人間界編~魔族攻防戦編~
19話 魔族が動く①
◇
「……クロ、どうだった? ユラの魔法は」
「ボスから聞いとったけど、ユラ=ヒューマンの魔力は凄まじくてビックリしたわ」
「ふふっそうだよね、流石ヒューマンの最高傑作」
クロケルはベリアルの「最高傑作」という言葉を聞いて3個ほど疑問符を頭に載せた。
「最高傑作……? それってどういう……あっ! それって、02[ゼロツー]ちゃんみたいなもんか?」
クロケルはそう言うと、隣にいたフォラスは深いため息をついた。
「それは少し違うなクロケル」
「んぇ?」
「02[ゼロツー]は確かに俺の最高傑作だ。だがヒューマンの最高傑作は俺の造った最高傑作とは少しだけワケが違う」
フォラスは腕を組みながらクロケルの方へと歩み寄り、複数個の星の形をした鍵をクロケルに渡した。
「ちょっラスっち!? これはシクラちゃんの鍵やんか! なんで俺に渡すん!?」
「今あいつはメンテ中だ」
「ん? だから何なん?」
「これをシクラに渡してくれ、面倒くさいだろうが、頼んだクロケル」
「んぇ〜めんどくさあ〜」
「シクラに渡してくれたら甘いものをやろう」
「要らんわ!! 俺、甘いもん好きじゃないんやから! そんなこと、ラスっちも知っとるやろが!」
「知ってる。揶揄っただけだ」
「……しゃーないわ、シクラちゃんに渡してくる。あ、そうだ」
「?」
「ルーチェに、ルシェっちがおったで?」
クロケルのその言葉にぴくっと肩を鳴らしたフォラス。
「ふはっひっさしぶりに見たわあ〜! ラスっちのその顔!」
フォラスの一瞬引き攣った顔を見たクロケルは、急に笑みを溢した。
「ラスっちも人形に対しては“お人好し”やからなあ〜それだから“偽善者”言われるんや」
「……」
そう言うとフォラスから星の形をした鍵を受け取り、エレベーターをそのまま上っていった。
「……言われるようになったな、フォラス」
「別に。……そんなこと、俺の周りは全員知っている。俺がお人好しで、偽善者だということを」
俯きながらそう言ったフォラスにベリアルは口角をあげながら呟く。
「偽善者だろうとお人好しだろうと、お前は強い。それはここにいる誰だって分かってる」
「……そうですよフォラスさん、フォラスさんは強いですし、そういうのは気にしなくても大丈夫かと」
「ロノウェお前、いつから居た?」
「……始めから居ました。クロケルさんと話しているときからずっと」
本を両手に持ちながらむすっとした表情でフォラスの方を見つめているロノウェ。
「あ。ボス」
「ん?」
「……ルーチェとコウモリ一派が共闘を決めたようで」
本を見ながらそう言ったロノウェ。ベリアルはロノウェの「敵が攻めてくる」という言葉を聞き、「ふふふ」と笑みを浮かべた。
「そろそろだと思っていたよ。また会えるね、ツバキ、ユラ、そして、ディル……」
「……ヒューマン一族はあなたが悪魔に堕ちた故に迫害対象にされた。ボクは彼らが死んだと思っていましたが、まさか人間界で生き長らえているとは思いもしませんでした」
「死んだらすぐにわかるさ、俺たちでもね。ハーフエルフ・エルフの里には俺たち悪魔でも入ることができる、認定証があれば。だけど……」
「……それは分かってはいますが、その認定証は滅多に手に入れることの出来ない希少価値のある品物だと聞いています」
「それはそうだよね、君たちはその認定証は持っていない。たとえ見つけたとしても、高値で買えやしない。でもね、俺は持ってる」
ロノウェはその言葉に目を大きく見開く。
「まあ、そのことはいいじゃないか。ね? 09[ゼロナイン]」
「……はい、そうですね、ベリアルさま」
「やっぱり君は従順で可愛いね、フォラスに水のラクリマを体に埋め込んで貰った、唯一無二の特別な、俺の可愛い可愛い人形」
ベリアルはそう言いながら09[ゼロナイン]の頭を優しく撫でながらぎゅうっと抱きしめる。
「とりあえず、彼らがこの本拠地に来た場合、
「……
「ロノウェも手合わせしてもらったんだね、奏くんに。……そう、彼の裏の顔は用心棒。ルシフェル様の為に働いてもらうよ、奏くん」
09[ゼロナイン]の頭を優しく撫で、にんまりとした表情のままぽつりとそう言った。
「フォラス」
「どうした?」
「奏くんに、そろそろ仕事だよ。というのを伝えてきてほしいんだ」
「あぁ、わかった」
フォラスにそう指示すると、フォラスはそのままエレベーターで下に降りていった。
「ほんとうにだいじょうぶなんですか? ベリアルさま」
「ん? 大丈夫。っていうと?」
「かずみさまのことです、ほんとうにまけなしなんでしょうか」
「うーん……負け無し。っていうのは本人の口から聞いたことはあるけど、実際はどうなのかは分からないかな」
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