鳴かぬ蛍は身を焦がす
「痛あ……なんなん。人の事踏んどいて、けたくそ悪いわぁ」
「おい女、
「おおこわ、いい歳して恋詫ぶかいな。にいさん堪忍なあ、こちらのおとうさんにもそう言うたって~」
女はそう言って、意外に俊敏な動きで走り去って行った。私達の背後から大勢の追っ手が迫って来ていたからだ。雑踏に紛れ、女はあっという間に姿を消した。追手の指図と思しき男はそれを見て吐き捨てた。
「あんの
「何故さっきの人を捕まえようとしているのですか。スリですか、食い逃げですか」
「なんだこの子供は、ええい肩から手を離せ、部外者が知る必要はない」
追っ手はすごすごと引き上げて行った。私達も盛り場には用無しなので宿へ戻った。
さて、
私は次の日には屋敷へ帰るつもりだった。しかし明け方に突然発熱し、それでも無理を押して帰ろうとしたのが良くなかったのか、病状は更に悪化し、回復するまで随分と長引いてしまった。
「辞職して本当に良かった。晴れて自由の身になるのが、こんなに楽しいとは思わなかった。俺に与えられた役目が無くなったら、もう終わりだとばかり……うーん……スースー」
とはいえ、
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