第5話 オフパコ~ビッチを添えて~⑤~

 今日のデートのお相手は如月笑花。同人で大活躍中の漫画家さんだ。集合場所は上野にした。公園入口で集合にしたのだが、姿が見えない。と思ったら。


「あ、あの!おひさしぶりですぅ!」


 ピンク色のセミロングボブの女が話しかけてきた。顔をよく見ればエミカだった。


「あれ。随分変わったね」


「あ、はい。どうでしょうか…?」


「かわいいよ。個性的でイケてる」


「ありがとうございます!」


 そして俺はさりげなく彼女の手を取ってデートを始めたのである。






 美術館を選ぶのは二流。一流は博物館の方を選ぶ。


「すごいですねぇ!これとか次のマンガに出してみたいです!」


 エミカは科学系展示物を全力で楽しんでいた。俺たちクリエイターは意外と他の人間の作品を好まない。それよりも自分の作品をより深くしてくれるインスピレーションを高めてくれるような何かを欲しているのだ。


「飛行機もいいですけど、シャトルかっこいいですよね。あ!なんか閃きました!シャトルでパコパコするのはどうでしょうか?!」


「重力の加速におっぱい揺れまくりそう。草」


 二人で思いついた妄想を笑い合う。デートとは思想を共有する過程だと思う。それがきっと楽しいのだ。夜は繁華街の方に向かった。


「綺麗なお姉さんいっぱいいますね。どういうことしてくれるんでしょうか?」


「ああいうお店は喋るだけだよ。あっちの裏側行くと風俗街になってるけど」


「へぇそうなんですかぁ」


 エミカは興味津々な用だ。俺は風俗街が見えるお店を選んでそこでご飯を食べることにした。


「あ!入って行きました!おぢさんが入って行きましたよ!」


 エミカは風俗店に入って行くおぢの姿になんか興奮していた。趣味が悪い気もするが、俺も結構楽しんでいるのでセーフ。


「すごいなぁ。どうなってるんでしょう?」


「見てみたい?」


「見れるんですか?」


「ちょっと知り合いいるから頼んでみるよ」


 俺は風俗のキャッチをやっている奴に電話する。借りは出来てしまったけど、風俗店の中に案内してくれることになった。


「こ、ここでやってるんですね!」


 ソープランドの浴室を見ながらエミカは鼻息荒くスケッチを始める。風俗店の中は普通の女性にはなかなか縁がないだろう。


「殺気の待合室とかおぢだらけですごかったです!今度本にします!」


「楽しかったなら良かったよ」


 そして俺は時計を見る。終電はもうとっくに過ぎていた。


「終電過ぎてるの気づいてる」


「ふぇ。あ…すみません。夢中になりすぎてました…」


「この後は俺に任せてもらってもいいよね」


「はい。お任せします!」


 そして俺はそのまま繁華街の裏にある鄙びたラブホテルに彼女を連れ込んだ。





タイトル:元気ですか?

本文:いつも元気ですよね。でもその元気さをあなたは私に分けてくれることはない。私はあなたのお陰で生きていられるのに、あなたが傍にいないからぽっかりと開いたまま人生の闇を今も歩いています。一度あなたという光を見た。その光が眩しすぎて目が眩んで他のすべてが闇にしか見えないのです。あなたにとって他の女は私の代わりになるのでしょう。でもわたしには他の男はあなたの代わりにはなりえない。知っているくせに私を放っておくなんてあなたは冷たい人だと思います。他の女たちがあなたの冷たさを知ったらきっと離れていくでしょう。でも私は離れていくことはありません。それをちゃんと知って欲しいのです。わかっていて欲しい。だから顔を見せてください。あなたと一緒に過ごしたい。あなたがどんなにひどい人でも私は愛し抜く覚悟があります。





 幼馴染は俺の一面しか見ていない。だからこんな戯言ばかり書いて寄こす。俺はDMを送ってきたアカウントをブロックして眠りについた。












 デートの予定はこれで今日で終わりだ。炎上計画の最後のターゲット。不知火理乃奈リノナ。Vの者である。チャンネル見に行ったけど。マジで投げ銭を積みまくっていた。俺なんか目じゃない金持ちだろう。


「神様。お待ちしておりました」


 俺が横浜の駅にやってくると彼女は待っていた。銀髪に赤い瞳の美しい女。声を聞き間違えるはずはない。彼女がVの者シブキシエミこと本名不知火理乃奈である。マスクの下はこんなに綺麗だったのか。ビビる。道行く人たちは男女も関係なく彼女のことを見ていた。神秘的な髪の毛と瞳の色がカリスマを発している。Vの者よりも顔出しの方が絶対に人気出ると思う。そうしないあたりになんか闇を感じるが。


「じゃあ行こうか」


「はい。神よ」


 なんかもう本能が行けるって囁いたので、彼女の肩を抱く。リノナは俺に頭を預けてきた。あーこれかくていでやれるわー。とりあえず昼はみなとみらいを遊びつくしてタピオカやって過ごした。なお費用は全部リノナが払ってくれた。そして夜はタワーの展望台のソファー席を借りて二人で夜景を楽しんで、そのままそのタワーの一室に泊まった。今まで抱いた女の中で一番美しかった。あとは炎上してくれれば御の字である。




タイトル:会いに行きます


本文:ずっとあなたから迎えに来るのを待っていました。でもそれは間違いだと気がついたのです。だから会いに行きます。私はあなたと添い遂げる。








 今までとトーンがちがうDMにうすら寒さを感じたけど安定のブロック。どうせ口だけ番長だ。放置推奨。俺は俺のやりたいことをやるだけだ。幼馴染に手を煩わせている場合じゃないんだから。

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