第41話 卒業~3人の進む道と回想の終わり
「卒業おめでとうございます」
卒業式が終わった音楽室には、トランペットパートのみなが集まっていた。
美南と若菜から花束を受け取る。
美南が私に、
「黒木先輩と石原先輩の事には驚きました。同じ大学なんてすごいですね」
と、声をかけてくれた。
そう、数人と私は、同じ経済学部を目指していたこともあり、第一志望から滑り止めも含めた、全志望大学を一緒に受験したのだ。結果、共に合格した私立大に進学を決めた。
数人は、もしかすると、国立大の経済学部に合格できたのかもしれない。
しかし私は、受験必須科目に数学が含まれるため、合格は無理だ。
数人はあきらめてくれたのかもしれないと思っているが、聞くことはしていない。
美南には、数人と付き合う事になったのを、直接伝える事はしなかった。
打ち上げの日の事を私には知られたくないのでは、と思ったのだ。
続いて、若菜が
「増田先輩は第一希望の国立大の教育学部に合格したって聞きました。おめでとうございます」と。
健太郎は、教師を目指している。しかし、健太郎は長男で、家族には負担をかけたくないと言って、国立大を志望していた。
無事合格できたのを知った時には、数人と一緒に健太郎のクラスに押しかけて、全力で、『おめでとう』と伝えた。お返しに健太郎からは、全力で『同じ大学に合格おめでとう』とお祝いしてもらった。
私たち3人は、後輩達からのお祝いの言葉に、応える。
数人が代表で、
「今日の演奏もとても良かった。成長が感じられる。定期演奏会には行くから、楽しみにしているぞ」と、伝えた。
その言葉を受け、後輩たちの目には涙が光っていた。
その後、クラスの送別会に参加し、裕子とお別れをした。と言っても、一年に一度、お正月には会うのだが。
裕子と雅美は、浪人だ。来年にかけると意気込んでいる。
こうして私の、心が躍るような、そして、とても甘い高校生活は終わりを告げたのである。
ーーーー
高校生の回想は終わりましたが、30年後の話に続きます。
ハッピーエンドが好きな方は次のお話(42話)まで、その後は番外編を読んでいただけると幸いです。
続きは悲しいお話で公開するのを迷いましたが、題名の「ビターチョコレート」に該当する話なので、公開します。
もし読んでいただけるなら、数人の豹変ぶりを見てやってください。
引き続きよろしくお願いします。
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