24話 魔族攻防戦の準備①

 3人はそのままギルドへと戻っていくと、その後ろから3人をじっと見つめる男性が1人立っていた。


「……?」


 その気配を察知し、リオは後ろを振り返る。


「リオちゃん? どうかしたの?」

「んや、今、誰か……」

「ま、大丈夫じゃね? リオは未来予知の特権を持ってんだし、そいつに何かあれば、リオを通じて助けを求めてくるはずだ」

「それは、そう、なんだけど……」


「あ、の……」

「お前……」

「知り合いなの? 彼と」


 エリカは目の前にいる男性の服はボロボロなツナギを着ており、炭でツナギが汚くなっている男性を見つめながらリオにそう声を掛けると、リオは首を横に振り、「いや、知らないヤツだ」とぽつりとそう言った。


「そのブレスレット、自警団の人、だよね?」

「え? まあ……」

「そんな君たちに、頼みがあるんだ」

「頼み……? いや、俺たちは……」

「君たちは自警団なんだろ? 俺たち市民の声をちゃんと聞いてくれる、あの、自警団なんだろ!?」

「わ、わかった、頼みってのは一体……」

「実は……」


 その男性が言うには、魔物が住まう鉱山から魔石を20個弱持ってきてほしい。というものだった。


「宝石? そんなものがこの世界に……」

「俺はそこの鍛冶屋で刀を打ってる、エリックって言うんだ。実はその魔石はかなりの魔力が込められていて、その魔石を使って刀を打てば、膨大な魔力が込められた魔法武器を作れるという伝承があるんだ」

「伝承? なるほどな、とりあえずこれはツバキに聞かないとわからない。だからこの話は一旦、ギルドに持ち帰らせてもらってもいいか?」

「あぁ、わかった。仕事を受理してもらえるなら報酬はいくらでも払うと、ギルドマスターに頼んでくれ。頼んだぞ、3人とも! あとこれ、依頼書な」


 エリックは手をブンブンと振りながらそう3人に声を掛けた。


「まさか俺たちが依頼を受ける側になるとは思いもしなかったな」

「ああいうこともあるのね、私びっくりしちゃった」

「とりあえずこの依頼書をツバキさんのところに持っていって、どうするのか判断を仰ごう」


 そう言いながらギルドへと戻り、依頼書をツバキに見せながらツバキの判断を仰いだ。


「へえ〜まさか君たちが依頼書を持ってくるなんて思いもしなかったな、やっぱり貫禄が違かったのかな、ユラ、お前の見立ては間違ってなかったんだよ」

「そういうものなのか?」

「ふふっそういうものなの。んで、その依頼書……」


 ツバキは依頼書を見るために視線を落としたあとすぐ、リオたちに視線を戻す。


「依頼書に鉱山から魔石を20個弱手に入れてほしい。って書いてあるんだけど……」

「何か問題でも?」

「いやあ〜このレルファンシエルにも鉱山はあるにはあるんだけど」

「?」

「恐ろしい魔物が住む。っていう噂があってね、君たちだけで行かせるわけには行かないんだ、もしかしたら死者が出るかもしれない、君たち吸血鬼でもね。だから、うちのディルを連れて行ってよ。君たちの助けになると思うよ。あーでも、明日はコウモリくんたちとの作戦会議だったね、彼らの答え次第ではその次の日から魔族攻防戦が始まっちゃうから……よし、俺個人でその鍛冶屋に行って、依頼の先延ばし交渉をしてくるからさ、ちょっと待ってて」


 ツバキはそう言うと席を立ち、扉を開けた。


「ツバキ、大丈夫か?」

「うん、平気」

「あまり気を張るなよ?」

「あははっ大丈夫だって! ユラは心配し過ぎなんだよ!」

「……それなら、いいんだが……」


 そう受け答えするとパタンと扉を閉め、ユラが3人に声をかける。


「お前たちは自室で待機。ツバキが戻ってきて、その答えを聞くまでな」

「わかった」


 リオはそう答えると扉を開け、部屋の外に3人が出るとそのままリオは扉を閉めた。


「魔族との戦闘、そろそろ始まるのね」

「どういう能力者なんだろうな」

「さあな、ツバキさんとユラ団長が居るんだ、大丈夫だろ、どんな能力者であっても」


 そう歩きながら話していると、目の前からディルが現れ、声を掛けた。


「……お前ら、ギルドのメンバーになったんだってな?」

「お前……」

「たしか……」

「ツバキさんの、弟さん……?」

「俺の名前はディル! ディル=ヒューマンだ! よろしくな! 愚民共!!」


 ディルは高笑いしながら3人を指差しながらそう言うと、真後ろから「騒々しいな」とユラが3人の後ろに立っていた。


「んげ。ユラ」

「ディル、新人いびりはやめろとツバキから叱られただろうが。何故お前はそれを直そうとしない? それで? 愚民とは何だ? こいつらは今日から俺の部下になった。こいつらを注意していいのは俺と、俺たち自警団だけなんだよ」 

「んなこと俺だって知ってんだよ! その腕飾りを見りゃ一目瞭然にな!!!」

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