28話 食事②
ユラがそう言うと、室内にいた自警団の面々は自警団特有の敬礼をした。
「なんでオレたちがNo.2の言うことを聞かないといけないんだよ! オレたちが指示を受けるのはマスターだ! マスター以外の言葉は絶対に受けーー」
サクラは『ツバキが居ないときは“必ず”No.2の言うことを聞かねばならない。』の約束事項を破り、ユラに罵倒文句を浴びせてしまった。
「じゃあ俺から君たちに、指示を出そうか」
「……ツバキ」
「リオ君たちと、仲良くしてあげてね。……あぁあと、さっき俺の親友に罵倒を浴びせた人は誰かな?」
口角をあげながらにこにことした表情を浮かべぽつりとそう言った。
「いや、あの……」
「…………サクラ、君はあとで執務室に来るように。あとは解散。ユラ、お前も後で執務室に来て」
「分かった」
「あーあ、サクラ、終わったな」
「マスターを怒らせちゃって、どうなるんだか……」
ツバキはそう言うと、そのままその場を後にした。
「マスターがその場に居ないときはユラさんの言葉の全てが決定なのに、ユラさんの言葉に抗うなんて……」
「ほんっと、馬鹿だよな。マスターのあのキレ具合的に、反省文10枚分くらいか?」
「いや、ディルと同じでHONEYの部下に無理やり入れさせられて清掃係になるかもしれない」
「うわあ……それは地獄だ、HONEYの部下って。オレはごめんだわ」
ユラは深い溜め息を付き、サクラの肩に手を軽く置いた。
「ツバキは寛大で、とても優しいんだ。そんな優しいあいつを怒らせたんだ。配置替えじゃ済まないだろうな、もしかすると……」
「ひぇっ」
「まあ、頑張んな。サクラ」
そう言いながらサクラの肩を軽くポンポンと叩く。
「さて、この話は終わりだ。飯にするか! お前らは向こうの席に座れ。配置ごとに座る場所は決まってるんだ」
「分かったわ」
「あぁ」
「了解」
ユラは3人にそう言ったあと、自身の座る場所へと向かって歩いていく。リオたちが空いている席に座ると、自警団に配属されていた面々が3人に話しかけた。
「よろしくな! オレはイサキ!」
「俺は、俺は! ユウマだ!」
「わたしは!」
「新入りに心揺らぐのは分かるが、今は我慢してくれ。さあ、手を合わせて」
ユラがそう言うと、大はしゃぎしていた自警団の面々ら急に黙り、正面を向き、手を合わせた。
「この国、この街全てに現界してくれている神々に感謝を」
「「感謝を」」
「街の人々に、食料を分け与えてくれる街の住民たちに、感謝を」
「「感謝を」」
「
「「
そう言ったあと、食事をし始めた。
「な、なんか、
「そうね、この街にもそんな物があったなんて……」
「ヴァルハラ? なんだ? それ」
頬にご飯を頬張りながらジニアの言葉に疑問を抱き、イサキはジニアに声をかける。
「ん? ヴァルハラっていうのは、俺たちの世界にある、所謂、宗教って奴だ」
「宗教」
「リオの家系にも合ったんだ、こういう、食事をする前に言葉を話して、「神々に感謝を」みたいなのが」
「あー、そういうことか。んーまあ、仕方がないさ、この街。いや、この国では神たちが絶対なんだ、神たちはどこからオレたちを見ているかはわからない、オレたちが死んだあと、天に行けるか、地に行くかは、神の思し召しなんだよ」
フォークをリオたちに向け、イサキの目の前にあるパスタをもぐもぐしながら言葉を話す。
「……イサキ、行儀が悪いぞ」
「んぐっ。はぁ〜い、団長」
「どうだ? 飯はうまいか?」
「えぇ、とっても!」
エリカはそう言うと目をキラキラと輝かせながら、パスタにご飯に肉に魚を口に入れ頬張っている。
「ははっ喜んでもらえて良かったよ」
「やっぱうめえな、これ」
ジニアは目の前にある煮魚を食べ、その片手間に隣にあるサラダを頬張った。
◇
ーー食事後
ユラはその場をそのまま立ち去ろうとする3人に声をかけた。
「3人とも、少しいいか?」
「団長?」
「あぁ、大丈夫だけど、なんか用か?」
「ツバキがお前らと話したいことがあるらしい、明日のことだ」
「……分かった」
3人はユラと一緒に執務室へと向かって歩いていった。
コンコンと執務室をノックし、内側から「どうぞ」の声掛けがあり、そのまま扉を開けた。
「入るぞ、ツバキ」
「って、もう入ってるじゃん!」
「リオたちを連れてきた」
「うん、ありがと、ユラ」
ツバキはそう言うと、「実は……」とそのまま言葉を繋げた。
「明日のことなんだけど、さっきコウモリ君から連絡があってね」
「?」
「明日の朝一にこっちに来るようになったんだ」
「朝一。というと、何時からだ?」
「8時半。だから朝ご飯は無し。になるかな」
「おぉ。マジか」
「だから今日は早めに寝て、明日に備えてね」
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