第41話 初めての怒り

■初めての怒り


ハジメの初めての怒りが頂点に達する。


自分が…自分自身が…こんなにも…許せねぇ…初めての…感覚だ…。


ハジメ:誰かへの怒りじゃねぇ…


ハジメ:自分自身が…


【前世の俺との回想01】


”ハジメ:友達を見捨てやがって!


ハジメ:あんただけは絶対に許さない!


前世の俺:はああ?見捨てる!?


未来の俺のことを頼りに来た…前世の自分にあんな言葉を投げつけて…”


ハジメ:俺のことを…頼りにしてきたのに…


ハジメ:お…俺は…


ハジメの身体から静電気のようなビリビリが発生する…。


タマ:ハジメ…おっ落ち着くみゃあ!?


エリ:は…ハジメさん!落ち着いて!


ハジメ:あんなにも…立派な人間に対して…


ハジメ:俺は…くっ…


・自分への怒り


【前世の俺との回想02】

”ハジメ:うるさい!僕はあのとき、あんたに助けられなくても


ハジメ:生き延びることができたんだ!


何も知らない前世の俺に八つ当たりして…


ハジメ:まだ、シラをきるつもりか…この薄情者!


おまけにあんなにも義理人情に厚い人間に対して…あんなにも最低な言葉を…


前世の俺:俺は誰も見捨てたりなんかしないぞ?”


ハジメ:俺は、俺はああ!!


ハジメの身体から無数のビリビリが発生し彼の身体を取り巻く。


彼の周囲に熱い風が入り乱れる。


タマ:ハジメええ!やめるみゃあああ!


エリ:ハジメさああ…やめてええ!


店員さん:なっ…なにこれ!!


お客さん:ど…どういうこと??


様子見を見に来た店員のおばさんも驚く。


周りにいたお客さんも目を丸くして見ていた。


ハジメ:俺が…未熟だから?


ハジメ:俺は自分のことばかりだ…


ハジメ:人のことを一切考えていない…


ハジメの周囲が急激に鎮まり、静寂な時がゆっくりと進む。


穏やかな空気に包まれて、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥った。


タマ:よっ、よかったみゃ…


エリ:だめよ!ハジメさん!


ハジメ:俺が…人を…


ハジメ:俺では…人を…


・過去の想い


【前世の俺との回想03】

”前世の俺:そして…王女と仲間たち…その未来を…


前世の俺:頼んだぞ…ハジメ


オレハ…オレニ…タノマレタンダ…。


オレハ…オレニ…タスケヲ…。


前世の俺:今日は…”未来の僕”に会えてよかった…”


【自分との対話】

”ハジメ:タスケテ…オレ…


その時…遥か遠い次元の彼方から、声が聞こえた。


青年:Who are you?


青年:お前は誰だ?


ハジメ:オレハ…ダレダ?


オレハ…ダレダ…?”


ハジメ:…プチン……


その瞬間、ハジメの中で何かが切れた。


ハジメ:俺は、ハジメ!


ハジメ:俺は、田中ハジメだああ!!


ハジメの周囲におびただしい数のビリビリが発生し、オーラの乱気流が起きた。


彼の周囲の空間が微妙に歪んでいく。


タマ:はっ、ハジメみゃ!?


エリ:ええっ…!?


店員さん:なっ…!?


お客さん:すっ…すご!?


ハジメが右手を前方に構えるとその周囲で空間が歪み、現世と他の世界をつなぐ「次元の扉」が現れる。


これが彼自身が鍵と言われるゆえんであることに誰も気づかなかった。ある、ひとりを除いては…。


ハジメ:俺は、俺だ!!


ハジメ:俺が、皆をまもる!


名は「ハジメ」姓は「田中」

彼の自分自身への怒りが彼を豹変させた。


■田中ハジメ


現世と他の世界をつなぐ次元の扉、全てはハジメ自身が鍵であった。


田中ハジメの力が明らかになる。


ハジメ:エリ、前世の俺がいなくなったときのことを…


ハジメ:もう一度…思い出してくれ…


エリ:はっ…はい…


エリ:んー…っ…


エリは機械の球体に吸い込まれたときのことを思い浮かべる。


ハジメは無言でエリの頭に左手を乗せた。


エリ:…えっ…


ハジメ:……


ハジメ:ありがとう…エリ…


ハジメ:お前にも辛い思いをさせたな…


エリ:なっ…なんで…


ハジメ:すまない…俺がもっとしっかりしていれば…


前世の俺:王女と仲間たちの未来を…


前世の俺:未来のお前に頼んだぞ…


ハジメ:クッ…


ハジメ:俺は…今まで何をやっていたんだ!


ハジメの周囲のオーラが増幅し上昇気流へと変化する。


タマ:ハジメ…


ハジメ:タマ…おいで…


タマ:ハジメはやっと…目覚めたみゃ…


ハジメはタマの額にも左手を乗せた。


彼はタマの記憶を読み取っていた。


ハジメ:…そうか…


ハジメ:ずっと…見守っててくれてたんだな…


ハジメ:ありがとな…タマ


タマ:はっ…ハジメにゃ…


ハジメ:…もう大丈夫だ、タマ、エリ!


ハジメの周囲のオーラが安定し、心地よい風が吹く。


過去の因縁が二人の行動を縛っていたが、再会によって新たな道が開ける。


・タマの役割


ハジメがエリとの再会について考えを巡らせる中、タマはいつもと変わらず彼のそばにいる。


タマの存在がハジメに安らぎと勇気を与え、彼の心を支えてくれる。


タマ:ハジメは目覚めたみゃ…


タマ:オラは…ずっと待ってたみゃ!


ハジメ:タマもずっと…我慢していたんだな…


ハジメ:すまない…タマ…


ハジメ:何も気づかなくて…


タマ:いいんだみゃ…


タマ:オラはハジメのそばで…


タマ:ずっと見ていたみゃ…


ハジメ:タマまで…俺のことを見ていたのに…


ハジメ:俺は…自分のことばかりで…


ハジメ:周りのことを一切考えずに…


タマ:しかたないみゃ…


タマ:ハジメも苦しんだみゃ…


ハジメ:思いやりの欠片もなく…


ハジメ:ただただ…自分の都合の良い解釈ばかりで…


ハジメ:最低だな…俺は


タマ:ハジメにゃ…昔の仲間たちは…


タマ:夢の世界で強制労働に…


タマ:休む間もなく…


ハジメ:ああ…わかっている…


ハジメ:前世の俺に頼まれたんだ


ハジメ:俺が皆を救う…世界を変えてやる!


タマ:は…ハジメにゃ…


タマ:ううぅ…みんみゃ…


タマ:やっと…助けられそうみゃ…


ハジメ:ひとり…苦労をかけたな…タマ


ハジメ:今日から俺も同士…お前の仲間だ!タマ!


タマ:みゃあああ!ハジメええ!


タマは嬉しさのあまり泣き崩れた。


ハジメはタマを抱き上げ、彼女の長年の思いに誓いを立てた。


ただひとり、仲間を助けるために悠久の時間を働いてきたタマ。


ようやく、彼女の思いを継いでくれる仲間が見つかった。


タマもまた、前世からの仲間であり、ハジメの運命を共にする存在である。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る