R-15 奇貨
俺はひとしきり
「湯殿に行くからついて来い。背中を流してやる」
「望むところです。でも本当に、流すだけでいいんですか」
「――それは
せっかくさっきまで落ち着いていたのに。
このままじゃ本当に、背中だけ流して解散する勢いだ。そしたら今度こそ、新顔の
そんなの許せるはずがない。それでもって、今日は偶然気が向いて、出迎え直前まで練習に耽っていたから都合が良い。残念でしたね
「どうした急に、かゆい所でもあったか」
「本気で言ってるなら、もう職業病ですよ、それ」
「どちらの話だ。……訳が分からん」
よっしゃ、これで思考の渦にはまったな。今のうちに再準備しよう。にしてもうちの義兄と同じく、考え出すとおっそろしく無防備だな。
顔が見える位置で横になってあちこちいじりながら、様子をうかがうと。あらら、まだ考えてる。いい加減こっちを向いて欲しい。こんなんでよく無事に戻って来れたよな。いや、ひょっとして例の……。あ、やばい新たな興奮材料が。
「はっ。そういう事か、洗髪で言うからか。調髪師の方だな。なあそうだろう
「だって俺経験とぼしいし。人から聞いた昔のあなたを思い浮かべてたら、正直興奮しちゃいます」
「……ふっ、何を言い出すやら。くくっ、ふ……あははははっ、あまり笑わせるな」
やったね、また抱っこされた。お返しに柔い唇に喰らいつくと、頭を引き寄せられた。これでもう興味は完全にこっちのもんだ。気がつけばずうっと、ただ単純に抱き合っていた。
「あーあ、酷い夫ですね。新妻放っといて、私にばかり構うなんて」
「本音は真逆だろ、顔からにじみ出てるぞ」
「やだなあもう自惚れちゃって。そんなはずないんですけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます