14話 四大悪魔召喚師︰シクラ

「うーん……ぼく、あんまり血は見たくなくてさ」

「だから?」

「でもごめんね? フォラスさんが契約した悪魔たちが血を好むんだ、だから先に謝っておいたんだ!」


「ということは、君は悪魔の召喚師ってこと?」


 ツバキのその言葉に「うん!」とにこやかに笑いながらそう言ったシクラは、腰に付いているホルダーを手に取り1つの茶色い星型の鍵を手に取った。


「血はキライ。でもぼくは悪魔を召喚する召喚師。クロくんに任された仕事はちゃんとするよ、ぼくに力を貸してね、アマイモン」


 鍵を前に向けながらぽつりとそう言うと、シクラの足者から茶色の魔法陣が出て、そこから四大悪魔である地の王アマイモンが召喚された。



四大悪魔とは、個々が悪魔に力を求め、悪魔が悪魔に魂を売った異形なる存在。四大悪魔の4体、そしてソロモン72柱の面々は人間に擬態出来るため、いつもは人間の姿になっている。通常の悪魔の姿は異形頭である。



「おうおうシクラ! 久しぶりだなあ!」

「うん、久しぶり、アマイモン」

「相変わらず陳腐な顔してやがるぜ」

「そう言わないでよアマイモン、とりあえず目の前にいるツバキくんを処理してほしいんだ」

「ん? んん? あーツバキか。どうせならNo.2とお手合わせしてみたかったぜ。こんなザコ、俺様オレサマ以外の奴らでぽっくり殺せるじゃねぇか」

「んんっ地の王アマイモン、ぼくに力を貸して」

「へいへい、しゃーねぇな。お前はこの気高き俺様アマイモンサマと契約をしてる召喚師。フォラスのクソ野郎に感謝すんだな、クソガキ」


 アマイモンはツバキの前に立ち、自身の手のひらを上にあげた。


「……マグニチュード」


 大きな魔法陣が地面に現れ、執務室のみ大きな揺れが現れた。


「本来なら、徐々に強い震度にして行くんだが、俺様はとても忙しくてな。とっておきだ、初っ端から震度7で御見舞してやるよ、光栄に思えよ? クソ野郎」


 ガタガタと執務室が揺れ始め、近くにあった棚やその棚の中に入っていたトロフィー等が倒れ始めた。マグニチュードを撃つ前から宙に浮いていたシクラとアマイモンには全く効果が無い。


「……宙に浮いてるとか卑怯でしょ、マジで。まぁいいや。……赤燈籠クラース・リ・レルト


 ツバキはぽつりとそう言うと、辺りから大量の赤い燈籠がふよふよと漂い始めた。


「! なんだよ、これ」

「リオくんたちは手を出さないで。これは俺と、こいつの戦いだ」


「ははっこの赤い燈籠でどうする気だ? なあ? ツバキ」

「……うーん、どうしよっか。今この部屋は魔法障壁の力で強化中なんだよね」

「……まさか!」

「うん、そのまさかね。俺は確かにユラより弱いよ、それは火力能力値の問題でしょ? でも実際は……」


レディアルト


 ツバキのその言葉1つで、赤い燈籠は一気に獄炎へと変わり、ドガアアアアアン!!! というけたたましい音をあげながら大爆発を引き起こす。


「! すっげえ火力……」

「兄貴の力はこんなもんじゃねえ。……あいつ、火力を落としやがったな」


 ぼそっとそう言ったディルは、コツコツコツと足音を立てながらシクラたちの真横を通る。


「ねえ、どこ行く気?」


 シクラはディルにそう問いかける。


「あ? お前らには関係ないだろうが」

「ディル」

「んだよ」

「ユウちゃんはユラが向かった先に居る。ユウちゃんを頼んだよ」

「お前に言われなくても俺がユウを守るわ!!」


「アマイモン」

「あ? わあってるよ! 逃さなきゃいーんだろ!?」


 アマイモンは震度を強めながら手のひらを前へと出し、大量の瓦礫をディルの目の前に落とした。


「なっ!?」

「敵を目の前にして逃げるとは、随分と気楽なヤツだなあ? ん? ヒューマンの一族サンよ」

「お前、俺らの一族のことを知ってんのか?」

「あ? 知ってるもなにも、ベリアルの神がルシフェルサマで、ルシフェルサマはいつも俺らにこう言ってる。「ベリアルはその昔、ヒューマン一族に自身の力の一部を差し渡した」と。んなことも知らねぇでのうのうと”ヒューマン”の名を語ってやがったのか? ははっ笑っちまうぜ。能無しの愚図が!!」

「何だと!? 俺が能無し!?」


 頭に血が昇り、アマイモンに突っかかっていくディルにツバキは「やめなよディル」とストップをかけた。


「あ!? 兄貴てめえ!! なんで止めんだよ!!」

「今のお前じゃアマイモンに勝てない。だから今止めたんだよ」

「ふはっよォくわかってんじゃねぇか、能無しの愚図のオニイサン? その愚図じゃ俺には敵わねぇ」

「そう。だから俺がここに居るんだよ、おわかりかな? 地の王、アマイモン」


 にんまりとした表情でアマイモンを挑発するツバキ。その挑発に乗ってしまったアマイモンは、シクラでも手に負えないくらい怒り狂ってしまう。


「あーもううぜえ! さっさと消えろ! 能無しの愚図共!!!!!!」


 アマイモンは両手を頭上にあげると、飛行船がガタガタと震え始めた。


「……海震・極シドラウス・リンファ


 目を瞑りながらアマイモンはそう唱えると、海底からドゴォオオオンというけたたましい音と共に陸に置いてあった飛行船が急に、波打ち始めた。


「え? 陸に、あるはずだよね?」


 バキッ……

 バキバキバキッ


 ボガアアアアアン!!!!!


 海震・極のせいで飛行船が置いてあった陸地は、強度な水圧によって破壊されてしまう。


 《マスター! 飛行船の置いてあった陸地は水圧のせいで破壊され、海の上に落ちてしまっています!!》

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