30話 魔族攻防戦の作戦会議①

 カラスはセダムを蔑むような目で見つめると、「わ、わかったよ、カラスさん」と頭を掻きながら立ち上がる。


「あとはセツナ君だけだね」

「呼びましたか? お義兄さん」


 コウモリの声掛けに応えるように、セツナは扉を開け顔を覗かせた。


「うん。それじゃあ行こうか、ツバキくんたちのところにさ」


 コウモリがそう言うと、面々はソファから立ち上がる。カラスは先に扉の方へと行き、扉を開けた。


「コウ、先にいいぞ」

「ありがとう、カラ」

「お前たちはコウの後だ」

「それくらい分かってるよ、カラスさん」


 カラスが開けた扉の方へと歩き、そのまま部屋の外へと出た。


「あっ! コウモリ様!」

「どこかへとお出かけですか!?」

「うん。ツバキ君のところに行ってくるよ、あと、俺は君たちの主人的な立ち位置だけど、「様」付けはあまりして欲しくないな」

「えー」

「コウモリ様はコウモリ様なのにー!」

「“兄さん”と、呼んでほしいな」


 コウモリはそう言いながらクレハの頭を優しく撫でる。


「うーん? コウモリ様が、私のお兄さま?」

「そう、クレハが俺のお兄さんだよ」

「えへへー! わかった! お兄さまっ!」

「ありがとう、それじゃあ行ってくるね」


 クレハの頭から手を離し、ギルドの方へと向かって歩いていった。


 ◇


 ツバキは執務室にある時計に目を移し、「そろそろ来るね」とぽつりと呟いた。


「ユラ、リオ君たち、先に会議室に向かっててくれるかな」

「ツバキ、お前は?」

「俺はコウモリくんたちを会議室に連れて行かないといけないからさ、後で行くよ」

「わかった、それじゃあお前ら、行くぞ」


 ユラのその言葉に「わかった」と言いながら会議室に向かっていく。


「さて、生でコウモリ君を見るのは初めてだな」



 フュンッ


 外から警備員が執務室の方へと小走りで走ってきて、「マスター、コウモリ一派が来ました」とそう言った。


「意外と早かったな……。うん、ありがとう。今から向かうからって、そうコウモリ君たちに伝えておいて」

「了解しました、マスター」


 警備員がそう言うと一礼し、ギルドの入り口へと歩いていった。


 ーー「ルーチェ」入り口


「やあ、コウモリ君」

「直接会うのは初めてだね、ツバキくん」


 そう言いながら2人は握手した。


「会議室をこっちで準備してあるんだ、さあ中に入って」

「ありがとう」


 セツナはツバキの真横を通るなりじーっと見つめ、睨みを利かせる。


「……やあ、どうかしたの? セツナ君?」

「いつか絶対、お前を殺す」

「やれるものなら、ね」


 全員室内に入ったことを確認し、ドアをそのまま閉めた。


「会議室に案内してくれるかな、ツバキくん」

「うん、わかった」


 コウモリの前へと行き、ツバキはコウモリたちを会議室へと誘導する。


「……結構道が入り組んでるんだな」

「まぁね」

「ツバキ、なんで会議室までの間が入り組んでいるんですか?」

「スズラン君はこの入り組んでる道のことを、どう思う?」

「? どうって……どういう意味ですか?」

「んーまあいいや、色々あるんだよ、会議室までの道が入り組んでいるのもね」

「なるほど?」


 スズランはツバキの説明に疑問を持ちながらぽつりとそう言うと、急に立ち止まる。


「ここが会議室だよ」

「わっ、ここが、会議室……」

「開けるね」


 ツバキが扉を開けるとそこには、ユラ、リオ、ジニア、エリカが席に着いていた。


「わあ! ジニアちゃ! ジニアちゃですうううう!!!! お久しぶりですねえええ!!!」


 手をぶんぶんと振りながらジニアに向けてそう言った。


「お前……」

「時間が惜しい、早く始めよう」

「それもそうだね。好きなところに座ってよ、座り次第、作戦会議を始めるから」


 コウモリたちはそのまま自由に席に座る。


「魔族攻防戦の作戦会議を始めよっか。……まずは人員の配置から決めるよ」

「そうだね、魔石使いの用心棒には、うちのセダムを使うといいよ」


 コウモリのその言葉にセダムは黙って頷いた。


「わかった。よろしくね、セダム君」

「よろしくお願いします」

「セダム君、君の特権はどんな力を持ってるの?」

「俺の特権は爆発です。起爆剤が無くても、爆発させる事ができます。まあ、起爆剤があれば、広範囲且つ高火力で爆発させることができますね」

「なるほど。起爆剤か……うちのギルドのメンバーに起爆剤を用意させるよ」

「ありがとうございます、ツバキ」

「いいって! それくらいはさせてよ」


「さて、セダム君の特権が分かったから、こっちからはジニア君を出すよ」

「俺!?」

「そう。リオ君は最後の要として出したい。彼の特権の1つは粉砕。特権の中では最強の物だからね」


 ツバキはそう言うと、そのままコウモリの方に視線を移す。


「それで、いいよね?」

「うん、それで構わないよ」


「あの、ツバキ。俺は別にジニアさんと一緒に戦うことに不満はありません、用心棒はかなりの手練だと兄さんから聞きました。そんな中、2人で大丈夫なんですか? 勝てるんですか?」

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