第38話 ふたつの因果

■因果の糸をたどる


ハジメはひとり帰宅への道を歩いていた。


そこにひとつの影が忍び寄る。


・因果との対話


ハジメ:教授は全てを知っている…


ハジメ:過去のことを知っている人間は他にもいるのか?


巫女:よう、ハジメ!帰りが遅いな


ハジメ:あっ、巫女さん、こんばんは…


巫女:どうした?元気が無いようだが?


ハジメ:いや…元気はありますよ


ハジメ:ただ、考え事をしていて…


巫女:何かあったのか?


ハジメ:実は…さっきまで…


ハジメは教授に話したこと、前世の記憶のことを巫女に話した。

巫女は笑いながら答えた。


巫女:ハァ?イーヒッヒッヒ!


巫女:いや~ゆかい、愉快!


ハジメ:ええ、なんで笑うんですか!?


ハジメ:そんなに面白い話はしてないですよ?


巫女:久しぶりに笑わせてもらったよ!


巫女:すまんね、ハジメ!


巫女:あんたそれ、騙されてるよ!


ハジメ:えええっ!今なんて…


巫女:あんた、あのジジイに一杯食わされたね!


ハジメ:教授が僕を?


巫女:ジジイはあんたに”伝えること”をやめたんだ


ハジメ:伝えること?


巫女:まぁ…ジジイがあんたを助けた事実は生まれたわけだ


ハジメ:…助けた事実?


巫女:あのジジイ…美味しいとこだけ持っていくな…


ハジメ:何がなんだかもう…


巫女:さすが”伝説の詐欺師”と言われたジジイだ


ハジメ:さっ、詐欺師いいい!?


ハジメ:じゃ…全部嘘なんじゃ…


ハジメ:理解が…追いつかない…


ハジメ:ギブアップです…教えてください、巫女さま!


巫女:よかろう、ハジメ!


巫女:わらわが真実を教えて進ぜよう!


ハジメと巫女が立ち話をしているとふたつの影が忍び寄る。


帰宅途中のハジメの友人、遠藤とサエコが彼と巫女の存在に気づいた。


・ふたつの因果


遠藤:サエコ…あれハジメじゃね?


サエコ:あっ本当だ、ハジメくーん!


遠藤:ちょ…ちょっと待て、サエコ!


サエコ:えっ、どうしたの?


遠藤:なんか変な女と一緒だぞ!


サエコ:ええっ…まさか女王さまじゃ?


遠藤:…かもしれねーな…


遠藤:ここはなめられないように…


遠藤:慎重にいくぞ!サエコ!


サエコ:うん!わかった、慎重にね…


何かを勘違いしている二人の友人がハジメに近づいた。


ハジメに説明する巫女が二人の存在に気づく。


巫女:んっ…?


遠藤:ごきげんよう、ハジメさま!


サエコ:こんばんは、ハジメ君!


ハジメ:あっ、遠藤にサエコ、今帰り?


巫女:あら、こんばんは!


遠藤:あらあら…ご機嫌うるわしゅう、ございますわ


巫女:ワクワク…お姫様かな?


遠藤:こちらのお美しいお姉さまは、どちらさまかしら??ハジメさま


ハジメ:どうしたんだ、遠藤?


遠藤:こんなお時間に殿方とふたりっきりなんて…


遠藤:まぁ、自信がおありで!


遠藤:うらやましいかぎりですわね~オーホッホ!


サエコ:えっ!なんで…お姫様言葉?


サエコ:そうか!女王様にはお姫様で対抗するのね!


サエコ:さすが!遠藤さんだわ!


ハジメ:あっ、巫女さんのことかな?


ハジメ:俺の友達だよ!


サエコ:ええっ、今なんて!?


遠藤:…ア…アワワ…


遠藤:い…いまなんつった…ハジメ??


ハジメ:俺の友達だよ!


遠藤:…お…オ…オレええ!?


サエコ:ハジメ君が、俺?


サエコ:あのハジメ君が…僕じゃなくて、俺!?


遠藤:あのハジメが…ハジメがあ…


遠藤:不良になってしまった!!


