　無駄口を叩くなと言わんばかりに口を塞がれ、そのまま衣服も剥ぎ取られていった。体格差に圧倒され、これから起こるであろう予感に、おもわず身がすくむ。

「……力を抜け」

　ようやく離された唇から頬によだれが伝う。もう身体の自由がきかない。出来るものならとっくにやっていると意思表示で首を振る。全部長上（おさがみ）のせいなのに、何で俺が深々とため息を吐かれなくちゃならないんだ。

「――んっ、……はあっ」

流石は宮殿、用意の良いことにあれこれと取り揃えていらっしゃる。油どころか、大中小となんでもござれかよ。そんくらいなら指でいいだろ指で。それでも時間を置いてゆっくりと続くあれやこれやは、とうとう引き返せない所まで来てしまった。

「泣いたところで帰さんぞ、世（よ）にここまでさせておいて」

長上（おさがみ）から言われて初めて涙に気づいた。頭の中がぐずぐずでもう限界だった。

「じき慣れる」「痛ッ」

　一応覚悟はしていたが、やはり実際は違う。緩やかな興奮は一瞬で醒め、冷や汗が止まらない。こんなの損ばかりだ、長上（おさがみ）はずるい。徐々に動きが早くなり息が上がる。頼めるならもうさっさと終わって欲しい、なんだか意識も遠のく。ふと違和感が生じて半ば気絶していた意識が浮上した。

「はっ、愛いな。あの祈祷師も突然何を言い出すかと思ったが」

乱れ髪を避け、こわばった顔から涙を舐め取りながらそう呟やかれた。

『霧彦（きりひこ）』

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