父子

 もうこうなったら、長上おさがみの親のせいとしか思えない。よくよく話を聞いて、今後の対策を立てなくちゃ。


「今はともかく昔のは、母と仲良しだったぞ。何でも上手にこなしたからな、話し相手も涙を拭うのも、要らないものの後始末も。お陰で相手の機嫌を読み取って、先回りするのが得意になった」


な~んだ、弱い母親なんて別に普通じゃん。後々子供が出世すると、たかる親なのもありふれてるし。


「父は又代まただいなんて中途半端な地位に居て、山奥で娯楽もないからか、誰彼構わず相手をさせた。結果育てられもしない赤子をこさえるから、陰では嫌われてたな。正式な妻でもない、未婚の母はよく零していた。初子のうち、迷った末に俺を生かして正解だったと」


あれっ、ちょっときな臭くなってきたぞ。しつり様の話とはだいぶ違うような。


「親って何なんだろうな、未だによく分からない。うっかり死なせても悲しくも何ともなかった。でもそれを人前で見せたら不味い事位分かる。だからな地稚媛つちわかひめ、まずは愛嬌を覚えることだぞ~」


ああっ、また赤ん坊に目移りしちゃって。分からないならそれでいいじゃん。なんでわざわざなろうとするの。


「血が濃くなれば、長所も短所も受け継ぐ可能性が跳ね上がるといった所か、博奕だな。戴冠タイカンめ、唯一容貌だけは褒めてやる」



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