第2話:7月28日(火)水族館へ行きました
今日はおかしなことが二つありました。
一つ目は、ラジオ体操です。
私はみんなをかわずちゃんに会わせてあげたいと思いました。
朝の六時に水上神社に行って、絵理ちゃんと巴ちゃんとさっちゃんに「おはよう」とあいさつしました。巴ちゃんはまだねむそうでした。
「かわずちゃんに会いに行こう」
私はみんなを連れて神社の裏へ行きました。
でも、カエルのこま犬がいませんでした。
大きな木と岩に囲まれた小さな池はあったけど、木は上の方で折れていたし、池は長い草におおわれてドブみたいにくさかったです。
昨日見た時は、木は堂々としていて立派で、池はキレイだったのに、今日はきたなくてさびしい感じがしました。
「なにもいないじゃない」
絵理ちゃんはつまらなそうにそう言って、神社の表へもどってしまいました。
「朝早いし、夢でも見たんじゃないの」
巴ちゃんもあくびをしながら絵理ちゃんといっしょにもどってしまいました。
「ねえ、なっちゃん。こま犬ってここにいたの?」
さっちゃんが指さした地面は少しだけ盛り上がっていました。
二人で落ち葉をどかしてみると、辞書くらいの石の土台がありました。
「昨日は私の背ぇくらい高かったのに、今日は根っこしか残ってないみたい」
「折れちゃったのかもね」
「一晩で? 台風でもないのに……」
二人で顔を見合わせて考えたけど、分かりませんでした。
「やっぱり私、夢を見ていたのかな……」
「しんきろうかもしれないよ。まぼろしが見えるってアニメで見たことある」
池の周りを歩きながらさっちゃんとお話ししていると、「ラジオ体操始まるぞー!」と呼ぶ声がしました。
「行こう、なっちゃん」
さっちゃんに続いて私も神社の表へ向かおうとすると、チリン、とスズの音がしました。
風がふいたわけでもないのに、うなじのへんがゾクッとしました。
「なっちゃん」
かわずちゃんの声がすぐ後ろから聞こえたので、私は振り返りました。
「かわずちゃん?」
でも、かわずちゃんはどこにもいませんでした。
代わりに、昨日かわずちゃんが座っていた石の上に、あめ玉くらいの銀色のスズが落ちていました。
さっきまではなかったはずなのにおかしいなあと思いました。
私はスズを拾ってポケットにしまいました。
後で聞いたらさっちゃんには、スズの音も声も聞こえなかったみたいでした。
二つ目は、冬子お姉ちゃんと水族館に行った時にあったことです。
冬子お姉ちゃんのお友達の愛花ちゃんもいっしょにいました。
愛花ちゃんはお姉ちゃんのクラスメイトで、よくうちに遊びに来ます。
頭がよくて勉強を見てくれるし、家がケーキ屋さんだからおいしいケーキを持ってきてくれるので好きです。
神社で拾ったスズは、おたん生日に買ってもらったお出かけ用のカバンに付けました。
水族館はすごく広くて、たくさんのお魚が泳いでいました。
暗かったのでお姉ちゃんと愛花ちゃんに手をつないでもらいました。
おかしかったのは、カエルがたくさんいる「世界の川」という場所に入った時です。
私が近づくと、カエルたちは動きを止めて私をじっと見つめました。なんでか分からないけど、水そうの中にいるすべてのカエルと目が合うのです。
気味が悪くて「見ないで」と言うと、ぜんぶのカエルが同時にゲコゲコ鳴き始めました。
周りのお客さんたちやお姉ちゃんたちは色々な鳴き声が聞こえてすごいねえって話していたけど、私はカエルたちに笑われているようでイヤでした。
「早く次に行こう」ってお姉ちゃんたちの手を引っ張って「世界の川」から出ると、カエルたちの鳴き声はまったく聞こえなくなりました。
お昼ごはんで、私はスパゲッティとデザートにイチゴパフェを食べました。お姉ちゃんはわかめラーメン、愛花ちゃんはサメのお肉で作ったハンバーガーを食べました。
一口もらったけど、サメのお肉はタラみたいな味でおいしかったです。
午後に見たイルカのショーはすごくて、水しぶきがたくさんかかりました。
イルカさんはみんな頭がよくて、キャッチボールをしたり、輪っかをくぐったり、並んで泳いだり、飼育員さんと言葉が通じているみたいでした。
その後に見たペンギンさんのエサやりも、みんな飼育員さんの前に一列に並んでいて、全校集会みたいで面白かったです。
おうちに帰ってから、宿題の漢字ドリルをやりました。
まだ習っていないけど、スズは鈴と書くって辞書にのっていました。カバンは鞄って書くんです。
もうすぐ夏まつりなので、明日は二日分の宿題をやっちゃいたいです。
夕方にはお母さんと浴衣を取りに行く予定です。楽しみです。
おやすみなさい。
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