エピローグとして

9月18日


新戸先生「藤堂さん完璧な人格者。品行方正、理路整然、ただ極道なだけで、人品にも経歴にも曇り一つない」


藤堂部長「経歴に曇り一つない極道、すでにして矛盾しているんですよね。相互じゃなければ即ブロの案件」


日の子「牡蠣ラーメンうま」


 TLはいつものごとく、和気藹々としたものだった。

「あれ?なんかいつもどおりすぎない?昨日のなんだったの?」

 と訝しむ者もいたが、やがてTLの雰囲気に呑まれていき、9月17日、中秋の名月の夜のことは皆の記憶の彼方へと遠ざかっていくだろう。ニンゲンの話題がそうだったように。

 もちろん、藤堂部長と新戸先生にとっては別だ。鏡蓮華回がいつまでも人々の脳裏を去らないように、忘れたくても忘れられない記憶というものはある。

 彼らの愛の語らい、正確には新戸先生からの一方的な偏愛のゴリ押しなのだが、簡単にケリのつくものではない。

 その夜、ぬうさんがまた藤堂アートを投稿した。

 そこには、南禅寺山門の上で中秋の名月をバックに、藤堂さんの第三の足が新戸先生を貫く場面が描かれていた。このアートにのみ、あの夜の足跡が残ることだろう。


<完>

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座敷牢の中心で愛を叫んだ新戸先生 金魚術 @kingyojyutsu-mi

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