第5話 魔法統一会



如月は別に小鳥遊累と一緒だから魔獣を突撃させたわけではない。


今の神宮寺が小鳥遊累に劣等感を抱いているわけではないことくらい彼女は知っていた。


だからたまたまだったのだ。たまたまこの日に小鳥遊累としゃべっていただけだったのだ。


「さぁ神宮寺郎、その魔獣を倒してみろ、さもなくばこいつらを皆殺しにするぞ」

「………如月、てめぇ」

「何が起こって………」

神宮寺は壁を破って現れた如月を睨む。小鳥遊累は状況がつかめずおどおどとしている。


「ははっ」

「ぐっ」

如月はただ笑い、下に敷いている竜胆雅の腹をける。


後ろには神宮寺と関わりのある、テニス部の皆、クラスメイト達が囚われている。彼らは皆絶望に瞳を染めている。目に涙をため、体が震え続けている。


なるべく神宮寺が焦るように、絶望するように、如月は神宮寺の周辺の人間関係を洗っていたのだ。彼女は笑う、より醜悪に、より嘲るように。


絶望を神宮寺に与える。


「さぁ踊れ、神宮寺郎」

「………ごめん、ごめん、神宮寺」

竜胆は神宮寺の顔をも見れずにただ下を向く。目元は赤くはれている。


(………状況がまるでわからない、けど目の前のこの女性が神宮寺の敵だということはわかった、なら俺の敵でもある)

小鳥遊累は止血を済ませた後冷静に今の状況を分析し目の前で起こっていることについて理解しつつあった。


(だがあのでっかい動物みたいなのとまともに戦えるのは神宮寺だけ、でも今の神宮寺は………)

そう思い、小鳥遊累は神宮寺の方に視線を向ける。


神宮寺の体はボロボロだ。腕の肉はとけ骨まで現れ、顔はやけどのせいで半分黒焦げだ。足からは謎の黄色の液体がたれ流れ、最早立っているのが不思議なほど彼はふらふらだった。


それでも、彼は、彼だけは、絶望をしていなかった。


「おい竜胆、何勝手に俺が負けたみたいに言ってるんだ?俺はまだ負けてねぇぞ」


なお彼は笑う、神経がまだ焼き切れていない片方の顔を無理やり動かして不器用に。


「………神宮寺」

竜胆はすがる、そのあまりにもたよりない、だが芯が通った一本の枝に。


「ははっ!!いい!いいぞ!神宮寺!もっともっと頑張れぇ!その後の絶望がよりおいしくなる!!!」

如月は興奮したためか、緑髪を赤色に染め上げ歯をかみしめ震えあがる。


「ぐるぅぅぅ」

「ふぅ、やるしかない………」

神宮寺は拳を構え、魔獣を見据える。


それに合わせ魔獣も牙をかちあわせ、細い目をさらに細める。


(あいつは、神宮寺はやるつもりなんだ、あの傷でも立ち向かおうとしている、今の俺には応援することしかできないけど………けどこの応援がせめて君の力になれば)

「いけぇぇぇ神宮寺ぃ!!」

小鳥遊累は叫び、それに呼応するように神宮寺は飛び出した。

「しゃっあ!!」

神宮寺は手に炎を浮かべ、魔獣の顔に向かって放つ。当然魔獣の息によって魔法はかき消され無散する。


だがそうなることくらい神宮寺もわかっている。


だからそれを見越して、水の魔法を追加で放っていた。


狙いは炎と水による蒸発である。


その蒸発によって煙が立つ。その合間をぬって神宮寺は魔獣の背中に立つ。


(くらえ!)

