第36話 熱い夏の終わり

 空気も気持ちも熱い中、コンクール予選を迎えた。私たちにとって最後のコンクールだ。


 部員のモチベーションは最高潮だ。やるべき事はすべてやった、と思い切り、舞台袖に待機する。

 私は、鼓動を速くしている緊張を感じながらも、健太郎と数人に声をかける。

「最後まで一緒に演奏出来て楽しかった。本当にありがとう」

 舞台袖は暗くて、2人の表情は見えない。

まず健太郎が、

 「美佑、言うのが早いよ。今は予選なんだから。まだまだ一緒に吹けるよ」と。

続いて、数人が、

 「確かに早いな」と、手短に返事をした。

 3人で会話をしていると、前の学校の演奏が終わる。

 入場し、みな、課題曲、自由曲を吹き切った。


 結果は、予選突破で、本選に進み、関東大会の切符を手にしたが、全国大会には進めなかった。


 昨年の結果から、よくここまで立ちなおったものだと、指導に来てくれていた先生や先輩方から声をかけてもらった。

しかし全国大会に行けなかったのは、悔しくてたまらない。


 数人、田中君、百合が幹部として、みなに語りかける。

 『俺たちについてきてくれてありがとう。力の限り、良い演奏ができたと思っている。全国大会に進めなかったのは悔しいが、後輩達がこの悔しさをばねに成長し、無念を晴らしてくれると信じている』と。

 この挨拶を聞いたみなは、涙をおさえる事ができなかった。


 これで、3年生は引退となる。


 九十九高校吹奏楽部に憧れて入り、仲間と共に、夢中に練習を重ねた日々は終わりを告げた。


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