かいますか。」


返事はない。

どうしようと悩んでいる時に、後ろから声がした。

「久しいな、ミハイル。」

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