第20話 やらかしたバレンタインデーとホワイトデー

真冬の寒さが肌を刺す。

2月を迎えた教室は、ちょっと浮足立っている。

理由は、間もなくやってくるバレンタインデーだ。

このイベントは吹奏楽部員でも参加できる。チョコを渡すか、渡されるかだけなので。しいてあげるなら、練習で忙しく、チョコを買いに行くのがちょっと難しいという程度だ。


私は、健太郎と数人にチョコをあげると決めていた。だが、2人は山ほどチョコをもらうだろうから、一計を練る。

バレンタインデーの当日、健太郎と数人は、紙袋いっぱいのチョコを携えて練習にやってきた。そんな紙袋を横目に、私は2人に同じチョコをあげた。

「「ありがとう」」

と2人にお礼を言われるが、それは一瞬の事だった。

健太郎が、

「ねぇ、美佑の僕たちへの感謝の気持ちがこれなの?」

と、抗議してくる。

ラッピングを開けた健太郎と数人は不服そうだ。なぜなら、イチゴチョコとミルクチョコが重なってロケットの形になっている、あれを綺麗にラッピングしたものを渡したからだ。

私は計画を弁明する。

「だって、2人とも山ほどチョコをもらうだろうから、かさばらない方がいいと思ったんだよ。来年は感謝の気持ちをもっと形にするからね」

私の弁明を聞いた2人は、

「ホワイトデーは、覚悟しておけよ」

と告げたのであった。


ホワイトデーがやってきた。

健太郎と数人は、それぞれお返しを渡している。もてるのも大変だね、と裕子と話をしながら2人の様子を眺めていた。

配り終えて疲れた様子の健太郎と数人が部活にやってきた。そんな2人からお返しをもらう。綺麗にラッピングされた大き目の袋だ。

「開けていい?」

そう聞くと、2人はにやにやしながら、同意する。

私は、してやられた。中身は、ママの味がする飴と、長い歴史のあるのど飴だったからだ。

あっけにとられている私をみて、2人は溜飲を下げた様だ。

私はなんとか、

「ありがとう。実用的で嬉しいよ」

とお礼をいう。

健太郎は、

「僕の本位じゃないけど、仕方ないよね」

と、ちょっぴり悲しそうな笑顔で言った。

数人も、

「喜んでくれて、何よりだ。来年は期待しているからな」

と涼しい顔で言った。

そんな2人は合奏の準備を始め、私もそれにならった。

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