遠藤:ヒィー!祟りじゃー女王様の祟りじゃアア


サエコ:ちょ、ちょっと!遠藤さん、しっかりして!


遠藤:オ~レ~オ~レ~♪


遠藤:チャチャチャン!マツケン、サ・ン・バ♪


サエコ:ちょ、ちょっと!遠藤さん、だめよ!帰ってきて!!


遠藤:サエコ…カフェオレって、なんで…


サエコ:白いのはミルクよ!お願い、目を覚ましてええ!!


遠藤:お…俺は悔しいよぉ…


巫女:…大丈夫か?


サエコ:ヒィー!で、でたー!


サエコ:この泥棒猫が!!


サエコ:きょ、今日のところはこれで勘弁してやるわ…


サエコ:巫女…覚えてなさい!


遠藤:完敗だよぉ…うぅぅ…


サエコ:ほら!こんなところで泣かないの!


サエコ:帰りましょ!遠藤さん!


ハジメ:あっ…ちょ…


巫女:……?


サエコ:悔しいけど…


サエコ:今日のところは負けを認めるしかないわね…


遠藤:うぅぅ…


サエコ:私たちは強くなる!!


ハジメと巫女の前でもうひとつの因果が生まれた瞬間であった。


遠藤を抱えて歩くサエコの背中は、決意の炎で燃えていた。


■因果の終わり


ナビ:ハジメの因果関係が終わりを告げる、そこには驚愕の事実が待ち受けていた


・因果の連鎖


ハジメ:……


巫女:……


ハジメ:…何だったんだ…


巫女:…あのふたり変わってるね…


言葉にできない、それがハジメと巫女の率直な感想だった。


ハジメ:話を戻しましょう!巫女さん


ハジメ:あの…騙されてるって…


ハジメ:どういうことなんですか?


巫女:そう、つづきね!


巫女:あのジジイの話ね


巫女:あのジジイは詐欺師なのよ…


巫女:人をはめるのが得意な人間なの


ハジメ:じゃ…教授ってことも嘘なんですか?


巫女:いや…それは本当かな?


ハジメ:本当かな?って巫女さんも知らないんじゃ?


巫女:いや、違うんだ!


巫女:どこまで話していいのか、微妙なラインでな…


ハジメ:教授といい、巫女さんといい…


ハジメ:そんなに俺に話しちゃマズイことでもあるんですか!?


巫女:マズイというか…こればっかりは…


巫女:「本人たちの気持ち」を尊重せんとな


ハジメ:俺の…気持ちですか?


巫女:あのジジイはお前に冒険を楽しめと言ったんだろう?


ハジメ:楽しめというか…冒険がつまらなくなるぞ…って


巫女:そうか…ならワシも下手なことは言えなくなるな…


ハジメ:だったらどうすれば…


ハジメ:何がなんだか…


ハジメ:頭がパンクしそうだ…


ハジメの弱音に渋々と答える巫女。


そこには驚愕の事実が待っていた。


・驚愕の事実


巫女:あのジジイのことだしな…


ハジメ:ジジイのことでも構いません!


巫女:ジジイの事実か…


ハジメ:ジジツでも何でもいいんです!


巫女:んー…どこから話そうか…


巫女:いざ、話すとなると…


巫女:難しいな…


ハジメ:些細なことでも構いません


ハジメ:何かヒントを下さい!


ハジメ:お願いします!


巫女:あれはお前だ、ハジメ


ハジメ:ん?…今なん…


巫女:だから、あのジジイはお前だ、ハジメ


ハジメ:またまた~御冗談を…


巫女:ジジイのジジツが欲しいんだろ?


ハジメ:ええ!ジジイが俺ええ??


巫女:ヒントをくれと言ったのはお前だろ?ハジメ


ハジメ:それはヒントじゃなくて…結論やないかい!!


ハジメ:やばい…この人は天然か…


驚愕の事実、スタート教授はハジメ本人だった。


ヒントではなく、いきなり結論を言う巫女にもっと驚愕したハジメであった。


彼の冒険はさらに複雑化し、新たな挑戦と発見が待ち受けている。


つづく。

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