番外編① 聞かせてよ、昔のはなし

 本編は完結しましたが、書いていて楽しかったので番外編も。ダラダラ執筆するのをやめようと思って10話完結にしましたが、結局書いてしまいますね…。受験勉強の息抜きに、書きたいときに、更新します。 


 時間軸的には、二人が「先生と生徒」だった時のスピンオフです。6~7話の間のタイミングで春輝視点です。



 ***


 「じゃあ、平等院鳳凰堂は…?」


 今日は日本史の授業。夜遅い時間だが先生も俺もしっかりやる気があるのでけっこうはかどっている。


 「えっと…。藤原頼道?」


 「正解!修学旅行で行った?」


 自分が正解したかのように先生は喜んでいるが、嬉しい反面複雑な気分になる。


 他の生徒に対しても、こんな顔をするのかと考えると気が気でない。


 「修学旅行は仕事と重なって行ってなくて…。」


 あれは去年の秋だった。

 修学旅行に参加していれば平等院鳳凰堂は行くことになっていた。しかし地方公演と被っていたため当然だが行事はパス。


 まあ、参加したところで特別仲が良い友達がいるわけでもないし、好きな人がいるわけでもないし、たぶん何もなかったと思う。


 「修学旅行は行ってないのか…。やっぱり芸能人だね…。」


 「先生は、修学旅行どこ行ったの?」


 「京都奈良だよ。初日が大雨で大変だったな。えっと…写真がね…。」


 先生はそう言ってスマホをスクロールすると、当時の写真を見せてくれた。


 「すごい大雨でさ!本来なら夕飯の後にお風呂入るのに、みんなずぶ濡れで先にお風呂入ることになって…!」


 写真には4人の生徒が映っていた。傘をさしている男女が一人づつと、相合あいあい傘をしている男女が一組。


 「もしかして、これが先生?」


 「そうそう!」


 まさかとは思ったが、その相合い傘をしているのが先生だった。


 今でこそ長い髪でおとなしい雰囲気だが、写真の中の先生はボブカットで元気の良い印象だ。


 なんというかこう…。かわいい。


 「あ、ちなみにこれが元彼ね。」


 先生はそう言って同じ傘に入っている男を指差した。


 聞きたくないこと聞いたな…。そうだろうとは思ったけど。


「相合い傘って濡れるから、普通に傘さそうって言ったんだけど。証拠写真まで撮られて。」


 高校時代の彼氏か。高校生の恋愛ってどこまでセーフなんだろう?

 

 勉強を教える時は真剣な表情なのに、昔話をするときはこんな表情もするんだ。


 「まあ、大学入ってお互いに忙しくなって別れちゃったんだけど…。あの時は楽しかったなー。」


 先生は呑気に笑った。

 俺の前で、嬉しそうに他の男の話をするなよなと思う。


 「先生は今でもそいつのこと好きなの?」


 イジワルで聞いてみた。


 「先生には難しい質問ですね…。今すぐにお答えできません…。」


 そう言って、教師風に返事が返される。


 「はい。じゃあ授業再開するよ。」


 「えー!ここまで話しといて途中で止めるの反則だろ…。」


 先生はにっこりと笑うと、またいつも通り真剣な表情に戻るのであった。



 そうだ。先生が俺みたいな年下を意識してくれるはずがない。


 ましてや、俺はアイドルだし、恋愛なんてもってのほかだ。



 でも、先生、重要なことを忘れています。


 知らないなら俺が教えてあげよう。

 

 必ず惚れさせてみせます。

 だって俺は『上原春輝』ですよ…?

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先生をからかってはいけません! しろ @shirotann

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