29話 魔族攻防戦の準備②

 ツバキはそう言うと手をパチンと叩いた。


「就寝時間までまだ時間はあるんだけど、君たちはもう、寝たほうがいいかもしれない」

「あぁ、そうするよ」

「おやすみなさい、ツバキさん」

「うんおやすみ」


 リオたちはそう言うと、そのまま執務室を出た。


「さて、俺たちは対策を練らないとね、どうやって、魔族を倒すのか……」


 翌日


 AM:7時半、外側からのノックの音で目が覚めたリオは、寝ぼけた顔のまま扉を開けた。


「おはようリオ、早速で悪いが、ツバキがお前らと話をしたいらしい」

「ふぁああ……ん。ツバキさんが?」

「あぁ、申し訳ないが、ジニアとエリカを起こしてもらえないか?」

「ん、あぁ、わかった」


 リオはそう言うと2人を起こす。


「んだよだんちょぉ……俺はねみぃよ」

「ふぁああ……なぁに? ユラさん。まだ7時半よ?」

「“もう”、7時半だ。お前らまさか、今日ある予定のこと、忘れたわけじゃないだろうな?」

「ん、忘れてないさ。今日はコウモリたちがギルドに来て話し合うんだろ?」


 頭を掻き、欠伸をしながらそう言ったジニアにユラは「そうだ」と頷いた。


「今日のことでツバキがお前らに話しがあるらしい、今すぐ行ってこい」

「今日のことで、俺たちに言いたいこと?」

「あぁ、あいつを少しでも待たせたら反省文だからな」

「ヒュッ」


 “反省文”。この言葉に身震いをするジニアは、「お前ら、早く行くぞ。反省文なんか、書いていられるか」と冷や汗をかき、歩きながらそう言った。


 執務室の目の前に立つと、リオは部屋の扉をノックする。内側から「どうぞ」と声が掛かり、そのまま3人は部屋の中へと入る。


「朝早くにごめんね、今日は折り行って君たちに用があって呼んだんだ」

「俺たちに、用?」

「それは一体……」

「俺とユラはこれから忙しくてね、君たちに会議室が今どんな感じなのか見て来てほしいんだ」

「それは前日にやっておくことじゃないのか?」

「あはは、それはそうなんだけど……。と、兎に角! 見てきてよ、ディルからはもう会議室の掃除は終わってる。って報告は上がってて、俺もそれは確認したんだけど、室内に関して詳しくは見ていないんだ、だから君たちに見てきてほしくてね。はいこれ、会議室の鍵」


 ツバキは机の上に会議室の鍵を置いた。


「俺たちでいいのか?」

「うん、君たちがいいんだ。頼まれてくれるかな」

「ツバキさんがそう言うなら確認してくるか」

「そうね」


 3人がそう言うと、リオは、ツバキが机の上に置いた会議室の鍵を手に取り、3人は部屋から出た。


「会議室って、どこにあるんだ?」

「会議室? 会議室を探してるの?」


 執務室に向かっていたユウは、丁度3人を見つけ、声を掛けた。


「お前は……」

「ユウだよ!」

「たしかディルの彼女だよな、なんでお前がこんなところにいるんだ?」

「えっ? んー……お兄様に呼ばれてるんだ! 私!」

「ツバキさんに?」

「そうだよ! 私がリオくんたちに会議室の場所教えてあげるから、ちょっとここで待ってて!」

「ん、わかった」


 リオがそう言うと、ユウは執務室へと向かっていきノックもせずに執務室へと入っていった。


 ガチャ。と扉を開け、顔をひょっこりと出すと、「じゃあ行こっか! 会議室っ!」とにこにことした顔でそう言ったユウ。


「いいのか?」

「何が?」

「ツバキさんと話があったんだろ?」

「大丈夫だよ? さっきお兄様に許可貰ったから!」

「行きましょ、ユウさん」

「うん!」


 ユウはそう言うと、3人を誘導しながら会議室へと向かっていく。


「結構わかりにくい場所にあるんだな」

「会議室まで結構道が入り組んでて、分かりにくい場所にあるんだよね。管制室も会議室と同じように滅茶苦茶道が入り組んでるの」


 ぽつりとそう言うと「ここが会議室だよ」とユウはそう言った。


「ありがとな、ユウ」

「ううん! いいの! それじゃあ私はお兄様のところに戻るね!」


 手をブンブンと振りながら3人に背を向け、そのまま執務室の方へと歩いていった。

 リオは会議室の扉を、手に持っていた鍵で開け、扉を開ける。


 リオは会議室を覗き込むとそこには、満面の星空が輝いていた。


「! なんだ、これ、すげえ綺麗……」

「まず電気を付けましょ。ツバキさんの指示は、ディルさんがきちんと掃除をしているかの確認よ」

「そうだな」


 エリカの言葉に促されるように、リオは部屋の電気を付けた。


 室内を巡回しながら、「結構掃除が行き届いてるんだな」とジニア。


「普通にキレイじゃない、心配することもなかったわね」

「だな。んじゃあ、戻るか」


 ジニアがそう言うと、リオとエリカは部屋を出てそのまま電気を消し、扉を閉めた。


 ◇ 


「そろそろ行くよ、みんな」


 コウモリは幹部たちに声を掛けながら立ち上がると、カラスはまだまだ時間があるからとのんびりしているセダムに声を掛けた。


「お前ら、コウの指示を聞いていたのか? 早急に立て。さもなければ幹部の座から落とすぞ」

「にーちゃっ怒らないでください! メッ! ですよ!」

「お前には怒っていない、コウの指示を無視し、ちんたらしているセダムに怒っている」

「まさかの名指し!?」

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