第10話:8月5日(水)動物園に行きました
最近は夢を見ても起きたら忘れちゃうことが多いです。
だけど、きっとこわい夢を見ている気がします。
だって、起きたらいつもべっとりする変なアセをかいています。
クーラーをつけて寝ているし、部屋の温度はちゃんと二十五度くらいなのに。
今日も起きたらアセがすごくて、すぐお水を飲みました。
ラジオ体操にさっちゃんは来てなくて、お母さんが来ました。
やっぱりずっと笑顔で、ポケットの中でくしゃくしゃと音をさせていました。
それに、昨日と同じ服装で、かみの毛もぼさっとしてて、くさった魚みたいなニオイもしました。
明日絵理ちゃんと巴ちゃんと遊びに行くと伝えたら「幸加も喜ぶわ。ニシキ様も……」と言って帰っていきました。
ニシキ様って何でしょう。
さっちゃんちは何も飼っていないし、お姉ちゃんと弟の名前も、たしか幸恵さんと幸太くんだったと思うのだけど。
ラジオ体操から帰ろうとしたら浩平くんと会いました。
明日さっちゃんちに行くって話したら「気をつけろよ」って言われました。
浩平くんのお母さんとさっちゃんのお母さんは仲が良かったけど、夏休みになってからさっちゃんのお母さんは変になっているそうです。
「変ってなに?」
「わからん。うちの母ちゃんが言うにはニシキがどうとか……」
ここでも「ニシキ」です。
一体何のことなのでしょうか。
うちに帰ってご飯を食べたらお勉強とピアノの練習をしました。
お昼はお姉ちゃんがラーメンを作ってくれました。
一時に絵理ちゃんのお母さんが車でむかえに来てくれて、三人で動物園に行きました。
ゾウさんが病気でいない代わりに、広い運動場をキリンさんが走っていました。
テレビのスローモーションみたいに走るので、目が変になったのかと思いました。
カバさんはガラス越しにすぐ近くで見られました。
大きな口に飼育員の人がスイカを投げると、一口でつぶれてすごかったです。
サイさんやシマウマさんはずっと草を食べていたし、ライオンさんやトラさん、ピューマさんはずっと寝そべっていました。
は虫類がいる建物には、カエルがいるから行きませんでした。
水族館で変な体験をしたからです。
みんながそっちに行ってる間、私は鳥類がたくさんいる大きなオリの前で待っていました。
何となく、ぜんぶの鳥が私をにらんでいるような視線を感じました。
私がベンチから立つと、鳥の中でも大きいワシ(タカかも)が私めがけて急降下してきました。
私は悲鳴をあげてしまいました。
ワシは金あみにぶつかってギャーギャー鳴きました。
その後、鳥たちがいっせいに私の方に向かってきて金あみにぶつかりました。
そこにいちゃいけない気がして、私はオリからはなれました。
鳥に向かってこられるより、カエルに見つめられる方がましです。
だけど、は虫類の建物にいくにはぐるりと園内を回らなくちゃいけません。
早足で歩いていると、すれちがった子どもたちがみんな振り返るのが分かりました。
そして、似たようなことを言うのです。
「お母さん、カエル! カエルがいる!」
私のことじゃないと自分に言い聞かせて急ぎました。
セミの声がすごくうるさくて、だんだん息が苦しくなりました。
暑さのせいかすごく疲れて、視界もフラフラしました。
もう歩けないって思ったところで、は虫類の建物から出てくる絵理ちゃんたちが見えました。
私は絵理ちゃんたちと合流して、日かげのベンチで座ってお休みしました。
絵理ちゃんのお母さんがトロピカルメロンジュースを買ってくれました。
甘くて冷たいジュースを飲んだらすごくほっとして元気になりました。
その後、おサルさんとかクマさん、シカさんを見ました。
だれかといると、子どもたちが変なことを言ったりはしませんでした。
夜は絵理ちゃんのオジさんがやっているイタリアンレストランでボロネーゼっていうパスタを食べました。
初めてだったけど、お肉と野菜の味がこくてすごくおいしかったです。
おうちに帰って動物園であったことをお母さんにお話ししました。
そしたら、暑い日に水を飲まないでいると「熱中症」というのにかかる可能性があるって教えてくれました。
暑さでぼーっとすると、ありもしないものを見たり、聞こえない音が聞こえたりすることがあります。
そのままでいると熱が出てたおれてしまうこともあるそうです。
だからベンチで休んでジュースを飲んだら元気になって、変な声も聞こえなくなったというわけです。
これからは定期的に水分をとろうと思いました。
寝る前にお父さんのスマホで「ニシキ」を調べてみました。
様ってつけていたので多分人の名前です。
それっぽいのは「錦」「二色」「西木」「西亀」「二式」とかだと思います。
発音から「錦」か「西木」が有力かな?
明日漢字も聞いてみようと思います。
おやすみなさい。
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