「きゅぁぁぁぁ!!」

心の中で意気込んでから神宮寺は手から電気を放ち、硬い毛皮に包まれた肉に直撃させる。一般人なら即死級の電気魔法だったが相手は巨大魔獣、少しひるむだけにとどまる。


その隙を狙い、今度は風魔法を鋭利に尖らせるように出して皮膚にほんの少しの切り込みを入れた。


怯みがとけた魔獣は後ろ足で神宮寺をける。それを後ろにわざと飛ぶことで威力を軽減………したかったのだができず、壁に叩きつけられる。


「かはっ!」

神宮寺から乾いた息が漏れ、俯けに倒れる。


すぐに起き上がりもう一度魔獣の方を睨みつける。

「きゅるぅぅぅ」

明らかにさきほどよりも毛を逆立てており牙の色が白から黒に変色している。


「はっ、はっ」

片側半分の視界は焼けたことでほぼみえておらず、少しの風が吹くだけで吐き気がするほどの痛みにさいなまれる。


足が無事なおかげでなんとか機動力を保ってはいるがそれもいつまで続くかわからない、現に神宮寺の足はがくついており、ふらついている。


「すっ」

そんな足に鞭うって神宮寺は飛び出し、まだ無事な左腕に風の魔法を貯めて先ほどのものと同じように鋭利さを増して放つ。


魔法を扱う時間が多くなると、このように魔法をある程度変形することも可能である。


「きゅるぅぅぅ!!」

魔獣はその強靭な黒い牙で風魔法を砕いて見せる。

(あの牙、相当硬いな)


現在神宮寺が使える魔法は基礎といわれる”炎”、”水”、”風”、”雷”の4つだけである。それ以外の応用魔法は今までの修練時間的にも足りていなかった。


彼は、今ここでこの4つだけの魔法で目の前の巨大な魔獣を倒す算段をたてなくてなならない。


「………でもっ、狙い続けるしかないよな」

一度神宮寺は教室を離れ廊下に出る。当然魔獣もその神宮寺を追いかけ教室の扉破壊して廊下に出る。


「んぅ?何かおもしろいことでもやろうとしているのか、神宮寺郎」

それを見て如月はニヒルに笑い腕組をする。

「………おい、お前」

如月を敵と判断した小鳥遊累は如月のことを睨みつける。


「なんだお前、今お前に構っている余裕はない」

「その人達のことを離せ」

「なぜお前のような雑魚の命令に従わなくてはならない、モブは黙ってそこで観客を演じてろ」

如月が人睨みすると小鳥遊累は一歩下がり押し黙る。

だがその目は決してあきらめていない。


否、如月は小鳥遊累のことをモブなどとは見ていない。彼の中にある潜在能力は目を見張るものがあるし、その正義感も決してモブが持ちえるものではない。


だがそれでも、彼女の目を引いて離さないのは神宮寺なのだ。鮮烈にまで輝き続ける神宮寺を見ていると小鳥遊累は一歩劣っていた。


だから彼女は小鳥遊累の魔力覚醒を彼女の能力によって阻害した。二人目の主人公はいらないと言わんばかりに。


そのような真似をするくらい神宮寺郎という存在が彼女の中では肥大化していたのだ。


彼を絶望させたくて仕方ないのだ。


「ゆるざないっ、ゆるざないっ!お前を私は許さない!!」

「あっそ」

「がっ!」

竜胆が叫ぶと、それをとがめるように自分の足を竜胆の口につっこんだ。


そのときの如月の目はひどく暗く心底見下しているようだった。

「さて、あいつは今何をしてるのかね」

如月は親指と人差し指をつけて簡易の穴を作る。


それをのぞくと魔獣と神宮寺郎が戦っている。


「しゃぁぁぁっ!」

神宮寺の手には消火栓が握られている。

「あーなるほどそういうね」

その消火栓を見てまたも笑う。だがそれは今までとは違い、少し呆れに近いものだった。


「そんなめくらまし一辺倒じゃあ倒せないぞ」

だが彼は嘲笑する彼女の予想を遥かに超えていくことになる。


「これでもくらいやがれっ!」

消火栓を魔獣の前に漂わせる、その煙は一瞬の目くらましとしては有用だろう。だが神宮寺が相対しているのは巨大な魔獣、その知能は人間と大差はなかった。そんな相手に2度も同じ目くらましが効くだろうか?


