掌中
男は首だけ横を向き、後ろの
「爺さん、こいつは貰ってくぜ」
「
「おう任せろ。我が乳母にはさんざん世話をかけたからな、今度はこちらがその憂いを取り除かねば」
男は踵を返し、自身の館へと到着した。
「さてどうしたものか。
「かけっこと、縄跳びなら大得意です」
笑顔で得意げに返され、男は堪らず肩を落とした。
「ハア、問いを誤った。――手先は器用か」
「特別器用とも不器用とも言われたことは無いですが、慣れれば人並みにはこなせます」
「獣を絞めたことは。躊躇は覚えるか」
「狩の手伝いで何度かあります。慣れたので特に何とも思いません。魚をさばくのと同じです」
「まあよかろ、今後こちらの事は
「あ、はい」
つい枕詞に一文字入り、その返事が気に入ら無かった
翌日から、
「すいませーん、
引き取り手の無い者や、糧に乏しく余裕の無い身内の許可を得て、処刑後の身なりを整え、あるいは牢に繋がれた虜囚の散髪を行う。実費は全て
「
「はい。でも私は修行中の身ですから。むしろこんな腕前で申し訳ない」
数年ぶりに出頭を命じられ、恐る恐る
「切ってみせよ。あれ程大枚をはたかせたのだ。少しは上達したのだろうな」
――うわあ、失敗したら殺される。なんの罠だこれは
緊張を和らげるため、偉かろうが何だろうが、刑場の露と消えた人々に違わぬと念じ剃刀を入れつつ、手探りで会話の糸口を探す。
「こんな遠回りしなくたって、
「
「いったい何を強要するのですか、昵懇の仲になるだけなのに」
「……意外と手つかずなのか」
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