第2話 入学(今回も説明回かも)

 星蘭高校の入学式の日。火曜日。目を覚ます。眠気に耐えながらベッドを出てリビングに行く。わたしは前世から朝が弱いのだ。うがいをしてから冷蔵庫から烏龍茶を取り出し飲む。

「おはよう。」

 ようやく回ってきた頭で家族に挨拶する。今は大体7時くらいだ。入学式は9時からで、8時半までには学校に着く必要がある。未夢が一緒に入学式に行きたいと言っていたので未夢たちと家を出るタイミングを合わせる予定だ。

 歯を磨いてから朝ごはんを食べる。基本的にお父さんとわたし、妹のれんげの三人は一緒に食べてこの三人が家を出たあと、お母さんは一人で食べる。しかし、今日は入学式でお母さんが一緒に行くから四人で朝食だ。

 朝食を食べ終えたあと、少ししてからお父さんが仕事に行った。今日は中学校でも入学式があるらしく、れんげは休みだ。だけどれんげはわたしの入学式には来ないそうだ。まぁ、退屈な行事だから来なくて正解だとは思うけど。


 星蘭高校は制服がなく服装は自由だ。だから制服は制服でも中学校の制服で身を包む。

 準備はできたのであとは時間まで待つだけだ。


◇◇◇


 時間が来たので家を出る。未夢たちもちょうど出発したところだった。

「おはよー!葵!私たちもついに高校生だね!」

 元気溌剌とした様子で近寄って話しかけてくる。ちょっと近すぎる気がする。前からだけど未夢は距離感がバグってると思う。他の人に対しては普通なのにわたしにだけは距離が近い。幼馴染だからだとは思うけど毎回少しドキッとする。

「おはよ、未夢。今日も元気そうだね。わたしにも元気を分けてほしいくらいだよ。」

 だけど表面上は平静を装って返事する。

 前世でも経験したことなので入学式に思うところはない。だけど未夢がいるだけで少し心が温かくなるような気がする。


 未夢も昔と比べてだいぶ成長している。細かくはわからないけど身長は150cm後半くらいだ。わたしは165.2cmなのでわたしよりも小さい。わたしを見るときに自然と見上げる形になってかわいい。わたしのほうが身長高くてよかった、ほんとに。

 未夢は焦げ茶色の髪をミディアムくらいまでに伸ばしている。未夢が動くたびにその綺麗な髪が揺れ動いていてかわいい。わたしも最低限髪を整えてはいるけど未夢ほどじゃない。わたしは黒髪ロングという一定数好きな人がいる髪をしている。洗ったり乾かしたりするのに時間がかかって切ってしまいたいと思うこともあるが、未夢にこの髪型が似合っていると言われたので変えることはないだろう。


 ………、未夢は胸もだいぶ成長している。わたしと違って。サイズがどのくらいかはわからないけどけっこう大きい。少し目のやり場に困ってしまうことがある。わたしはお母さんにAよりのBだって言われた。まぁ、別にいいけどね!もとは男だし。全然残念だとか思ってないヨ。オモッテナイ。

 

 結論、未夢はかわいい。

 なので小学生のころはまだこどもだと思っていたのでなんとかなったが最近ではもう意識してしまっている。だけど邪な気持ちは抱かないようにしている。意識してしまっていることは今のところバレていないと思う。バレてしまったら引かれてしまうだろう。できるだけバレないように普通の幼馴染として過ごしたい。


 そんなことを考えていているといつの間にか学校が近づいていた。ぽつりぽつりと他の入学者が見える。

 道中、「同じクラスになるといいな~」、だとか「高校でも勉強教えてよね、私よりも頭良いんだから。」などと会話があったが如何せん集中できなかった。ちょっと反省。でも未夢がかわいいのが悪いんだ。いやうそだけど。未夢がかわいいのは事実で未夢が悪いってのはうそ。


◇◇◇


 入学式の看板の前で写真を撮るのは後回しにし、高校の校門を少し進んで建物の玄関口の前に行くと、わたしたちの学籍番号が書かれていた。


1317 楠木葵 ………… 1327 谷崎未夢


 良かった、同じクラスみたいだ。


 「やった!同じクラス!これからもよろしくね、葵!」

 「うん。良かった、同じクラスで。違ったらどうしようかと思ってた。」

 違ったら違ったで教科書の貸し借りとかができたとは思うけど、やっぱり少し寂しいからね。安心した。


 それから、親たちとは一旦別れてわたしたちは1-3の教室に向かった。教室にはすでに半分くらいの人がいた。学籍番号を見たかぎり一クラスだいたい40人くらいだったので教室にいるのは20人前後だ。すでに同じ中学校だったのかわからないがグループがいくつかできていた。一人でいる人もいるが話しかけたりするような勇気はない。


