7、七夕

 担任の先生が、七夕の短冊飾りをするから、内容を考えてくるようにと宿題を出した。

 晴れた日には、天の川が掛かり、織姫と彦星が会える。それが七夕。


 七夕に晴れたのって、いつの話? 思い出す限り、雨しかない。


「ねぇねぇ、短冊になに書く〜?」


 後の席の子が聞いてきた。


「ねぇ? なに書こうか」

「成績が上がりますように、寝坊しませんように、好きな人ができますように」


 指折り数えて例えばを出してくれたのかな。あたしにはピンとこなかった。


「ほんとう、なに書こう……」



 考えてはみた。考えたけど思いつかなくて、次の日になった。

 教室につくと、大きなタブレットに笹が表示されていた。本物は用意が大変らしくて、実物に近いものになったんだって。


 宿題と言われてた気がするけど、授業で書いて回収するんじゃないんだな。画面でひらひらとアニメーションされてる短冊をタップ、内容が読めるほどに表示された。

 好きな人ができますようにって、書く人いるんだ。


「なに人が書いたもの読んでんの?」

「えっ、ごめんなさい! あなたが書いたものなのね……」

「じゃなくて、それは俺が書いたものじゃないけど、誰かは書いてるわけだし。軽々しく読むものじゃない気がするというか」

「ほんとう、そうね。あなたの言う通りよ」


 横から手が伸びてきて、短冊をタップする。


「読むならこっちにしなよ」


 内容には、あたしの名前があって……仲良くしたい?


「結構具体的に書かれてあるけど、読んで大丈夫なの? 誰かに見られたら」

「俺が書いたものだから平気だよ。何言われたって、なんとかしてやる」


 表示を元に戻して、彼はどこかへ行ってしまった。

 好きな人ができますように、か。その願いはピンとこないけれど、お友達になれますように――そう、ササッと書いて機械に読み込ませた。

 正しく読んだか画面に表示されたのを、急いで確認次に保存をタップ。


 書いた短冊はどうしよう。というか、これを提出じゃなくてよかった。落ち着いて考えてみたら恥ずかしいっ……。

 あたしの名前を書いた彼、短冊はまだ持ってるのかな。


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