第34話 夜の熱帯平原
夜の熱帯平原にて、屈強なボス狼と遭遇した蟹江静香は、両腕の鋏を砕きながら、辛くも勝利した。大量の経験が獲得され、レベルアップにより、その場での急速脱皮が完了した。捥がれた腕と脚は全て再生し、彼女は再びレベル2となった。
〈状態〉 デスマスク 中型 LV2
〈称号〉 親喰らい
〈名前〉
HP 354/354
MP 126/126
筋力 86+2
頑強 88+2
素早さ 90
器用さ 71+8
知能 74+2
幸運 78
〈
〈攻撃系
薙ぎ払い
〈基本系
頑強+LV1
器用さ+LV4
知能+LV1
英祖の力
〈攻撃系魔法〉 ファイヤーボール
ストーンシャワー
〈補助系魔法〉 ビルドパワー
〈装備〉 大魔獣の鎧(防御力+20)
〈呪い〉 必要経験 3倍
――――――――――――――――
「大分表記がごちゃ付いて来たな……」
『
「自分の意志で
『表現法の限界と言うものがありますので……』
レベルアップが行われたことで、喪失した部位が復活し、再びカルチノーマの鋏が使用可能となった。
「やっぱりこれがないと、火力が出ないよねぇ。全回復できたし、引き続き夜の狩りを行おう。慣れてしまえば、こちらの方が経験値効率高いだろうし……。集団相手ならイニシアティブを取って逃げて、それ以外は戦う。これでいいと思う」
『よろしいと思います。夜の探索も昼と同様、3回が適切かと思われます。先程の戦闘分を差し引いて、あと2回。戦闘を行うことが出来るでしょう』
探索判定【6】【2】 休憩スポット発見!
水の湧き出るオアシスを発見した事で、水分補給が出来た。デスマスクはその性質上、水分を大量に蓄える事が可能となっており、渇きに対して強い耐性を持っている。
「位置的にはかなり拠点から遠いから、憶えておいて損はないかも」
『マップにブックマークしておきます。探索回数に応じて、熱帯平原中央地帯の地形を記してきましたが、これで全て踏破した状態になりました。おめでとうございます』
『蟹江静香は【冒険家】の称号を得た』
【冒険家】――説明。
各地域を探索し、踏破した者に贈られる称号。マップを埋める事で、自身の位置を正確に把握し、一度行ったことのある地点に最速で移動する事が可能となる。【ファストトラベル】を実行すると、目的地へ即座に移動可能となり、移動時間が通常の半分になる。
――――――――説明終了。
『大きく時間短縮が可能となりました、これに伴い、私のオペレーションシステムと組み合わせる事で、自動判定で確実に拠点への帰還が可能となりました。その間、全ての戦闘を回避するので、注意が必要です』
「便利だなぁ……。ん? 熱帯平原中央地帯……? って事は、全部じゃないの?」
『生徒さん達のマップデータと統合したところ、熱帯平原は現在値の中央に加え、東と西にも領域が広がっています。東は人間も多く住んでいる地帯で、西に行けば行くほどモンスターが多くなるという話です』
「修行という観点で見れば西に行くのが正解か……。人間に見つかるのもリスク……。しかし、生徒を見つけない事には話が進まないし、悩ましい所……」
『今後の予定はどういった切り口で進みましょうか?』
「取り合えず、サムソンから得た情報を頼りに、北東の山岳地帯で生徒の捜索をして、その傍らレベルを上げて……ひとつ聞き忘れていたことがあるんだけど」
『なんでしょう』
「サムソンが【願い結晶】シリーズは、基本的にモンスターから獲得するって言っていたんだけど、最初に掲示された【願いの宝珠】って結晶の最上位だよね? どんなモンスター倒したら出るの?」
『今の傾向ではなんとも言えませんね。レベルが高ければ高い程その可能性はあります。ましてや蟹江先生はモンスターを倒した場合、最低でも【輝き】までは保証されるというのが現状分かっている事です』
「神界機構が正式な入手方法を掲示しなかったのはどういう理由なの?」
