第42話 ときめく同窓会
まだまだ、大学時代という、数人との思い出があるのだが、それは後日思い出そうかなとか、大学の同窓会はいつかな、とか、まだ思いにふけっていると……
「なに、ボーっとしているんだ。悪い癖だな。お茶が冷めてるぞ」
数人が私の肩を、ちょいちょいとつつき、現実に呼び戻してくれた。
「いくら声をかけても反応しないから、何事かと思った。何を考えていたんだ?」
「秘密」
「まあ、いいけど。お茶入れなおしてくれよ」
数人が先にテレビに夢中だったくせにと思ったが、反論すると理詰めで返ってくるので面倒くさい。
「仕方ないな」と折れる。
「お茶飲んだら寝るか」
「そうだね」
数人と私は今でも、一緒にお風呂と、一緒のベッドで寝る、程度には仲がいい。
彼女いない歴=年齢、の息子は私たちを羨んでいるが、都度、数人から『高校で帰宅部だったおまえが悪い』と冷たく突き放されている。
同窓会は、やはり百合の立案だ。
みなと思い出話とか、現在どうしているのかと、話に花をさかせ、時間はあっという間に過ぎてしまった。
「なごり惜しいと思うけど、解散!」
と最後まで、百合が仕切って、同窓会は終わる。
数人と帰り支度をしていると、健太郎から声をかけられた。
「美佑、これ、数人と一緒に選んだんだ。今日の同窓会の記念だよ」
私は年甲斐もなく、ときめいてしまう。
渡された袋を開けると手袋が入っていた。黒レザーに裏は毛糸になっている大人の女性向けのものだ。
「数人から、美佑は高校の時に僕らがあげた手袋をまだ使っているって聞いてさ。
これを機に新しい手袋をしてもらおうと、2人で用意したんだよ」
あまりの嬉しさに涙ぐんでしまう。
「健太郎、数人、素敵な手袋をありがとう」
二人の目をしっかり見つめてお礼をいう。
数人は、高校時代に戻ったような、涼しくも照れ臭い表情になり、
「美佑、新しい手袋にして、古いのは捨てるんだぞ」
と、私に言ってきた。
「捨てられるわけないじゃん」
「だから断捨離が下手なんだろう」
「まぁまぁ2人とも。続きは家に帰ってからにしてくれない?」
健太郎が、高校時代から変わらない眩しい笑顔で、場を収める。
私は、くすぐったいような心地を覚えながら、
「3人で高校時代に戻ったようだね」ちょっと笑った。
「そうだね」
「そうだな」
最後は3人でお互いを見合いながら、大笑いになった。
そう。私たち3人はいつまでも仲間だ。
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