31話 魔族攻防戦の作戦会議②

 セダムの言葉に「ふむ」と声を漏らす。ユラは困った表情を浮かべたツバキに助け舟を寄越すように言葉を発した。


「なら、コウモリのところから数人、魔石使いの方に戦力を注ぎ込めばいい」

「そうだね、そうしよっか。それでもいいかい? ジニアくん」

「あ? 俺は構わねぇよ」

「ありがとう。それじゃあスズ? お願いできる?」

「!! はいっ! 頑張りますっっ!」


 キラキラとした眼差しでコウモリの方を見るスズランに、コウモリは自分のポケットの中からベリーグレープ味の飴玉を取り出した。


「! わあ! 僕の大好きなベリーグレープ味の飴!! ありがとうございますっ! 兄さんっ! にーちゃっにーちゃっ! 兄さんから飴玉貰いました!!」


 テンションを上げながらそう言ったスズランは、コウモリの方へと行き、ベリーグレープ味の飴を渡した。


「よかったな、スズ」

「……っ」


 エリカは優しそうな顔をスズランに向けているカラスを見つめると、カラスはその視線に気付きエリカの方に視線を移す。


「?」

「あ、いえ……」

「にーちゃ?」

「いや、何でもない。よかったな、スズ。コウから飴玉をもらえて」

「はいっ!」


「んで次は?」

「うん、次はクロケルだね。彼は水の魔法を使うんだ、ユラ相手ではユラが圧勝ではあったんだけど、もしかすると次は、この前より力をつけているに違いない」

「うん」

「だからクロケルには、セツナ君、君にお願いしたいと思ってるんだけど……」

「……オレはお義兄さんの指示にしか従わない」

「セツナくん。今回はツバキ君の指示に従ってもらえるかな」


 セツナはコウモリの言葉にむすっとした表情を浮かべながら、不服そうに「……わかりました。」と了承した。


「うちのセツナくんがなんかごめんね?」

「ううん、構わないよ。それくらいは想定内だからね。とりあえずどうかな、クロケルの件、引き受けてくれる?」

「……分かりました、引き受けます。クロケルの事、殺しても良いんですよね?」

「生死は問わないよ」

「了解です」


「んで」


 コウモリは机の上に肘を置き、片手を上にあげた。


「ツバキくんとユラくんは、どこの配置に着いてくれるのかな」

「俺たちは魔族のボスであるベリアル様を撃つ」

「ベリアルってたしか、君たちに魔法の一部を分け与えてくれた天族……いや、今は魔族か。その魔族の名前、だよね? 君たちにベリアルを倒せるの?」

「……正直勝てるかは半々くらい。だからコウモリ君、君に手助けをしてもらいたいんだ、ユラも大丈夫だよね?」

「あぁ、構わない」


 コウモリはそのツバキの真っ直ぐな目に圧倒され、「そっか、分かった」と言葉を漏らした。


「他の面々はシクラの方に注ぎ込む」

「……シクラ?」

「うん。四代悪魔を使役している、フォラスの造った人形……いや、召喚師と言ったほうがいいかな」

「その召喚師って、そんなにも強いのか?」

「……強い。もし仮に、フォラスや他の魔族がシクラをバックアップした場合、君たちもバックアップの方を頼みたい。2体同時に悪魔を出してくることはまず無いと思うけど、もし仮に出してきたことを踏まえると、相当キツイと思うんだ。頼むよ、みんな」


 ツバキの言葉に周りはそのまま頷いた。


「さて次は、魔族の本拠地に乗り込む日にちだけど……」

「今から。で、いいんじゃないかな」

(やっぱりそう来たか……)

「君たちはユウって子を守らないといけないんだよね? 日数をもし仮に先延ばしにしてしまうと、ユウを攫われてしまう可能性も大いにあり得る、だから今から乗り込んで、魔族を叩いたほうがいいと俺は思うんだけど、どう思う?」


 ツバキは少し考え、「そうだね」と言葉を続けた。


「ユウちゃんが攫われるのはこちらとしてはかなり痛い。コウモリ君の言った通り、魔族本拠地への襲撃は今から乗り込むことにする。君たちも、異論は無いね?」


 口角を上げ、全員の顔を見ながらそう言ったツバキ。そのまま周りは頷いた。


「そうだな、どっちにしろ魔族はぶっ潰したいと思ってた」

「強い奴は嫌いじゃねぇよ」

「そうね、私たちの手で、ユウちゃんを守りましょう!」

「これで俺たちの悲願が叶うな。コウ」

「そうだね、魔族をブチのめそう」


「さあ行こうか、魔族を倒しにさ」


 話が終わったあと扉が急に開き、ディルとユウが扉の目の前にいた。


「兄貴、ユラ、俺とユウも、魔族の本拠地に連れて行ってくれ」

「……ディル、お前の力じゃ魔族には絶対勝てないんだよ、それは分かってるよね?」

「……分かってるさ、それくらい。だけどユウがもしかしたら攫われるかもしれない。って分かってて、そんなの、1人だけギルドに居ることなんて俺は、出来ない!!!」


「ディル……」

「良いんじゃないか? ツバキ。ディルもそう言っているんだ、連れて行ってやれば少しは戦力になるんじゃないか?」


 ユラのその言葉に困った表情を浮かべ、「うーん……ユラの気持ちも分かるけど、もし本拠地で死ぬようなことがあったら……」と呟く。


「私がそんなことさせないよ、お兄様。ディルは絶対私が守る、何があっても絶対に!」

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吸血鬼vs吸血鬼 〜裏切り者の純血と混血は、血に染まった吸血鬼界を救う!?〜 月 七見 @Tuki_nami

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