第3話 お泊りの誘い

 高校に入ってしばらく経ち、1年生たちがだんだんと高校生活にも慣れてきたころ。


 この学校は進学校であり、授業でグループワークが多かったり探求の授業があったりする。生徒たちからは自称進学校だとか呼ばれることもあるが。

 そんなわけで同じグループの人とそこそこ仲良くなることもある。だけど一緒に昼ご飯を食べたりどこかに二人で出かけるようなことはない。


 前に一回わたしの隣の席で仲良くなった汐音さんという女の子を昼ご飯を誘って未夢とわたしの三人で食べたことがあった。未夢が微妙に不機嫌になったり汐音さんとわたしの会話に未夢が参加できないでいると未夢が汐音さんをなんか怖い笑顔でジッと見て汐音さんが居心地が悪そうにしたりしたので、昼ご飯は毎回未夢と二人きりで食べるようになった。汐音さんにはあとで謝った。許してくれたので良かった。


 他人とは最低限嫌われないようにできればいいと思ってるので付き合いは少なくても別にいい。けど未夢にはもっと友達とか親しい人ができてほしい。中学のころは小学生のころからのグループが既にできていてあんまり話すことがなかった。男子がわたしに話しかけてきたり告白してきたりすることがあったが、何日かあとに話すと妙によそよそしくなっていた。何かに怯えているみたいに。全く交流がないというわけではなかったが、中学の時は深く仲良くなるような人はいなかった。


 授業中に未夢のことを見るとニコニコして周りの席の人やグループの人と話しているので問題はあまりないような気もするけど休み時間や放課後はいつもわたしといるので少し心配だ。

 わたしが委員会の仕事などで放課後に帰るのが少し遅くなったときも未夢は待ってくれる。先に帰っていいとは言ってるんだけど。ちなみにわたしは図書委員だ。本は好きなのだ。ネット小説を読むのもいいけどやっぱり紙で読むほうがいい。物語以外でも知識を得られるのでたまに読んでいる。


 未夢は他人と話すときは愛想よくしている。わたしが小学生低学年だかのときに他人と話すときは笑顔で愛想よくするといいよーって言ったのを覚えているみたいだ。そのあとに信頼できる人にはあまり気にしなくてもいいと言ったけど未夢は今までずっとクラスメイトや先生に対して愛想よくしているので信頼してる人がいないんじゃないかと思っている。

 わたしと話しているときも未夢はニコニコしているけど他の人に対するものとは違っている。(*'▽')

 わたしは他人と話すときは多少愛想よくしているが未夢といるときはそういうことは考えない。


◇◇◇


 家に着くまであと半分くらいのところ。

 「ねぇ、未夢。もしかして、わたし以外に、ともだち、いない。?」(めっちゃ笑顔)


 「なんでそんなに検索エンジンみたいな感じで煽ってくるの?からかってる?」


 放課後の帰り道、さすがの未夢も困惑顔だ。面白いね。^^(性格悪い)


 「別に、葵がいてくれたら他に友達なんていらないよ。逆に聞くけど葵は私以外に友達いるわけ?」

 そう言いながらわたしの隣から少し下がって背中から抱き着いてくる。うれしいんだけど歩きにくいし離れてほしい。


 「えっ、い、いやいるよ汐音さんとか。あとちょっと離れて。誰かに見られてるかもだから...!」

 まだ出会ってそこまで経っていないがそこそこ仲良くなってるので友達判定でいいんじゃないかと思ってる。ちょっと、しれっとわたしのほっぺをつんつんしないでほしい。未夢の指少しひんやりしてる。


 「ふ~ん、そうなんだ。...あとで汐音さんと話をしないと。(ボソッ)」


 後半なんて言ってるのか聞こえなかった。ほっぺをつつくのをやめてさらに抱きしめてくる力が強くなる。もう離してもらうのは諦めて背中の感触を楽しむ。うへ。


 「ねぇ、葵。今週の土曜にどこか出かけたあと久しぶりに私の家に泊まりに来ない?」


 「あ、うん。いいよ?唐突だね?」


 「なんとなくだよ、なんとなく。しばらくお泊りすることなかったんだからいいでしょ?ふふっ。楽しみだわ。」


 最後に泊まったのは中2の最初らへんだったかな。受験勉強を始めてから忙しいからって理由でお泊りをしないようになった。本当は未夢がいろいろと大きくなってきてお泊りをするのにわたしの心臓が試されることが理由なのだけれど。だってお泊りのときは一緒のベッドで眠るんだよ?それにお風呂も一緒。別にしたいと思ってたけど言うタイミングがわからなくて言えないままだった。

 お泊りをしない言い訳がなくなってしまったため、もう断れない。わたしは基本的に未夢に対してイエスマンなんだ。全肯定だよ。

 今日は木曜日だ。あともう二日したらお泊りだ。健闘を祈る。


 「じゃあまた明日。」


 「うん、またね~。」

 

 家に着いて未夢と別れる。


◇◇◇


 玄関を通りリビングに入る。台所でお母さんが夜ご飯の用意をしている。テレビがついているがお母さんは見ていない。


 「ただいまー。」

 「おかえり、葵。」


 挨拶だけして二階のわたしの部屋に行く。小学生になってから与えられた部屋。飾り気はあまりなく、殺風景というほどではないが物は少ない。飾り気というと未夢から贈られた雑貨などだけだ。シングルサイズのベッドと勉強机、その上にあるデスクトップPC、本棚に入った趣味の漫画や小説、大学受験の参考書や興味がある分野についての本、ハンガーラックにかかったいくつかの私服。普通の女子高生よりかは数は少ない。


 スカートの類はあまり好きじゃないため少ない。前世が男だから。そのためパンツ(下着のことではない)のほうが多い。男物やシンプルなデザインのもの、パーカーが好きで着ている。おしゃれなものもあるがそれは未夢と出かけたときに未夢が選んでくれたものだ。未夢のほうがセンスがいいため自分で選んだものよりもわたしに似合っている。


 わたしの服の話は一旦置いといて、今日出た課題を済ませる。まだ授業が始まったばかりなので少ない。前世からそこそこ真面目だったので勉強は得意なのだ。



 夕食とお風呂を済ませて部屋でダラダラする。前世でもやっていたスマホゲーだ。前世とは違ってリリース初日からやり始めたのでゲーム内でも上位だ。

 このことからわかるかもしれないがわたしが生まれ変わったのは前世のわたしが死んだ後ではない。今年がちょうど前世のわたしが死んだ年なのだ。まぁ、わたしが死んだのは冬なのでまだわたしが死んだ頃ではないが。

 一度前世のわたしがどうなっているのか調べたのだけど、そもそもわたしの通っていた高校や大学が存在しないか前世とは別の場所にあるかなどしていた。今世はパラレルワールドということだと結論づけた。



 そんなことは置いといて、土曜日のお泊りだ。どうしよう。


 しばらく考えて何も思いつかなかったので今日はとりあえず寝た。



―――――――

ここまで読んでくれてありがとう。

忙しいのとモチベーション不足で遅くなりましたすみません。

実はある程度は早いうちに描き終わっていたんですけど忙しくなって時間が経ってどうやって締めようと悩んでました。


お泊り回が書きたくてこの展開にしました。急な気はしますけど。

主人公をいじめるのは楽しいね。

あとやっぱり女性がどの程度のスキンシップをするのかわからん。


次回は未定、気になる人は気長に待ってくれさい。

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