08話 セツナ②
目を真っ赤にしながら怒っているセツナをおどおどしたような表情で未だ見つめているスズランは、セツナの顔を見ながらそのままコウモリに問いかけた。
「兄さん、なんでこんな人を僕たちの家族に入れたんですか?」
「スズ、彼はね」
ぽつりとそう言うコウモリを目をほんのり赤くしながら見つめているセツナ。そんなセツナは、自身のことをスズランに伝えてほしくないのか、コウモリの方を見て首を横に振った。
「前も言ったけどね、セツナ君」
「はい」
「俺もそうなんだけど、スズやカラス、ここにいるみんなは君の家族なんだよ」
「はい、それは知っています。ですが、オレの家族はお義兄さんだけですから……それだけは譲れません」
「…………ます……」
「は?」
「違い、ます……兄さんは、みんなの兄さんです。セツナ君、貴方は後から入ったので分からないと思いますが、僕を含め、にーちゃも、貴方も、皆みんな兄さんに救われました。だからみんな兄さんに付き従うんです、だから兄さんを慕うんですッッ!!」
カラスの後ろに隠れ、目に涙を溜めながらそう言うスズランをコウモリは両手を広げ、「スズ、おいで」とそう呟いた。
「えっ……お義兄、さん……? なんで、なんでそんな餓鬼を……!」
「仲良くしてほしいんだよ、スズと。この子も君と同じ境遇の子でね……ーー」
「知ってますよ、ですがコイツはオレとは全く違う境遇に居た奴です。闇売買に売られていたのはオレと同じです、それだけは認めますよ。ですがコイツは優しい王族に買われた。たまにしか現れないレアみたいじゃないですか! それなのに、お義兄さんやカラスさんたちにちやほやされて……!」
「羨ましい……」と言わんばかりに、歯をキリキリと鳴らし、目に涙を溜めていた。
「オレだって……」
と、言葉を言い終わる前に口を紡いだ。
ーー 一方その頃リオたちは……
既に日も落ち始め、辺りは暗闇に包まれていた。寮の下見を。ということでそのまま立ち上がり移動を始める。
案外自分たちが居たところからあまり距離が無いところに寮があり、その寮の目の前には3人が見たことのある顔の青年が立っていた。
「やあ、待ってたよ。兄さんたち」
口角を上げながらぽつりとそう言ったのは、リオの弟のグロリオサ。グロリオサはたたんだ日傘を持っており、彼らがここに来るまでの間、ずっとこの寮の前で待っていたという。
「グロリオサ、やっぱりあの時の気配はお前だったんだな」
「なんの事だ?」
ジニアはリオのその言葉にぱっとしないような表情でそう言った。
「ふふっやっぱ気付かれてたんだね」
「気付くだろそりゃ。つーかお前、生きてたんだな」
「まぁね。兄さん、俺が居なくて心配した? 心配したでしょ。俺ね、人間界でずーっと生きてたんだよ?」
「長からお前が生きてるって知らされたとき、俺らはかなりびっくりしたよ」
グロリオサは未だポーカーフェイスを保ちつつ、3人にそのまま近付いた。
「ごめんね、兄さん。これは必要なことだったんだよ。俺が吸血鬼界で死んだように見せかけていることでコウモリたちを現段階で翻弄出来ているんだ」
「は? どういうことだよ」
「簡単な話よ。要はね、コウモリたちは吸血鬼界に居る私たちのデータは持っていても、人間界にいる吸血鬼たちのデータは持っていない。ということ。グロリオサちゃんは吸血鬼界で死んだ。とい認証をされたから、今でもコウモリたちは、グロリオサちゃんが死んでると思い込んでいる。という訳よ」
「おお〜」とそう言いながらパチパチと手を叩く。
「流石だねエリカ君。まぁそういう事だから、特にジニア君、君の幼馴染にはくれぐれも、俺が生存していることは言わないように」
「そのことなんだけどさ……」とぽつり。
グロリオサは「?」と困ったような表情をしながらジニアの方へと視線を向ける。
「……ルピナスと、連絡が取れないんだよ」
「えっ? まじで? それはなんで……」
「それは知らない。リオやエリカの考えだと、ルピナスはコウモリのマインドコントロールで操られてるんじゃないかって……」
「……」
一瞬言葉を詰まらせる。言葉を詰まらせ、色々と考えたあと首を横に振った。
「コウモリの特権の中に、マインドコントロールは入ってないよ」
「じゃあ、一体誰が……!!」
「セツナ君」
グロリオサの口から「セツナ」の名前が出るとは思って無かった為、3人は一斉にぴくっと肩を鳴らした。
「セツナ君の特権は「崩壊」。兄さんと同じ、吸血鬼界を脅かす特権の1つだよ。そしてもう1つの特権が……「マインドコントロール」。それもそのマインドコントロールは一番たちが悪くてね、その特権を使われた人間及び吸血鬼は、一部の記憶を除いて全て抹消されてしまうらしいんだ」
真っ直ぐな目でジニアに向けてそう答えたグロリオサ。ジニアは拳を作り、ぷるぷると震え、怒りを顕にしていた。
「……お前がお義兄さんに特権を貰ったリオか?」
彼らの背後から声がして、はっとした表情で後ろをばっと振り向くとそこにはピンク髪で、後ろに一つ結びをしている青年が立っていた。
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