応えは否である。


それが、同じ手法の目くらましだった場合に限るが………。

「きゅらぁぁぁぁ!!」


魔獣はすぐさま横に飛び、煙の中心地から逃げようとする。


だがそれに合わせて煙も追従を図る。なぜかわからないがその煙は決して魔獣から消えてくれない。

「くらえ、犬ころ」

「きゅらぁぁぁぁぁ!」

そして背後に回っていた神宮寺の手から大量に発射された鋭利な風魔法が魔獣の体を切り刻む。


小さい切り傷が大量に魔獣の体に作られていき、耐えかねた魔獣はたじろぎ体をひねり硬い爪を振るい神宮寺の腹に当てる。

「がっつっ!?」

大量の血が神宮寺の腹からあふれ内臓の一部が零れ落ちそうになりながら、勢いのまま何枚もの壁を突き破り元居た教室に戻ってくる。


「魔法の併用か、この気狂いめっ!」

「神宮寺っ!」

如月はさらにぼろぼろになって帰って来た神宮寺を見て豪快に笑う。対して小鳥遊累は自分の無力感にさいなまれ、唇をかみしめながら叫ぶ。


そう神宮寺は風魔法を使い煙の流れをコントロールしていたのだ。だがこれは風魔法を解いてしまえば一斉に無散してしまうもの。それを維持しなくてはいけない。


そんな状況で彼が行った攻撃方法とは魔法の同時使用である。


通常魔法とは一つ使用している間もう一つの魔法を使用することなどできない。


だが自分の脳に多大な負荷を背負わせることで併用することは可能である。しかし使えば脳に破損が起き植物人間になりかねない危険行為なのだ。


幸い今回はそのような事態には至っていないようだが脳の疲労により、視界が暗くなっていく。


「はぁっはぁっはぁっ」

腹からの出血は絶え間なく続いており、下に血の池を作る。

「きゅるぅ」

だが魔獣の方に入ったダメージは大したものではなくほとんどが切り傷、ダメージの差は歴然であった。


「………っ、」

竜胆は何もできない、そして何もしてこなかった自分を呪い、瞳に涙を浮かべる。


それもそのはず彼女は大量の魔力を保有しているにも関わらず実生活の方を優先したためろくに魔法というものを学んでこなかった。それでも並みの魔法使いより断然強かったのだが如月は別格であった。


もし彼女が魔法の訓練をしていたとすればこの状況は変わっていただろう。少なくとも彼女が如月の下に敷かれて何もできない、という状況は回避できたはずだなのだから。


(ごめん、ごめん、ごめん、私がっ私が弱かったせいで)

よりどころとしていた枝が折れた音がした。


竜胆の瞳から生がなくなっていく。それは後ろでとらえられているクラスメイトやテニス部員たちも同様であった。


”今の神宮寺郎じゃあの化け物には勝てない”その共通認識が空気を重くする。


(………呪いはつけたから、死ぬことはない、だがなぜあいつの傷が回復しかかっている?呪いは死ねないだけで回復はしないはずなんだが)

そんな重い空気をまるで気にせず如月は目の前で起こっている違和感に眉をひそめていた。


神宮寺は確かにぼろぼろで吹けば飛ぶようにふらふらだ。だがさっきまで大量に流していた腹の血はもう止まっており、骨までむき出しだった腕の傷は塞がりつつある、そしてちょっと前につけられたやけど痕すらきれいさっぱりなくなっている。


