井波浜区心霊屋敷事件―中編
「へっへっへ。やっぱり心霊スポットで待ち伏せは効率がいいなぁ~」
うーわ、めんどくさいのが出たよ。全身黒ずくめ、
霊視ができる私は
ああ、どうせ襲われるならステイサムくらいのイケオジに襲われたいなぁ。いや、それでもレ〇プは嫌だけどさ。
あ、こんな状況で割と余裕なのは、昔除霊の時にもっとひどい
私はじりじりと後ずさりしながら、後ろ手で
一メートル先にはおっさん。その後ろに目的の心霊屋敷。私の周囲にはうっそうとした
いや、おっさんが初手で足をつる確率にかけてひた走るか? あ、ランニングシューズ
「お、大声を出して警察を呼びますよ」
私はとりあえず決まり文句を口にする。自分でも
やっぱり、思考と心は別なんだね、私に関しては。では、頭でも自覚しよう。今、私は性的暴行を加えられそうになって心の底から
多分おっさんには最初からそう見えていたのだろう。彼は鼻息を荒くして、着ているフード付きパーカーのファスナーを少しおろした。
「中々にかわいい声をしているなぁ……突き上げた時にいい声で鳴きそうだ」
キモい。
「いくら
性欲を
「思ったより胸はなさそうだな。まあいい、穴があれば十分だ……ぐへへへ」
おっさんがこちらににじり寄ってくる。
と思ったら、彼は自分の腰に回していた右手をひゅんと振り回した。
「痛っ!」
私の左手に
「へへへ、
私がスタンガンを拾おうと踏み出す前に、おっさんの強烈なシュートが雑木林に炸裂した。
まずい。このままだと私は知らないおっさんに身も心も破壊された上に、おっさんの子供産まされちゃう。身の
そんなことを考えているあいだに、私の
「
おっさんの手が私の体に伸びてくる。一応
あ、息が
シミを数えていたら終わるかな、でも天井がないな。そんなことを考えて
「
おっさんが声のした方向を見る。私も首だけをそちらに向けてみた。
「その人から離れてください」
うわっ、めっちゃ美人! え、え、男? 女? わからんくらい
私が上半身を起こしてぼけっとしていると、その美人は私の方にやってきた。
近くで見るとオーラがすごい。美の
「大丈夫でしたか?」
「ちょっと待って。まだ
「はあ」
首を
「た、助けてくれてありがとうございました」
「この
おとりか何かのつもりだったんだろうか。確かにこの美少女(?)が
あ、すごいいい
実際に立って並んでみると、私が少し見上げるくらいの身長。髪は背中の中ほどくらいまでかな、ストレートだけどふんわりしてそう、
思ったより
「へー、
「……そうですね」
何か言いたそうだったなぁ。
あ、着ていた灰色のパーカーを
私はもそもそとパーカーを
「ところで、あなたはこんなところで何を?」
「ああ、私ね。幽霊を
気持ちあっけらかんと言ってみた。
予想通り、この子は固まっている。無理もないよねぇ、さっきまで〇イプされそうになっていた人が、両手を
大丈夫。
「えっ、お姉さん本物の
……なんかめっちゃ食いつかれたぞ?
「見えるんですか、幽霊。あっ、あの辺に浮かんでたりしませんか!」
……何も見えない。てか白っ、真っ白。三百六十度白、白、白。五センチ先も見えないよこれじゃ!
ここで私の
「ど、どうですか? いますか、幽霊」
こいつか。この美形少年少女か、全ての原因、滝塚市の光の柱は!
これはおそらく
幽霊案件に関わるようになってから五年しか経ってないけど、このレベルに出会ったの初めてだよ! そして二度とないと思うよ! 本当に人間か!?
ここはなんとしてでも出力コントロールを学んでもらわねばなるまい。主に私の目の健康のために。
「ええとね、非常に言いづらいことなんだけど。信じてもらえない
私は先程声がした方向を向いてみる。やはり視界は白のままだ。
「なんでしょうか」
「きみには
何かしらのリアクションがあったっぽいぞ。霊視切ってないから真っ白で何も見えないけど。
「まさか、僕にそんな力があったなんて……」
マンガの主人公かい。
「でも、僕幽霊見えませんけど」
「うーん、霊視ができるのと霊力が強いのとは別問題なんだよね。ほら、ボディビルダーにプロボクサーのフックができるかと言われると
「
私が言うのもなんだが、その
それはそれとして。私の言う事をある程度信じてもらえているようで何より。霊視は一度切っておこう、
では、次の
だけど悲しいかな、やはり才能の差というものがあって。身長と似ているかな、最初っから大きい人と、最初っから小さい人、そういう差は現実としてあるんだ。
だけど、霊力のいいところは体重みたいに増やすことができるってところ。
もちろん、限度はあるよ。体重増やしたいからって
でも、
なんか話が
というわけで、何とか理解してもらうために
それでは行きましょう。せーの。
「プランクってやったことある? お腹を引き締めるお手軽トレーニングなんだけど」
「ありますよ」
話が早い。助かる。
ちなみに、プランクとはうつ伏せになり、肘を九十度曲げた状態で
「霊力のコントロールはあれと感覚が一緒。
うん、これが一番わかりやすい。筋肉と霊力ってすごい
私の目の前にいる子は
うわ、まだ真っ白。もう少し待つか。
そしてきっかり三十秒後。
……いや、確かに私は絞れと言ったよ。だけど初めてでここまでうまく絞れると思ってなかったよ。
もう少し
ともかく視界は確保できた。この子を
「すごい、初めてなのにほぼ
「ありがとうございます」
しゃべる光の柱。声は声優。
「これで周りが見えるようになった……近くに幽霊はいないみたいだね」
「そうですか……」
光の柱が少しこっち向きに
切り上げ時かな、と思った私は、パーカーを借りパクしていることに気づかず、くるりと後ろを向いた。
「じゃあ、私はこれで」
どの口が言っているんだよ、というツッコミが頭の中に
――続く
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