20話 魔族が動く②
◇
「ぶぅううえぇえええっくしょいいい!!!」
「あお、五月蝿いよ」
PC版のフォールクライマーというゲームをしながら横目でぽつりとそう言った和巳は、大きなくしゃみをしても尚、負け無しの
「ん、どうした? カナデ」
「いや、相変わらずあおはスゴイなあって思ってさ。フォールクライマーの全国大会上位1位だし」
「それを言うならカナデだってスゴイさ。俺には負けてるけど全国2位だもんなー!」
2人が仲良く会話をしていると、外からノックする音が聞こえ、赤ん坊を抱きかかえていた
「あ。フォラスさん」
「臼﨑か、和巳はいるか?」
「うん居るよ? 呼ぶ?」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
「はーい!」
臼﨑はそう反応するとくるっと後ろを振り向き、「カナデくん、フォラスさんが呼んでるよ」とにこにことした顔で言った。
「え? あぁうん、今行くよ」
「今からカナデくん、来るみたいだよ。……もしフォラスさんが良かったら、なんだけど、中に入る? 今からお茶淹れるよ?」
「すまないな、臼﨑。ここで構わない」
「そう?」
ぽつりとそう言うと、そのまま臼﨑はその場を後にした。
「あれ、フォラス君? どうかしたの? こんなところまで来て」
「仕事の依頼だ」
「ははっやぁあっっっと来たんだね、どれくらいの期間を、ここで待ったか」
「といっても数ヶ月しか待っていないだろう」
「それはそうなんだけどさー……ね? 俺たちからしたら数ヶ月は相当な期間なんだよ」
「……そういうものなのか?」
「そういうものなの。んで、いつ来るの? お尋ね者」
「まだ決まっていないんだよ。近いうちにヤツらが来る、ロノウェがそう言っていたから間違いなくそうなんだろう」
「ロノウェくんかあ〜彼の
「分かった、また来る」
フォラスはそう言うとパタンと扉を閉め、部屋を後にした。
和巳と話をし終わったフォラスはそのまま真っ直ぐ人形たちが置いてある部屋へと歩みを進める。
「あるじさまがこっちにくるよっ!」
「ほんとに!?」
「ほんとほんと! 02[ゼロツー]がいなくなったいま、わたしたちをちゃんとあいしてくれてる!」
「あのいまいましいおねえちゃんがいなくなってせいせいだよお〜!」
「「ねー!!」」
ガチャ。とフォラスが扉を開くと、7体の人形が首を動かし、タタタッと小走りでフォラスの方に駆け寄った。
「異常はないか?」
フォラスはヒガンバナ(朱)に声をかけると、彼女はホワイトボードとペンを持ち、文字を書く。
〚ハイ、異常ハアリマセン。〛
「そうか、なら良かった。お前らも元気にしてたか?」
「うんっ! あるじさまっ!」
「ねーねーあるじさまー! おにんぎょうさんあそびしようよー!」
「ううん! わたしとおえかきしようよ!!」
「今俺は忙しいんだ、また後で遊ぼうな」
「えー!」
「もんくいわないの。あるじさまだっていそがしいのよ?」
「すまないな01[ゼロワン]」
「いいえあるじさま、おしごと、がんばってくださいな」
「あぁ。それじゃあまた来る」
フォラスがそう言うと、1体を除く6体の人形たちは「ばいばーい!!」と手をフォラスに向けて振った。
「あるじさま、あいかわらずかっこいい……」
「おねえちゃん、もしかして、あるじさまに……」
「ちっちがうわよ! よけいなことあるじさまにいわないこと! わかった!?」
「はあ〜い!」
フォラスはそのままエレベーターで上へ行き、執務室へと向かっていった。
執務室へとつき、ベリアルの方へと歩く。
「ベリ、とりあえず和巳には伝えておいた。報酬の件は伝えてはいないが大丈夫だろう?」
「ありがとうフォラス。そうだね、報酬の件は大丈夫だよ。彼を雇ったときに金額は掲示してるからさ」
「……よかった」
「人形たちの様子はどんな感じだった?」
「大して様子は変わらないな、02[ゼロツー]が居なくなってからは、アイツの罵倒の嵐だが……」
「それはちゃんと注意しないと、ね」
「あとでしっかり注意をするさ。自分たちの姉を貶していい訳がないんだ」
「02[ゼロツー]がそろそろ戻ってくるから仲良くしてもらわないといけないし、いつも貶し合いしたって良いことないんだよ」
「……そうだな」
フォラスは急に暗い表情になり、俯いてしまう。
「常にポーカーフェイスを保っているお前がそんな顔するなんて珍しい」
「たまに俺だって、こんな顔くらいするさ」
必要なクリアファイルを持ち、そのまま部屋を後にしようとする。
「フォラス」
「? どうかしたのか? ベリ」
「02[ゼロツー]の心臓の件、頼んだよ」
「あぁ、そのことに関しては抜かりはない。良いマニアを探しておくよ」
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