阿諛の章
鶏鳴狗盗
そういえば。しつり様のお話では、先の王朝に向かったところで終わりだったよな。
その続きはどうなったんだろう、たずねてみるか。
「吾人は知らぬ。現領主の後見――昔の
なんだ残念、でもそりゃそうだ。こうなったら
「シッシッ、あっちへお行き。わたくしは忙しいのです。そんな昔話に、花を咲かせるつもりもない」
すげなく断られてしまった。じゃあもう
「おい喜ばぬか
「すみません、しつり様。ちっとも嬉しくないです」
トボトボと一人で向かう。なんでよりによって
俺が案内された部屋に入って着座すると、
「あの領主一族め、まったく図々しい。
――真夜中に騒々しい、また客人を招いての宴か。
当時の私は、ある屋敷に門客として滞在中の身分だった。だが酔っ払いの相手などうんざりだ。
気配を殺して居室に戻ると、闖入者が机の木簡を眺めていた。結論から述べると、まだ
「ここで何をしている。勝手に触るな」
「これが大陸文字か、絵の方が分かりやすいのに。なんて書いてあるのですか」
「知る必要はない。さっさと出ていけ」
よくある話だ。女子供を色仕掛に饗して物笑いの種にする。そのまま腕を引っ張って、部屋から放り出すつもりだった。
「たまには一芝居打ってみたいとは思いませんか。何もせず追い返したら、それこそただの笑い者ですよ」
背負った背中でも、震えながら笑いを堪えているのが感じ取れた。本当に大丈夫なのか。間もなく宴会部屋の前までたどり着いた。聞きたくもない会話ばかり耳に入る。
「仕事はこなすが女遊びの一つもしない」
「だから賭けると言ったろう、あの門客は男趣味なのだ」
「いやいや、ここまで来ると不能としか」
引戸を勢いよく開け放ったところ、呆気にとられた連中の間抜け面が並んでいた。
その場に屈んで降ろしてやると、足早に
「ワハハハハ、あいつもやりおるわっ」
「
「はい
中身の正体は、豆糊だ。旅荷物からかっぱらって、水で微調整してから口に含んだ物をそう見せかけただけの事。確かにあれは傑作だった。
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