第46話 追憶3~追いかけたのかな

マーチングを披露するサマーコンサートの練習が始まる。


俺としては、そもそも中・高でコンクール疲れしていたので、サマーコンサートに熱を入れる事は楽しい。

マーチングについては、練習についていくのがやっとだったけれども。


暑い、とにかく暑い中練習を積み、本番がやってきた。

マーチングステージの幕が上がる。

俺は、ステージの熱いライトの元、汗だくになりながらに隊列を作り、美佑は、かわいらしい衣装を着て、一生懸命旗を振っていた。


コンサートが終わると、打ち上げだ。

この年は長野県で実施したので、宿泊したのだが、宿の人が、打ち上げ用に庭を提供してくれた。

俺は、マーチングのコンサート初体験のせいか、今まで味わったことのない解放感に包まれ、みなとビールをかけあっていた。

もちろん美佑も、晴れ晴れした顔をして、ビールを浴びていた。

大人じゃないので、飲めないのは残念だったが。

俺と美佑は、部活の中では、極力一緒に居ないようにしていた。トラブルのもとになりたくなかったからだ。

なので、このビールかけも、2人バラバラだ。

だけど、美佑はモテるので、男子の先輩からビールをかけまくられていて、気が気ではなかったのも覚えている。



俺たちが参加できない、コンクールの日が訪れた。

大学は東京都に籍があるため、都大会に出場する。

この年は上手い人が多かったが、結果は予選敗退だった。

自主性を重んじるとはいい響きだが、団体戦と言える吹奏楽のコンクールで上位を目指すには、もろ刃の剣なんだなと感じた。



秋が深まっていく中、今度は定期演奏会の準備が始まった。

毎年十一月下旬に実施する演奏会は、マーチングはなく、オーケストラの演奏会のような構成で実施する。

この演奏会で、4年生は部活を引退だ。

俺は、この年の曲がどれもこれも全く好きではなかったので、熱心に合奏に参加しなかった。

でも、それを後悔はしていない。

美佑には『数人っぽいね』と笑われたが。



演奏会が終わり、街にイルミネーションが灯る12月初旬に、合同演奏会が実施される。

合同演奏会と言うものは、東京都に籍がある部活のメンバーをオーディションで選抜して、演奏会を開くものだ。

俺たちは一年生という事もあり、実力的に参加はできない。

聴きにいったが、流石の選抜メンバーだけあり、素晴らしいステージだった。俺と美佑は、『一度は参加したいね』と帰り道で盛り上がったのを覚えている。


驚きだったのが、佐久先輩と須藤先輩が出場していた事だ。


俺は、大学で吹奏楽部に入る気は毛頭なくて、高校時代に、どの大学が強いのか知らなかった。

わかっていたのが、佐久先輩と須藤先輩が同じ大学に進学したというだけである。

美佑がボソッと、

「須藤先輩、佐久先輩を追いかけたのかな」と言った。

いくら鈍い俺でもわかる。でも佐久先輩には彼女がいたはずだ。

思いは報われたのか。美佑も俺も踏み込む事はやめた。


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