03話 混血と混血と仲良くした純血がコウモリ一派の餌食となれ

 リオはジニアにどんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。

 幼馴染が「道具」扱いされていることへの怒り、ブルースターへの憎しみが出ていた。


 そんなことを考えていると、脳内に純血おさの声が聞こえてきた。長は念話の特権を持っているらしく、「人間界へと向かってほしい」という連絡のみにしか使わないらしい。


 その長からの伝達は「今すぐ人間界へと向かい、人間界に巣食うコウモリ一派を倒して欲しい」との事だった。きっと俺たちが邪魔だから門前払いしたいのだろうが、俺たちもブルースターの行いには不満しか無い為、了解せざるを得なかった。


「……とうとう来たか」


 未だ苦痛の表情を浮かべながらそう言うジニアの方を辛そうな目で見るリオとエリカ。


「今回別に人間界に行くのは私たちじゃなくてもいい気もするけど……」

「ルピを助ける為だ、俺は人間界に行く。お前たちに否定されようが俺は……」

「くすっジニアちゃんがそう言うなら私たちも行くしかないわね」

「だな」


 リオはエリカに頼み、長に念話を繋いでもらった。

ーー「人間界へ行くのに異論はありません」と。



 そしたらシュンッという音ともに大きなサイズの荷物が3人分転送された。リオたちはその鞄の中身を見てみると、人間界へと行くための必要必需品等が入っていた。


「そこに人間界へ向かうための必要不可欠な道具が入っている」

「……人間界へ向かうための、必要必需品?」


 ジニアは物凄い形相で長に質問を投げかけた。


「お前らは混血と、混血と仲の良い純血だろう。徒歩で行くのが妥当だと思うんだが、違うかね」

「えぇそうね、もういいわ。貴方と話しても無駄だということは、私たちが一番よく分かってるもの」

「痴れ者が。誰に向かって口を聞いている? 混血や混血と仲の良い純血に用は無いんだ。即刻この吸血鬼界から立ち去り、コウモリ一派の餌食となってしまえ」


 この言葉から、今の長はリオたちの事を良くは思っていない。いくら長だからとはいえ、そんなことを子供に言うのは間違っている。

 と、そう長に言っても暴言が吐かれるだけと知っている為、リオたちは何も言い返すことは出来なかった。


「出発時刻はお前らに任せる、出来るだけ早く出発するように。」

「……分かりました」


 そう長が言い残すと念話は切れた。3人は長の言ってた言葉を思い返していた。

ーー「即刻この吸血鬼界から立ち去り、コウモリ一派の餌食となってしまえ」の一言を。


本当ほんとに彼“ら”は、私たちのことが邪魔なのね」

「みたいだな。まぁでも、長は俺たちが人間界に行くことを見越して準備してくれたんだから、一応は良い奴ってことだよな?」

「うーん、なのかな……でも、さ、中身確認しないと何入ってるのかが分からないぜ?」


 リオのその言葉に、「一理ある」ということで、トランクスケースを開け、中に何が入っているかの確認をした。

 そのトランクスケースの中には人間界で使う必要必需品や3人分の交通費、等々が入っていた。


「俺たちの事嫌いなくせにこういうの用意するとか、面白い長だな」

「……今から行こうか、このトランクスケースの中身も確認したし、変なの入ってないって分かったしさ」

「ルピナスちゃんのことも、セツナちゃんの居所とかも気になるもの」


「……結晶の特権、ほんとに持ってんのかな、ブルースター」

「確か吸血鬼には致命傷の特権なのよね、“結晶”って……」

「一瞬で絶命する特権らしい。本で読んだ」

「こっっっわ」

「……ルピナスちゃんは「記憶操作」の特権を持っているのよね。あのね、これは私の憶測なのだけれど……」

「……なんだよエリカ」


 ルピナスの話になると瞬時にイラつくジニア。


「ブルースターに操られているんじゃないかって思うの。彼、ブルースターの近くにいながら暴言も泣き言も言わなかった。ましてやジニアちゃんに助けすら求めなかった。こう考えるのが一番妥当だと思うのよ」

「……アイツ、絶対ぜってぇ許さねぇ……俺の幼馴染を操って……絶対後悔させてやる」


 ふつふつとジニアの怒りが込み上げてくるのが分かる。一目ルピナスと会うことが出来ればジニアは安心するのだろうか。

 それとも、ブルースターを殺す勢いで突っかかっていくのだろうか。


 それはブルースターとルピナスに会うまで、誰も分からない。

 もし仮に奴が結晶の特権を使った場合、最悪死ぬ可能性だってあるんだ。まあ、ジニアの特権にかかれば大丈夫なんだろうけど。


「「重力操作」と「幻覚・幻術」、そして俺の「粉砕」の特権があればブルースターも倒せる。そして、ルピナスも助けられる」


 リオは笑みをジニアに向ける。ジニアは「そうだな、ありがとうリオ」と落ち着いたような表情でそう言った。

 ピピッと長からの伝達念話が届く。


「あぁ、言い忘れていたことがあった。お前らは未だに特権の力を制御出来ていないだろう」

「だからなんだよ」

「魔法を制御出来ない人間が通う学校があるんだが、この世界にはそういった施設が無いからな。お前らに必要ないと思うが、一応聞いておく」

「……」


 リオたちは長のその言葉に対し急に黙り込む。


「コウモリ一派に勝つ為には特権の制御が必要不可欠だ。お前らは、そういった学校に通いたいと思うか」

「なんだそういうことかよ」とジニア。エリカもリオも、ジニアと同じ考えだ。


「ンなの、行くに決まってんだろうが」

「分かった、“グロリオサ”にそのことを伝えておく」


 長が「グロリオサ」の一言にぴくっと肩を鳴らしたリオ。ーーグロリオサ……? 生きてたのか?グロリオサが生きてることをなんで俺に隠しているのか分からなかった。だけど直接会って奴が生きてる真相を突き止めたいと思った。

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