第37話 切なくて行き場のない後輩達の想い

1・2年生が、文化祭に向けた練習を始める。

その練習の合間を縫って、トランペットパートのコンクール打ち上げが行われた。


 昔からトランペットパートは仲が良くて、打ち上げとかなんとか、色々理由をつけてパートのメンバーだけで集まる。

やることは各会で違い、夢の国に行ったり、スケートをしに行ったりと様々だが、必ず最後はメンバーの家で色々やりながら1泊する事になっている。

 数人が入部してからは、数人の家に集まるようになった。なぜなら彼の家には離れがあるからだ。


 今回は、ボーリングをした後、数人の家に泊まる事になった。

 どんくさい私は、最下位で、お約束の様に、みなにジュースをおごることになってしまう。

ため息をついた私を見た数人が、

 「やっぱり最下位は美佑か」

 畳みかける様に健太郎が、

 「だね~」と相槌をうつ。

 私は、ただでさえも落ち込んでいるのに、止めを刺された。

 「2人は私の事、なんだと思っているの?」

 ボヤキ半分、聞いてみる。

 「「珍獣」」

 2人は声をそろえて、ニヤニヤしながら回答してくれた。

 この回答に、反論すべく色々考えたが、良い言葉が見当たらず、仕方なく不名誉な称号をうけいれる事にした。


 ボーリングが終わり、今回は数人の家でゲーム大会をして夜更かしをする。ゲームは当時大流行だった落ちゲー、ぷよぷよが選ばれた。

 私は、ゲームが全くできない。

最初のうちは、みなのプレーを鑑賞していたが、眠気に抗えず、船を漕いでしまう。そんな私の様子を見て健太郎が、

「美佑って本当に眠たがりだよね。端っこの布団で寝なよ」

 と声をかけてくれる。私はありがたく提案を受け、みなより一足早く眠りについた。

 


 ゲームが終わったのだろうか。静寂の中、目が覚める。

もうひと眠りしなくてはと考えていたら、美南の声が聞こえてきた。

 「黒木先輩。今日だけでいいんです。手をつないで寝てくれませんか?」

 私は息をひそめ、とっさに寝たふりをする。

 沈黙が続き、

「―――いいぞ」と、数人が応えた。

 美南に続く様に、若菜が、

 「増田先輩、私も今日だけでいいので、先輩と手をつないで寝たいです」

 また、沈黙が訪れ、

 「―――いいよ」と健太郎が応えた。

 2人は先輩に連れてこられた訳ではなく、自分で部活に入る事を決めた、と言っていた。

 雅美と同じように、音楽を続けたい気持ちはあるのだろうが、先輩を追いかけてきたのだと初めて気づいた。

 今まで、健太郎と数人が2人の気持ちに気付いていたかどうかはわからない。

でも、この様なお願いをした、という事は、2人の恋は実らなかったのだと思った。

美南と若菜は、私をどんな感情で見つめていたのか。

きっと苦しかっただろう。

それでも、ついてきてくれた。

なのに、どうにもしてあげられない。

 嫉妬という感情はなく、ただただ、切なさが胸を締め付けた。

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