しつりの手鞠唄
うげ、この人か。昨日
「手前の楡の木と、奥の李木が見えるか」
「はい、しつり殿」
「様と呼べ。吾人は
言われるまま走り続けたが、すぐバテた。俺はその場にへたり込んでゼイゼイ息をした。
「まあよいわ、次は鞠つきじゃ。おいそこの、
通りがかった二人組の使用人は、慌ててそれぞれ走って行った。意外とすぐに持ってきてくれた水を呑み、俺はひと息ついた。しつり様は荷物の中から皮製の手鞠を取り出し、屈んで鞠つきを始めた。
〽てんつく てんつく 跳ね手鞠 ねじり離れて あらいずこ
分かれてお出でになりまする 浮いてなくなり かそいろは
川とり 畑とり 軒とられ 手練の 手管に 手も出ない
それでは頂戴 頂戴な 手鞠は 手込の 飾り物
てんつく てんつく 跳ね手鞠
唄は意味不明だが、鞠つきは上手い。ということは、しつり様は女なのだろうか。
ぼうっとしながら見ていたら、手鞠が取りこぼされ、そのまま弾んで飛んでいった。
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