21話 自警団のNo.2:タルト

 ユラはツバキに向けてそう言うと、そのままツバキを安心させた。


「うん。俺の側に、お前が居てくれて良かったよ」

「ははっそんなの当たり前だろ? お前1人ではギルドマスターになんてさせないさ」

「何それ、俺が危なっかしいってこと?」

「? それ以外に何があるんだ?」


 ユラはツバキにそう言うと、ツバキはそのまま笑みを溢す。


「実際お前は、俺が居ないと何もしないじゃないか。書類整理もしない。客人が来ても対応するのは全部俺だろ? 今回のコウモリ一派の全対応は俺に任せるつもりなんだろう?」

「うーん……それは流石にしないよ。コウモリ君たちは俺の大切な大切な客人だよ? 今回は俺が対応するからさ」

「分かった」


 ユラがそう言うと、ツバキは席を立ち、執務室を出ようとする。


「出かけるのか?」

「ん? うん。警備員にもコウモリ君たちが来ることを伝えないといけないからね、ついでにリオ君たちにもこのことを伝えないと」

「そうだな、じゃあ頼む」

「うん」


 ツバキはそのまま執務室を出て、スイートルームへと向かって歩いていった。

 スイートルームへとつき、扉をノックする。


「ん、あぁ、ツバキさん」

「やあリオ君」

「どうしたんだ? わざわざこんなところまで来て」

「丁度警備員に用があってね、ついでに君たちにも伝えておかないといけないこともあったから」

「俺たちに?」

「そう。明日コウモリ君たちがこっちに来て、魔族との共闘作戦を開く。だから君たちにも共闘作戦に参加してもらいたいんだ」


 ツバキのその言葉に3人は黙って頷く。


「ふふっありがとう3人共。それじゃあ俺は警備員にもこのことを伝えてくるから、それまでに準備を進めておいてほしいな」

「分かった」


 そう言うとツバキはその場を後にした。


「準備なあ〜準備……何する?」

「何するって、そう言われてもな……」

「そうねえ、どうしましょうか」


「入ってもいいか? 客人」


 ユラはスイートルームの扉の前に立ち、中にいる3人に声をかけた。


「ん? あぁ、構わないが……」


 リオがそう言うと、ユラはそのまま部屋に入る。


「ツバキから話があったと思うが」

「あぁ、さっき聞いた。コウモリのヤツらが明日このギルドに来るってさ」

「あぁそうだ。それでさっきツバキと話をしていたんだがな」

「?」

「お前たちにギルドに入ってほしいんだよ」

「は? 何を根拠に……」

「吸血鬼が居ればこっちとしてはかなり都合がいいんだよ。お前たちが良ければ、魔族と戦い終わってからも、俺たちに力を貸してはくれないか」


 ユラはそう言うと3人に頭を下げる。


「まあ別に、暇だしな」

「暇つぶしにはもってこいか」

「いいわよ、私も彼らと同じ答えだもの。ギルド、とても楽しそう!」

「そうか、助かる。あとで俺からツバキに伝えておく。ツバキとの話が終わったらまた迎えに来よう」


 そう言うと3人に背を向け、扉を開け部屋を出たあとそのまま扉を閉めた。


「? あ、ユラ。リオ君たちと話をしてくれたんだね」

「あぁ、今終わったよ。お前も警備のヤツに話は済んだのか?」

「当たり前だよ。んで、どうだった? リオ君たちの反応は」

「二つ返事で許可を貰った」

「そっか、それは良かった。みんなに挨拶させなくちゃね」

「そうだな」

「ところで、あいつらの配置場所は決まったのか?」

「んー……とりあえずは管制室の事務処理とか、雑用とかやってもらおうかなって思ってるよ」

「雑用か……あいつらがやってくれるかどうかが問題だな。まあ、あいつらを俺が率いる自警団に入れてやってもいいが、どうする?」

「まじで!? じゃあ教育係は誰にやらせる?」

「ふふっそれに関しては、適任がいる」


 ユラは横目でそう言うと、執務室にタルトを呼んだ。

 コンコンとノックをしたタルトは、そのまま執務室へと入っていった。


「呼びましたか? ツバキさん、そして、ユラさん」

「あぁ。自警団に新入り3人を入れることにした、その3人の教育係をお前に任せたい」

「え、3人を、オレ1人で、ですか?」

「出来ないか?」

「いえ、出来ます。出来ますが、なんでオレ1人に……オレ以外にも使えるヤツなんていくらでも居ますよね?」

「俺はお前のことを、どのヤツよりも信頼しているし、信用もしている。だからお前にそいつらを任せたい。期待しているよ」

「!」

(ユラさんに、期待されている……!?)

「ご、ご期待に応えられるように、オレ、がっ頑張りますっ!」


 タルトのその言葉に黙って頷き、ユラは「新入りはスイートルームに居る、俺も付いていくから一緒に行くぞ」とタルトにそう言った。


「ありがとうございます、ユラさん!! ……ところでユラさん」

「ん?」

「新人は、どういうタイプの人間なんですか?」

「どういうタイプ、か……。ふむ。荒くれ者2人と、真面目そうで不真面目そうなヤツが1人。あと、そいつらは人間じゃない、吸血鬼だ」

「……吸血鬼!? マジですか!? 吸血鬼ってたしか、荒くれ者の集団らしいじゃないですか!! 口も悪いし態度だって……なんか滅茶苦茶心配になってきたぞ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る