「………はっやはりおもしろいな神宮寺郎」

如月はこの先の展開が気になって仕方ないという風に無邪気に笑った。


回復しているとはいっても以前有利なのは魔獣である。


「はっ、はっはっ」

「負けんな、負けんなよ神宮寺」

満身創痍の神宮寺を見ても小鳥遊累は彼を応援し続ける。


小鳥遊累は神宮寺に依存にも似た異様な感情を抱きつつあった。神宮寺を神格化し情景としてとらえ始める。


そしてそんな思いも打ち砕くように如月は口角をあげる。


「やれ」

それは短い如月からの命令、その命令を聞いた魔獣は口を大きく開き………。

「はぁはぁ………」

魔獣の口の中には大きな光が溜まっているのが見えた。それを見て神宮寺は血の気を引かせる。


「あれ、は」

すべてを無にする光線、それは小鳥遊累も知っている。もう一度あの光線が神宮寺に当たってしまえば確実に死んでしまう。


神宮寺には避ける気力も体力もないはずだ。


でもそれは神宮寺の勝ちを願っている彼にとっての負けである。


そう考えたときその体は自然と動いていた。


「やめろぉぉぉぉぉぉ!」

「小鳥遊!?」

そしてその攻撃がなんなのかわかっていた小鳥遊累はレーザーが発射される瞬間魔獣に体当たりをして、軌道をずらさせる。


レーザーは明後日の方向に向き「どぉぉぉぉん」という振動音とともに天井を貫通し、天高く昇っていった。


「ちっ、邪魔」

無論それを許す如月ではなく、すぐさま小鳥遊累を殺そうと空中から刀を取り出し、それを小鳥遊累の首に向かって振るう。

「………ごめん、神宮寺、お前だけは死ぬなよ」

そうなることを予見していたのか小鳥遊は諦めたように笑う。


「おい如月、俺がこの魔獣に勝つんだからそいつには手を出すな」

神宮寺は首を切ろうとした如月をとがめにらみつける。

「………はっ、別に人質一人くらい減ったところで構わないだろう?」

だが如月はその睨みすら無視して刀を振り上げる。


「そいつは!」

その神宮寺の大声によってびたっと如月の腕の動きが止まった。

「そいつは俺の友達だ」

「………………」

「お前………」

小鳥遊累はうれしそうに歯をかみしめる。


そしてその一言によって振り下ろされかけていた腕は下ろされ、はち切れんばかりの笑顔を見せた。


「そうだ!そうだったねぇ!いいやぁむかついて忘れてたよそのことを!あぁぁぁぁ私はなんて許されざることをしていたんだぁぁ!」

「………ちっ極悪人が」


彼女はどこまでいっても悪人である。そして神宮寺郎の絶望のためなら自分の感情すら押し殺せるほどの猟奇性を持ち合わせているのだ。


「だが神宮寺郎、君はどうやってあの魔獣に勝つのだ?」

「まぁ見てろ変態、俺が教えてやる弱者なりの勝ち方ってやつを」

「………君は弱者ではないと思うけどね」

神宮寺はただまっすぐ魔獣を見据える。


どうやら光線を打った影響でけほっけほっとせき込んでいる。


「神宮寺………」

竜胆は光の失った瞳で神宮寺を見つめる。


奇しくもこの場で神宮寺が勝てると本気で信じているのは如月と、依存している小鳥遊累、そして神宮寺自身だけである。


「いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「きゅらぁぁぁぁぁぁ!」

神宮寺は雄たけびを上げ掌に巨大な水の塊を作り出し、それを魔獣にぶつける。それは威力ではなく質量に寄せて作られたものであるため、対したダメージはない。


だがそのせいで魔獣の体はずぶぬれになる。


そんなもの気にする魔獣ではなかったのか水の魔法を喰らってもなお突進を仕掛けてきた。


その黒い牙を突き出した大きな口で神宮寺に噛みつきにかかる。


「くっそ!」

バックステップで避けようとするが勢いがたりなかったせいで肩に牙が食い込んでしまう。


「まだ、だぁぁぁ!」

神宮寺は右手に炎を、左手に水を発現させる。


「はっはっぁぁぁ!いいねぇ神宮寺郎!」

