15話 ユラvsクロケル①
クロケルはお構いなしに壁をすり抜けながら、ユウを探す。クロケルを追っているのがヒューマン一族最凶のユラであることを知らずに……。
「ユウ!!!」
「わぁっユラ、お兄様……? どうかしたの?」
「大丈夫か?」
「ん? うん、私は大丈夫だよ?」
にこにこと笑いながらそう言うユウはぴくっと肩を鳴らし後ろを振り向きながら指を差す。
「お兄、様、後ろ……」
「! まさか……!」
「んああああ!!! やああっと見つけたわあ! さあさ帰るで、02[ゼロツー]ちゃん」
「クロケル、さん……あっ! こ、こんなことして、
「あ? わはははははは!! 笑わせんといてや02[ゼロツー]ちゃん! ラスっちが黙ってないィ!? 何で人形如きに説教されんといけんのや。……ん? おぉ! ひっさしぶりやなぁ〜裏切りモンのルシェっち、元気だったか?」
クロケルはユウそっちのけで管制室内に目を凝らし、ティアを見つけ声をかけた。
「……クロ、ケルさん、お久しぶりです」
「相変わらず俺にはふてぶてしいな、お前。まあええわ、俺にはんなこと関係ないしな。俺ら魔族を裏切ったお前はボスやルシフェル様から完全に見放されて、闇売買で売られ、どこにおるんかと思ったらツバキんとこに厄介になってたなんてなあ〜そんで? 自身が愛した02[ゼロツー]ちゃんと一緒におるんやもん。笑っちまうわ」
「ルシェを悪く言わないでよ、クロケルさん」
にんまりとした表情から一変、ユウのその言葉で苛つきを顕にする。
「まー俺にとっちゃ、ルシェっちが何処で野垂れ死のうが構わんかったんやけど、俺たちのボスの手を煩わせた裏切りモンがここにおるんやもん、普通に、“潰す“しかないやろ」
クロケルは右手を上にあげた。
「ユウ、ティア、管制室に居るお前ら! 全員、一旦この部屋から出ろ!」
「ユラさん、一体これから何をするんです!?」
「心配するな、この場にいるお前らは俺が絶対に守る」
ユラのその言葉で管制室に居る人たちは全員管制室の外へと出た。
「さて、ここにはもう戦闘を妨げるものはない、存分に戦おうか。なあ? 魔族」
「お前頭沸いとんのか? ここは管制室やろ? 水やら熱風、炎やらに弱いはずや。何わけわからんこと……」
「お前は知らないだろうが、この管制室は防水、防炎機能付きだ。そしてさっきツバキには壁の強化も頼んである。このギルドはもう防音・防水・強化・防炎機能付きになっているわけだ」
「防炎機能付き……なるほどなあ〜防炎機能を付けたんはお前らがヒューマン一族やからってことか」
クロケルのその言葉にユラは黙って頷く。
「でもなあユラ=ヒューマン、この戦闘、俺の勝ちや」
「……」
「水は炎には敵わない。それが自然の節理っちゅーもんや」
「それが自然の節理。そんなこと、一体誰が決めた? 炎は水に弱い。たしかにそれはそうだ、それは認めてやる。だがな、それはお前の軽い妄想だ。俺の炎はどんな水でも呑み込む、最高の炎だ」
ユラは自信有りげにそう言うと、クロケルは「試してみるか?」とにんまりとした表情のままそう言った。
「あぁ、構わないが?」
「
「
2人は同時に技名を言うと、水龍はそのまま煉獄の方へと向かっていき、その水龍は水蒸気となり散っていった。
管制室は一気に熱風に包み込まれ、クロケルは「あっっつ!!」と言いながら目を覆い隠す。
「敵を目の前にして目を隠すとは、いい度胸してるな? 悪魔」
「仕方ないやろが!! なんでお前はーー」
「さぁな? お前ンとこのベリアルも炎使いだったよな? そいつに聞いてみたらどうだ?」
「……どういう意味や」
「知らないのか? 天使様はな、俺たちハーフエルフやエルフを選び、その選ばれた一族にのみに天使様の力を、魔法を、何もかもを授けてくれるんだ。俺たちヒューマン一族はベリアル様という天使様に力を授けられ、炎の魔法を使えるようになった。だが、ベリアル様は悪魔に堕ち、お前ら魔族の一員になってしまった。……ベリアル様、いや、ベリアルのせいで、俺たちは堕ちた一族とまで言われ、一族を追いやられるようになったんだよ」
「んで?」
「お前にこれを言った理由は無いさ。何も知らないようだったからお前に教えただけなんだよ、ベリアルの部下のクセに俺たちヒューマン一族のことを一切知らない哀れな悪魔」
ユラのその言葉にぴくっと肩を鳴らし、怒りを顕にする。
「おっアイツが挑発に乗った!」
「来るぞ! ユラさんの逆鱗の炎が!!」
「あ? 逆鱗の炎?」
クロケルは管制室に居た獣人たちの言葉を聞き、ユラに聞き返した。
「……あいつら……」
「フンッまあいいだろう、お前に特別に見せてやろうか、俺の最強の炎を。ティア、ツバキに謝っといてくれ」
「えっ?」
「壁の大部分、及び管制室の一部半壊をして申し訳ない。と」
「えー……それ、ユラさんがツバキさんに謝ってくださいよー」
「ははっそれもそうか」
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