『【神界機構】でも、許可がない世界の内情や、データを勝手に閲覧する事は出来ないのです。オペレーターが
「それなのに【願いの宝珠】の存在は、知ってたんだね」
『そのようですね。私も【データとして知っていた】というだけの話ですので、理由までは存じておりません』
「となると、話はここまでか……。神界機構にも現地での情報には不明なものがある……。なんだか後から生えた設定の様な不自然さがあるけど、まぁ、いいか」
【トピックス】――――――――
強化魔法は基本的に効果時間が短いため、戦闘前に掛けることは出来ない。
――――――――――――――――
探索判定【6】【3】 アイテムを発見した。
【重厚な大斧】――説明。
攻撃力+21、特殊効果は特に存在しない大きな斧。持ち手も全て鉄で出来ている為、扱うには筋力が必要となる。デスマスクの握力で握っても簡単には壊れない。
――――――――説明終了。
「死体にある傷跡から察するに、あのボス狼の餌食になったんだろう。
『この世界の文字はまだ学習していないので、私にも読む事が不可能です。何処かで本や辞書などありましたら、是非とも学習させてください』
「流石はオペちゃん。学習能力も備わってるんだね」
『リスニングは不得意ですが、言語なら赤点が回避できます!』
「その時が来たら頼むわ……」
何も期待できそうにないと心の中で思いながら、大斧を振り回し、感触を確かめていると、ふと、ナイフを振り回して抵抗する蟹の動画を思い出した。今、自分はアレの状態になっているんだなと彼女は思うと、不思議と笑いが込み上げてきている。
「感触は悪くない。人間なら全身で振り回すような武器も、私なら片方の鋏で扱える。これは便利かも……左鋏に持ち替えて扱おう。腐食したら最悪だ」
蟹江静香は、大斧を薙ぎ払い専用武器に設定した。
【トピックス】――――――――
【道具】と云うものは、武器を持たない人間の知恵により生み出された物であり、野生生物の牙や爪に類する役割を持っている。もし、牙や爪を持つモンスターが道具を使い始めたとしたら、人間にとってそれは恐怖でしかないだろう。
――――――――――――――――
探索判定【4】【6】 新たな敵影を発見した!
優れた視力で敵の形を捉えると、小型で緑色の肌をした、二足歩行の存在が集団で歩いている。
「なにあれ? 小人? 妖精かな?」
『過去のデータベースから検索すると、【ゴブリン】である可能性が高いですね』
「小鬼ってこと⁉ おぉー! 鬼か~! 改めてファンタジーな世界観だな。私は児童小説で長編読んだくらいで詳しくないけど、この世界でも亜人の扱いなのかな? コミュニケーション取れるタイプなのかな?」
『人間との出来事を考えると、あまりお勧めしませんね。おそらくは言葉も通じないでしょうし……』
「見た所、相手は4体か……。サソリより強かったら死ぬか……。念話で話しかけてみて、ダメだったら殺す感じで行くか」
『人間の場合は戦いを回避したというのに、ゴブリンの場合は討伐するのですね?』
「ゴブリンが私のイメージした通り、人間の村を襲って略奪を行い、女子供を辱める存在だったとしたら、駆除対象でしょ。彼らが自身の社会を形成し、生産も自分たちで行って平和に暮らしているんだとしたら、それは出来ないけど……ん?」
『どういたしました?』
「あのさぁ……袋から人間の髪の毛みたいなのが見えるんだよね……しかも、まだ生きてるっぽい……。あっ、殴った……暴れたのか……?」
『もう少し観察してみましょう』
「たしかに……夜だし、見間違えても困るからね」
蟹江静香はゴブリンを注意深く観察することにした。
【トピックス】――――――――
この世界には様々な種族が存在しており、領地問題や種族間での争いが絶えない。それを収めたのが、八英祖と呼ばれる絶対的な上位者たちである。
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