 とりあえず自分の席を確認してから片方の席で先生が来るまで待つことにした。

 

 「どんな先生が来るんだろ?優しそうな先生だったらいいけど。」

 「でもこういうときってクラスの担任はあとから発表されるだろうし今から来る先生は担任じゃないと思うよ。まぁ、何かの教科の担当にはなるかもだけど。」


◇◇◇


 少しの間雑談をしていると先生が入ってきた。白髪が目立つ黒髪の年のいった痩せ気味の男性の先生だった。いかにもベテランって感じのする先生だ。数学の担当をしてそう。受験期になると熱心になるタイプだな。


 時間になり生徒もほとんど来ている状態になると、先生が挨拶し、資料を配って連絡事項を言う。

 話が終わると、体育館に向かうようで廊下に学籍番号順に並べさせられる。他のクラスも同様で、廊下は一年生でいっぱいだ。ざわざわと騒がしい。うるさいのは好きじゃないから早く移動してほしいものだ。学籍番号の関係で未夢との距離が遠くて話せないのもマイナス点。

 

◇◇◇


 体育館に一年生が全員集まり、入学式が始まった。校長や生徒会長、新入生代表の長い話や一人ひとり紹介される来賓。前世のときからこのような式典は苦手だ。お行儀よくじっと座っていられないのだ。多動症というわけではないと思うが、何回も身じろぎしてしまう。


 ようやく入学式が終わり、教室に戻る。諸々の連絡が終わってから解散となった。自己紹介やらなんやらは明日行うらしい。


 未夢と教室を出てから親と合流し、入学式の看板の前に写真を撮りに行った。看板の前には他の新入生とその親たちが並んでいた。その列に並び、私たちの番が来た。

 わたしと未夢で看板を挟んで並ぶのかと思っていたが未夢はわたしと同じ方に来た。う~ん、近い。わたしのお母さんと未夢のお母さんがスマホのカメラをこちらに向ける。

 最初は無難に直立で、次にピースで撮った。お母さんたちが次で最後ね、と言い、「ハイ、チーズ。」と合図してシャッターを押す直前、未夢はわたしの腕に腕を絡めてきた。胸も当たっている。

 「ちょっ、未夢!?」

 突然のことでびっくりして顔が熱くなった瞬間、シャッター音が聞こえた。

 「ちょっと未夢、な、なんでいきなりっ。」

 「こんくらい親友なら普通でしょ?今更この程度でびっくりするなんて変だよ?」

 「そ、そうだよね、普通だよね。うん、普通。」

 未夢がそう言うならそうなのだろう。気にしないようにしないと。


 写真を撮り終えたわたしたちはそれぞれの家に帰った。入学祝いに外食をしたりするところもあるかもしれないが、お父さん抜きでするわけにはいかないため、わたしたちはしない。合格祝いはしたのでそれで充分だ。


◇◇◇


 夕食を済ませ自分の部屋に戻りベッドにダイブする。今日は疲れた。

 前世の高校生活は勉強ばかりで何かに追いかけられているような感覚だったため明日から始まる学校生活を少し面倒だなと思いながらも、未夢がいるなら楽しくなりそうかなと思った。


――――――――――――――――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

誤字やなにか違和感があるところがあれば教えてくれると助かります。ボク自身恋愛経験がないのでちゃんと理解していないかもしれないので。恋愛小説、漫画は割と好きなんですけど書けるかはまた別問題。


ちょっと主人公くんちゃん奥手すぎない?

ちなみに小学生半ばくらいまでは主人公くんちゃんと未夢ちゃんはお風呂に入ることもありました。さすがに主人公くんちゃんが元男だからってこどもの身体に欲情することはありませんでした。恥ずかしがってまともに未夢ちゃんの身体を見ることはありませんでしたけど。


未夢視点の話も書きたいっすね。主人公くんちゃんはバレてないと思ってますが未夢ちゃんは主人公くんちゃんが未夢ちゃんのことを意識してることをわかってます。


そういえば主人公くんちゃんが前世でいつ亡くなったか書いてませんでしたが、大学二年生の時ですね。主人公くんちゃんは前世でも恋愛経験はないです。前世では文化部や文化系のサークルに入っていて周囲にどちらかといえば女性が多かったので女性との接し方には多少慣れていました。が、あくまでも男女という隔たりがあったうえでの関係なので女性同士の関係には慣れていないんですね。前世では身体的接触がほとんどなかったので今世でも慣れてません。なのでちょっと触れたくらいでうろたえます。


まあ、とりあえずこれからの主人公くんちゃんたちを温かく見守ってくれると嬉しいです。


よく考えたらこの小説がボクの黒歴史になる可能性があるんだな、今気づいた。


次回投稿がいつになるかは不明です。書き終わったらタイミング見て投稿します。

2024/12/15星蘭学園が星蘭高等学校になりました。

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