第6話:8月1日(土)プールへ行きました

 なんだかこわい夢を見て目が覚めました。


 一階に下りたら、お母さんが「昨日の子たち、みんな無事帰ってきたって」とうれしそうに言いました。


 私たちとお別れしたすぐ後、男の子たちの一人が海にしずむ夕日を見たいと言い出したそうです。


 それで、四人は虫取りをやめました。


 そして、反対側の道からあっさり蛇山を出ました。


 それで、四人のおこづかいを合わせて電車に乗って海に行きました。


 夕日を見てから帰ろうとするとお金が足りなくて、しかたなく歩くことにしました。


 夜に歩道橋で休んで、そのまま寝てしまった男の子たちは、明け方に警察の人に見つけられたそうです。


 警察の人の調べによると、昨日の午後に蛇山にいたのは私たちと男の子たちだけだったらしいです。


 四つの鳥居のうち、二つの前にはちゅう車場があって防犯カメラが動いています。


 警察の人たちはカメラを朝からチェックして、男の子たちが昼過ぎに蛇山に入るのと、夕方に出ていくのを見つけました。


 他二つのうち一つの前には、私たちに声をかけたおばあさんが朝から晩まで座っていました。


 最後の一つは、朝から前で道路工事をやっていて誰も入れなくなっていました。


 つまり、蛇山には午後の段階で私たち六人しかいなかったはずです。


 前日から誰かがひそんでいたら別ですが、警察の人が調べたんだから、泊ったあとがあれば分かるはずです。


 誰かが私たち追いかけてきたという話はだから、暗くなった森がこわかったから風か小動物を人だとかんちがいしたんだよって言われました。


 お父さんもお母さんも不しん者がいなくてよかったと安心していたので、私はそれ以上何も言えませんでした。


 でも、私は疑問に思っています。


 昨日の夜、お布団の中で私は変なカゲの正体を考えていました。


 あのカゲにうでが八本あったのは、四人の男の子たちが一つの大きなゴミ袋をかぶっていたからだと思っていました。


 でも、四人は私たちと別れた後、すぐに反対側の小道から蛇山を出て夕日を見に行ったわけです。


 一方、私たちが鳥居の外に出た時、お空は真っ暗でした。


 夏の夕方の長さを考えると、私とひまりちゃんは一時間くらい蛇山で迷子になっていたはずです。


 あの視線や大きさ、形を思い出すと、絶対に小動物じゃないって言いきることができます。


 風をこわがるほど真っ暗でもありませんでした。


 それじゃあ、私たちを追いかけてきた変なカゲの正体は何だったのでしょうか。



 ラジオ体操に行くと、絵理ちゃんたちが「大丈夫だった?」と集まってきました。


 私は男の子たちの話をして、みんなを安心させました。


 心配させたくないから、私とひまりちゃんを追いかけてきた変な影の話はナイショにしました。


 かわずちゃんはいなかったけど、鈴を持っていると何となくかわずちゃんが近くにいてくれるような気がします。


 特に、水上神社の境内にいるとそれを強く感じます。


 朝ごはんの後でお願いしたら、事件が解決したのでプールに行っていいことになりました。


 日焼け止めはぬっちゃいけないって書いてあったけど、こっそりぬっちゃいました。


 私とさっちゃんは去年の水着を着ていたけど、絵理ちゃんと巴ちゃんは新しい水着でした。


 絵理ちゃんはおしゃれだから、身長が伸びなくても毎年水着がちがいます。


 巴ちゃんは一年で身長が十センチも伸びてうらやましかったです。


 回るプールで鬼ごっこをしたり、大きなプールで競争しました。


 お昼にはカップラーメンを食べました。


 あと、ウォータースライダーが速くてすごかったです。


 おうちに帰ったら日焼けが痛くて、お風呂で泣きそうになりました。


 夜はお父さんが焼肉に連れて行ってくれました。


 合宿でいないお姉ちゃんにはごめんなさいだけど、とってもおいしかったです。


 私はタン塩にレモン汁をかけるのが好きです。


「なっちゃんは趣味がしぶいなぁ」とお父さんが言うと、お母さんが「なっちゃんは大人の味が好きなんだよね~?」と言って、私は「うん!」って返事しました。


 デザートには「大人の味」って書いてあったゆずシャーベットを食べて、とってもおいしかったです。


 おうちに帰ってからスイッチを付けたら、ひまりちゃんがオンラインでした。


「昨日はこわかったね」ってメッセージを送ったら「うん。なっちゃんがいてよかった。ありがとう」って返ってきました。


 なんだかほこらしい気持ちになりました。


 明日はお父さんとお母さんといっしょにお出かけして映画を見ます。


 新しい本も買ってもらえたらいいなぁって思います。


 おやすみなさい。

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