なっちゃんの不思議な夏休み日記
洲央
第1話:7月27日(月)かわずちゃんと会いました
学校の夏休みの宿題で、今日から日記をつけることにしました。
本当は四日前からお休みだけど、担任の百合子先生は今日からでいいって言ってました。
お母さんは「なっちゃんはお風呂に入るとねむくなっちゃうから、ご飯の後に日記を書きなさい」と言いました。
私はもうすぐ十二才なので、お風呂の後も起きられます。でも、お母さんの言いつけを守って、ご飯の後に日記を書くことにしました。
春にお引っこしをして八蛇町に来てから、仲良しのお友達ができました。
いつもカワイイお洋服を着ている絵理ちゃんと、お歌が上手な巴ちゃんと、足が速いさっちゃんです。
終業式の日にラジオ体操で会おうねって約束したので、楽しみでねむれませんでした。
朝の六時に水上神社に行くと、お友達がみんな集まっていました。他にもたくさんの人がいて、小学生だけじゃなくて、おじいちゃんやおばあちゃんたちもいました。
ラジオ体操が始まるまで少し時間があったので、私は一人で神社の中を散歩しました。
人が全然いない神社の後ろには、カエルのこま犬が二ひきいて面白かったです。
こま犬の向こうには、中が空っぽになっている大きな木がありました。木には太い縄が巻いてありました。縄には白い紙のリボンみたいなものがいくつも結ばれていました。
その後ろには岩に囲まれた小さな池があって、岩の上に浴衣を着たおかっぱの女の子が座っていました。
知らない子だったし、お祭りでもないのに浴衣を着ているのが不思議で、私はちょっときん張してしまいました。
声をかけようか迷っていると、「ラジオ体操始まるぞー」という大人の声が神社の表から聞こえてきました。
「あの、私はなっちゃん!」
私は大きな声で自己しょうかいをしました。
女の子はおどろいたように顔を上げて私を見ました。
目が合うと、どこかい和感がありました。でも、それが何だか分かりませんでした。
「あなたのお名前は何ですか?」
私の質問に女の子は少し迷ってから、風邪を引いてるみたいなざらざらした声で「かわず」と教えてくれました。
帰ってから辞書で調べたら「蛙」という漢字がのっていました。蛙はカエルなので、かわずちゃんはカエルのこま犬の向こうにいるのにぴったりの名前でした。
「お風邪なの?」と聞くと、かわずちゃんは首を横にふりました。
「じゃあ、いっしょにラジオ体操しよう!」
私はかわずちゃんの手を引いて神社の表に走りました。かわずちゃんは、夏なのにすごく冷たい肌をしていて不思議でした。
ラジオ体操が終わってスタンプを押してもらおうとしたら、かわずちゃんはいつの間にかいなくなっていました。
すぐ後ろでいっしょに体操をしたのに、絵理ちゃんも巴ちゃんもさっちゃんも、かわずちゃんなんて知らないと言っていました。変なの。
明日ラジオ体操でかわずちゃんに会ったら、二回分のスタンプを押してもらえるように私がたのんでみます。
明日はその後、冬子お姉ちゃんと水族館につれて行ってもらいます。
お姉ちゃんは高校生で、かみの毛が長くてきれいです。私も伸ばしたらお姉ちゃんみたいになれるかなあ。
今日はもうねます。
おやすみなさい。
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