11話 コウモリ一派専用の吸血鬼専属の医師

 ーーその頃コウモリ一派では……


「はぁっ……いってぇし熱いし、くそっ」


 セツナはユラに大火傷を負わされた腕を掴みながらアジトへと帰っていった。


「セツナ、その腕どうしたんだ?」

「「ルーチェ」のNo.2にやられました。お義兄さんにすぐ会って来ます」

「分かった」


 カラスはそう言うとセツナをコウモリのところへと行かせた。


 執務室前に立ち、ノックをせずにそのまま扉へと入る。


「お義兄、さん……アイツ、ヤバイですよ」

「セツナくん? どうしたの? その火傷は……」

「アイツに、やられた……」

「……あいつ?」

「ユラです、ルーチェの、No.2」

「……」


 コウモリは腕を組み、近くに置いてあった受話器を手に取り電話をする。


「セツナくんの腕を見てほしい、大火傷を負っているんだ」


 アジト内常駐の吸血鬼専属の医師を執務室へと呼んだ後、コウモリはセツナに近付き悲しそうな表情を浮かべた。


「ごめんねセツナくん、君1人を行かせるべきじゃなかった」

「いえ、オレはお義兄さんの役に少しでも立ちたくて……」


 セツナのその言葉に黙って頷き、そのまま頭を優しく撫でた。


「お義兄、さん?」

「ごめん……本当に、ごめんね……」

「気にしないでください、これはオレが……」

「違う。違うよセツナくん、この件は俺の責任なんだ。外ではツバキがユラに全てを任せているのは俺だって分かっていたのに、それなのに君1人を行かせるような真似をした。全ては俺のせいなんだ……」

「……お義兄さんは、優しすぎます……」

「ふふっ俺はそれだけが取り柄だからね」

「知っています」


 セツナがそう言うと、扉の向こうからノックが聞こえ、コウモリは「どうぞ」と声をかける。

 扉を開けると救急箱と小さな箱を持ち、ペスト医師のようなマスクをつけた医師が立っていた。


「お待たせ致しました、ボス」

「うん。ラクナ、電話越しで言ったと思うんだけど、セツナくんの腕を見てほしいんだ」

「畏まりました。セツナ様、腕を見せてください」


 ラクナはセツナにそう言うと、セツナはそのまま腕を見せた。


「火傷……いや、腕を切断するほどの大火傷、ですね……」

「え。腕を、切断!?」

「はい、かなりの魔力が籠った炎の魔法です、ヒューマン一族を酷く怒らせたのでしょう。……この魔法は恐らく、煉獄……」

「煉獄ってまさか、高火力を持つ、あの……!?」

「そうです。流石は炎の使い手……凄まじい力ですね」


 セツナの火傷箇所を触診しながらそう言う。


「安心してくださいセツナ様、義手を持ってきておりますので、きちんとリハビリを受けて下さればこれまで通り腕を動かすことも可能でございます」

「……お義兄、さん、オレ……」

「……ラクナ、セツナくんの損傷した腕は、もう使い物にならないのかな」

「そうですね、セツナ様の腕は酷く損傷しております故、廃棄処分になります」

「そっか」


 コウモリは悲しそうな表情を浮かべながらそう言うと、セツナはそのまま笑みを溢した。


「大丈夫ですよお義兄さん! オレ、義手全然! 大丈夫です!」

「分かった。ラクナ、やってもらってもいい?」

「了解ですボス。ではセツナ様、かなり痛いかもしれませんがご勘弁を」


 ラクナは大きな斧を取り出し、大きく振りかぶった。


「……」


 セツナは瞬間的に目を逸らすと、ラクナは大きく振りかぶった斧を下ろし、セツナの腕を分断した。


「ンあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!!!!!」

「セツナくん!!」

「ま゛っ゛て゛!? い゛た゛い゛っ゛て゛レ゛へ゛ル゛し゛ゃ゛な゛い゛!!!! お゛義゛兄゛さ゛ん゛!! オ゛レ゛、死゛ぬ゛か゛も゛!!!!!!!!!」


 ラクナは分断した腕を取りながらセツナに顔を向けながら口を開く。


「セツナ様はとても運がよろしいですね」

「はぁ!?」

「腕を分断した吸血鬼たちは、ろくに言葉を出すことすら出来ませんでしたよ。流石純血の吸血鬼、生命力が凄まじいです! まあ稀に、混血にも生命力が凄まじい輩もおりますが」


 そう言いながら義手を取り出し、そのままセツナの肩に取り付けようとする。


「あ、じっとしていて下さい。腕に接続するのはそう簡単なものではありませんので」


 ラクナは義手のスイッチを押すと、くねくねと4〜5本の紐のような物が出てくる。


「少しチクッとしますが、それほど強い痛みではありません」

「ッ……はぁ、はぁっ」

「セツナくん、大丈夫?」

「は、はい、大丈夫、です……」


 脂汗を掻き、「ははは」と辛そうな笑みを浮かべるセツナに、コウモリは心配そうな表情でセツナの方を見つめた。


「構わないよラクナ、ひと思いにやってくれ。躊躇されるとオレが困る」

「了解ですセツナ様」


 ラクナはそう言いながら義手をセツナの肩へと近付けると、4〜5本の紐のようなものがセツナの肩にプツップツッという音と共にくっついていく。


「っく……」


 ずぶずぶと紐のようなものがセツナの肩の中に入り込んでいく。


「あと少しです」


(大丈夫……大丈夫、オレは、こんな痛み、なんか……!)


「終わりました、私が持ってきた義手がセツナさまの肩に完全に繋がりました。よく頑張りましたね、お疲れ様でした」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る