第16話 恋に気付く2人
寂しさに浸る間もなく、今日も練習である。
準備中、ちょっと目が泳いでいる健太郎から声をかけられた。
「岩沢先輩と会えなくなっちゃって辛くない?」と。
私はびっくりして楽器を落としそうになりながら、
「岩沢先輩と付き合ってないよ。誰から聞いたの?そんな事」と健太郎に返した。
すると、
「噂になってるよ。僕も信じちゃったけど」
と、私にとっては衝撃の言葉が返ってきた。きちんと訂正しなくてはならない。
「本当に付き合っていないから。そういう事言ってくる人がいたら健太郎からも訂正してほしい」とお願いした。
健太郎は『わかった』と言うと、数人のもとへ向かっていった。
多分訂正してくれるのだろう。
私は、噂がショックで、2人が何を話しているのか気にもしなかった。
「なぁ、数人。美佑、岩沢先輩と付き合っていないんだって」
「本当か?」
「なんだか僕、付き合ってると聞いたとき、嫉妬心が芽生えて、違った事にほっとしているんだけど。だからさ、美佑の事が好きだ、って自覚したよ」
「なんでそれを俺に言うんだ。嫉妬をしたが、違って確かにほっとはしている。でも好きと言うわけではないぞ」
「数人さ、お前、美佑の前でしか笑わないって自覚してる?」
「そっか……俺も美佑が好きなんだな」
「なんで、自分の事なのに自覚がないんだよ……言わなきゃよかった。でも、僕たちライバルだね」
「そうだな」
「美佑は仲間であることをすごく大切にしているから、僕らの気持ちは引退まで伝えないようにしない?」
「ああ」
「あと、美佑が僕らのどちらかを選んだ場合、選ばれなかった方は、選ばれた方をぶん殴るという約束もしよう。後腐れがないようにさ。で、もし美佑が僕ら以外と付き合うことになったら、一緒にそいつをぶん殴りに行こう」
「わかった。約束する」
雅美は、この一連の話を聞いていたらしく、のちに教えてくれる事となる。
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