またも気狂いの行動をした神宮寺に興奮する如月。


「くらえぇぇぇぇ」

そしてその炎と水を混ぜあわせ水蒸気爆発を繰り出した。とてつもない暴風と蒸気が嵐のように教室に巻き起こる。


「ぐっなんだ、これっ」

小鳥遊累は嵐によって体が浮き上がろうとするのをなんとか近くにある壁につかまり回避する。

「………」

竜胆も同じく近くの壁にしがみつき、その爆心地を見続ける。


ほんの少しの希望を据えて。


「きゅらぁぁぁぁぁぁ」

「っ!!」

無論爆発の中心にいた両者が無事なはずもなく互いに吹き飛ばされる。


だが神宮寺は飛ばされそうになる体を風魔法でなんとか押さえつけ、とどまろうとふんばった。


爆発により腕はちぎれ、左目に木の破片が刺さっている。それでも嵐の中居場所をさとられまいと叫ぶのだけを我慢する。


そして残ったのは漂う煙の森。


「きゅるぅ」

幾度となく体験したこの状況に魔獣は思わず後ろを振り向いてしまう。


「………だよな、やっぱお前はそっち向くよな」

「きゅら!?」

それに気づいたときにはもう遅かった。


自分の正面に立っている神宮寺の雷魔法を防ぐ術はもう魔獣にはなかったのだ。


「チェックメイトだ」

「きゅらあぁぁぁぁぁぁぁ!」

魔獣に張り付いていた水を走る電気が多数の切り傷から体の中に入り込み、魔獣の心臓を麻痺させることに成功した。


神宮寺郎の勝利である。


「神宮寺、神宮寺っ」

竜胆は耐えられなくなった涙を存分に流し、勝利を喜ぼうとする。だがそれとは別に煙が晴れた後に現れた彼の体を見て絶句する。


左目には木の破片が突き刺さり、左腕はもうなくなっている。


それは竜胆にとって決して勝てたと言える状況ではない。


でもまだ間にあう、そう信じて彼女は走り出す。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「神宮寺っ、今、今治療するから!」

必死になって患部に自分の服を押し当て血を止めようとする。


「今は大丈夫だ、竜胆」

「でもっ」

「大丈夫」

神宮寺の言葉を聞いて一歩下がった。


「おい、如月俺は勝ったぞ早く皆を離せ」

神宮寺は竜胆の肩にぽんと手を置いた後如月の方を見る。


水蒸気爆発により目が焼けたせいか目つきが悪い。


「………そうだねぇ、君は確かに魔獣に勝った、これはほめられるべきことだ」

如月は醜悪に笑い、俺の方を見つめてくる。その言葉にどこか含みが感じられた。

「どういう意味だ、早く皆を」

「だめだよ」

「っ!?」

神宮寺の気づかなぬ内に背後に回り込んだ如月は耳元でそっとつぶやく。


そしてその両腕には竜胆と小鳥遊累が抱えられていた。

「私は魔獣だよ?人間との契約を守ると思うか?」

「てめぇ………」

二人は如月の腕の中で気を失っておりいつでも如月の手によって殺されるような状況だ。


「………いややはりこれはやめよう、私の美学に反する、それに面倒なやつらも来たらしい」

「あぁ?」

如月は二人から手を離したがもちろん神宮寺の怒りが収まるはずもない。


「よくやってくれた、私の英雄」

「てめっ何をっ!」

最後に耳元でそうつぶやいてから如月は姿を消した。


「くっそ、何だってんだ」

神宮寺が途切れそうな意識をなんとか保ち続けていたとき、後ろの壁が崩壊する。

(………なんで今日はこんなに壁が壊されるんだよ)

とついため息が出そうになったが、どうやら喉が焼かれてたらしくかはっという乾いた息した出なかった。


「………対象如月の逃亡を確認、そして規律違反者神宮寺郎の捕縛を開始します」

壁から乗り出してきたのは3,4人の人間だった。そのうちの一人来栖理亜が淡々とそう告げた。


(ははっもうちっと俺に優しくしてほしいもんだねぇ)




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