第9話:8月4日(火)ピアノの課題をひきました
ラジオ体操にさっちゃんが来ませんでした。
代わりにさっちゃんのお母さんが来て、私たちに「幸加は転んでケガをしちゃったの」って教えてくれました。
そして、「一週間くらいおうちから出られなくてヒマだと思うから、みんなで遊びに来てちょうだい」と言いました。
今日のさっちゃんのお母さんは、貼り付けたみたいに動かない笑顔をしていて何だか不気味でした。
それに、ずっとポケットに両手を入れていて、中でカサカサって変な音が鳴り続けていました。
相談して、木曜日にみんなで遊びに行くことにしました。
お父さんとお母さんがお仕事に行ってから、冬子お姉ちゃんといっしょにお勉強をしました。
お姉ちゃんは週末に英語プレゼン大会の全国大会に出場します。
ちょっとだけテキストを読ませてもらったけどぜんぜん分かりませんでした。
お昼はお姉ちゃんといっしょに冷やし中華を作りました。
包丁は使わせてもらえなかったので、ゆでるのと冷やすのを手伝いました。
午後にピアノの山岸先生が来たら、お姉ちゃんは出かけてしまいました。
山岸先生はなぜか首にばんそうこうを貼っていました。
私は今日のために練習した課題曲「蝶々 OP.43 No.1」(E・グリーグ)をがんばってひきました。
きん張したけど、ひく前に首から下げた鈴をにぎったら体が軽くなった気がしました。
そのおかげで、後半になるほど蝶々が羽ばたくみたいに気持ちよく指が動きました。
山岸先生がすごくほめてくれたのでうれしかったです。
「その鈴、先週は持ってなかったわよね? 買ったもらったの?」と聞かれたので、「先週はポケットの中に入れていたんです」って答えました。
そしたら、山岸先生は「蝶々」を作曲したE・グリーグさんの話を教えてくれました。
グリーグさんは小さなカエルの置き物や子ブタのぬいぐるみを大切にしていて、大人になってもいっしょに寝ていたそうです。
演奏会の時はポケットに入れたカエルの置き物をにぎってきん張をほぐしたそうです。
私がかわずちゃんからもらった鈴をにぎったのと同じです。
その後、次の課題曲をひき比べてみました。
候補が三曲にしぼれたので、来週の練習でどれにするか決めます。
休けい時間に、山岸先生が首にばんそうこうを貼っている理由を聞きました。
「ああこれ。ちょっと飼ってる猫にかまれてね……百合子のやつ……」
山岸先生が猫を飼ってることは知りませんでした。
しかもぼそっとつぶやいた名前が、聞きまちがいじゃなかったら、「百合子」でした。
「私の担任の先生も百合子先生っていうんですよ!」って伝えたら、山岸先生は少し気まずそうに笑っていたけど、なんででしょう。
あと、私は飼うならうさぎがいいなって思います。白くてもふもふした子を飼ってみたいです。
だけど、私の家族は私以外みんな動物アレルギーなので多分無理です。
明日は絵理ちゃんのお母さんが車で動物園につれて行ってくれます。
せめて動物園で動物とふれ合いたいと思います。
おやすみなさい。
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