第25話 須藤先輩の涙
夏休みが近づいてくる。今年の夏は、例年よりも暑くなる、と予報があった。
昨年より蒸し暑い中での野球応援は、昨年同様の結果に終わり、またも、みなのテンションは下がってしまった。
野球部も数年前には甲子園に出場していたのに、今は見る影もない。
その姿を見て、私たちも人の事を言えないのでは、と思い、心臓にちくり、と針が刺さった。
高校2度目の夏休みがやってきた。惰性のまま、合宿が行われる。
目標が見えない練習。イベントもなく、ただ辛いだけの時間だった。
コンクールメンバーは酷いものだが、降り板組は素晴らしい演奏をしてくれた。
来年の合宿は良いものになるだろう、と思いをはせる。
とうとう、コンクール県予選の日を迎えてしまった。
3年生のあきらめた顔にテンションが下がる。これでは、いい演奏ができるわけがない。
結果は、信じられないことに予選敗退となった。
全員、結果に呆然としている中、コンクールを見に来たのであろう、佐久先輩が須藤先輩に声をかける。
「須藤、辛かったな。
残念な結果に終わってしまったが、お前が熱心に育てた後輩が、思いを引き継いでくれる。
一生懸命やった事に一切の無駄はないんだ。
だから胸をはれ」
須藤先輩はこの言葉を聞いて、泣きじゃくってしまった。
他の先輩達が泣かない中、一人で。
佐久先輩は、須藤先輩が落ち着くまでそばにいて、私たち後輩は、ただ見守る事しかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます