第6話 からかうな!
「先生。テスト全部帰ってきました!」
九月の中旬。彼に勉強を教えるようになってから二カ月。ついに最初の成果が試される時が来た。
このテストの結果が悪かったら、私は家庭教師をクビになるのかなという不安が一瞬頭をよぎったが、すぐにそんな心配はかき消された。
古典 40点
日本史 55点
数学Ⅱ 50点
英語 62点
現代文 58点
「すごいじゃん!よく頑張ったよ!」
私は、とりあえず用意していたコンビニのシュークリームを彼に渡した。
「おめでとう!前に言ってたご褒美です。食事制限とかしてるなら、先生が食べちゃうけど…?」
「いただきます!」
彼はそう言ってすぐにシュークリームにありついた。おいしそうに食べるから、こっちも嬉しい気分になる。
これは将来、春輝が出演する食品会社のCMがたくさん見られそうだ。
「おいしい!先生も半分どうぞ。」
春輝はそう言って私に食べかけのシュークリームを渡してくれた。
えっと…。これは。
「先生、もしかして関節キスとか気にするんですか?」
「いや…!全然…。」
「じゃあ、いいじゃないですか。」
食べてくださいよと言わんばかりの意地悪な目をするので、私は目をつむって一口シュークリームをかじった。
「ほら、おいしいでしょう?」
ドキドキしすぎて味がしないから…!私は黙って頷いて残りのシュークリームを食べた。
「先生もしかして、今まで彼氏とかいたことない感じ?」
全力で首を横に振る。
「先生をからかってはいけません!」
彼氏がいたことはあります。でも、それとこれとは話が違いすぎる。
「あ、クリームついてますよ。」
春輝はそう言って私の口元に指を触れると、その指で自分の唇に触れた。
「先生、なんかよくない事考えてませんか?」
「それはあんたのほうでしょう?はい、もう勉強するよ!」
アイドルであっても、イタズラ好きな青年であることは変わりないようで、それが私を困らせる。
アイドルで、恋愛禁止で、私の事もそういう目で見てないはずなのに、勝手に私だけ好きになっていく。
年上の私が遊ばれて、なんで本気になっているんだよ…!
もう、こういうのは終わりにしよう。きっと、全部私の勘違いだから…。
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