第50話 天国に捧げる

僕、増田健太郎は、黒木数人のお通夜に来ている。


美佑が他界してすぐの事だった。数人は、心臓疾患で突然死したのだ。


美佑のお通夜の際、2人の大学時代の仲間に一緒に精進落としをしないかと誘われた。

その席上、『数人は大丈夫だろうか』とみなが言う。

僕も同意見で、

「なるべくみんなで、数人に声をかけよう」と仕切り、みな賛成してくれた。

この言葉通り、僕もそうだが、入れ替わり立ち代わり、みなは連絡をしていたという。

そのかいがあって数人は、立ち直った様に見えた。

しかし、その精神に肉体が耐えきれなかったのだろう。


あっさり美佑の元へ行ってしまった。

美佑のいない世界には意味がないと言わんばかりに。


今回も、2人の大学仲間から一緒に精進落としをしないかと声をかけられる。

しかし、そんな気になれず、断りを入れて、家に帰った。

コンビニで買ったビールを天にかかげ、一人静かに2人を見送る。


僕は、常々思っていたことがあった。それは、

『美佑が僕を選んでいたら』と。


少なくとも、僕には夢があり、美佑と同じ大学に通う事は無理だった。

僕は教職の授業で精一杯だったし、美佑は吹奏楽部に入り、かなり忙しいと言っていた。

こんな中、付き合っていけるだろうか。少なくとも僕は無理だと思う。

たとえ、大学時代を乗り越えたとしても、僕は教師、美佑はシステムエンジニアというお互い多忙な職業についていたため、結婚までたどり着くことはなかっただろう。

美佑と同じシステムエンジニアになった数人とは違い―――

やはり僕は、数人の様に、ずっと美佑と一緒に居る事は出来ない。

高校時代から今までずっとなんて。


「数人、本当に美佑が大好きだったんだね」

これを天国で聞いたら、『それ程でもない』とか言いそうだな。

僕は、まだそちらには行けない。

妻とまだ小さい子供を置いていけないから。

でも、その時がきたら、美佑も数人も僕を迎えに来てほしい。


最後にビールを飲み干し、

「僕たち3人はずっと仲間だよね」

と1人、天国に行ってしまった2人に語りかけた。



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本編は終了しましたが、美佑と関係がある人の番外編を公開します。

すべて短編小説にしているので、量は多いのですが、ご一読いただけると幸いです。

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