第29話 ビオトープ
本日2度目の探索を終え、戦闘の後処理を行う。イタチとヘビは形を残していた為、蟹江静香と鳴海蝶子による【捕食】の対象となり得る。しかし、捕食は一度発動すると、捕食対象が消失してしまう為、これらを公平にわけることにした。
『倒した外敵に手を入れると、判定が剥ぎ取りとなってしまい、捕食の対象から外れてしまいます。【モンスターの肉】の様に食べる事で効果を発揮するアイテムとは異なる理が存在している様ですね』
このルールにより、1体の獲物を分割して複数人で分け、捕食を行うなどの行為が不可能となる。蟹江静香はイタチを、鳴海蝶子は蛇を捕食した。
『
【1】【1】【1】
『幸運が6増加しました』
「最高値達成!」
〈状態〉 デスマスク 中型 LV1
(右鋏喪失)(脚喪失1)
〈称号〉 親喰らい
〈名前〉
HP 152/152
MP 64/64
筋力 59+2
頑強 60+2
素早さ 62
器用さ 47+8
知能 47+2
幸運 55
〈
〈攻撃系
薙ぎ払い
〈基本系
頑強+LV1
器用さ+LV4
知能+LV1
英祖の力
〈装備〉 なし
〈呪い〉必要経験 3倍
――――――――――――――――
『
【3】【1】【3】
『素材が肉体と適応しませんでした』
「あら、残念」
「じゃあ、鳴海さんにはドロップした方のモンスターの肉をあげるね」
「助かりますわ」
鳴海蝶子は受け取ったモンスターの肉を細かく噛み砕き、肉団子を形成してゆく。
『
【3】【2】
『――器用さLV1を取得しました』
〈状態〉 雷撃蜂 小型 LV2
〈称号〉 親喰らい LV5
〈名前〉
HP 134/259
MP 100/121
筋力 56
頑強 53
素早さ 53+4
器用さ 66+4
知能 55+4
幸運 55+2
〈
〈攻撃系
〈基本系
器用さ+LV2
知能+LV2
幸運+LV1
――――――――――――――――
「やはり、肉食の蜂は、獲物を肉団子にして食べるんだねぇ……」
「そうですわね。これは完全に習性ですわ。心なしか、生肉を食べるよりも生理的に受け付けやすい気がしますし……」
ここで蟹江静香は、鳴海蝶子に対して、モンスターの肉について話をしておいた。以前から感じていた、美味しさの原理についてである。
「なるほど、蟹江先生の言う通りかもしれません。わたくしも長い間、肉団子を制作してきましたけど、レベルの高い生物から出来たモノの方が、非常に美味しく感じる事がありました。なんと言うべきでしょうか、アミノ酸における旨味の様な感覚ですが、それともまた違う、食べる事で直接身体に流れ込む、活力の様なもの……」
この謎の美味しさがなんなのか、これを求める事で、現在の状況が打破できるわけではないが、日々の活力という点においては無視できない要素であった。
「相塚さんは、体液を摂取する際に、特別に美味しく感じたりする事はありませんでしたか?」
「意識して、いませんでした……。生きることに気を取られていて、味の事までは……。ごめんなさい……」
相塚みんとは明らかに気落ちしている。期待に応えられなかったからだ。
「んもう! そんなことでいちいち落ち込んでいては、身体のコンディションに関わりますわよ。折角自分の機嫌をコントロール出来るようになったというのに……。いいですこと? 思い悩まずに、出来なかったことは次出来るようになればいいの!」
「は、はい……おねえさま……♡」
「みんとさん……、その、お姉さまってやつ……気に入ったのかしら?」
「うん……♡ 蝶子さん、おねえさまみたいだから……♡」
鳴海蝶子は、相塚みんとの甘える様な視線に折れ、お姉さま呼びを許可した。
そして、話が一区切りついたところで探索が再開された。
【トピックス】――――――――
人にとって、処世術というのは様々である。
――――――――――――――――
「さぁ、張り切って3戦目と行こう!」
外敵を探して彷徨い歩くが、一向に生物の気配はない。本来であれば感じる小さな虫の気配すら、この場には存在していない。
「……この状況で何かを話題にすれば、それがフラグに成り得る……」
「そうですわね。この広い熱帯平原地帯で、モンスターのひとつも出会わないのは、不自然ですわ」
「この匂い……みなさんっ、隠れてください……!」
相塚みんとが声をあげ、隠密を促した。その意図を汲み取り、全員が息をひそめる。物陰に隠れて気配を消す事数秒、熱帯平原に小規模の地震が発生した。
日本に住んでいた3人にとって、小規模の地震は然程珍しい事ではない。しかし、ここは熱帯平原地帯である。あり得ない事はないだろうが、珍しい事は確かである。
さらに数秒後、地面に巨大な穴が開き、中から10メートル越えの巨大な蟻が出現。その後に続いて大量の兵隊蟻が続々と現れた。
「すごい大きい蟻と、たくさんの兵隊蟻……。あれって……!」
「はい……あれが、八英祖の3番目、わたしの母、
「蟻たちは一体何の目的があってこの地に……?」
「女王とその兵隊たちは、熱帯平原の秩序と環境維持のため、時折パトロールと行うの……。そのついでに環境を保持する為のメンテナンスもして……。砂漠化しないようにしてるみたい……」
「あぁ、そういえばこの熱帯平原一帯は、全て支配されてるって話だったね」
相塚みんとの言った通り、彼らは各自で草木が剥がれている部分に三日月形の浅い穴を作っている。この作業は、雨水をその場に留める効果があり、そこに風が吹くことで吹き溜まりが作られ、運ばれてきた種子と溜まった水を使って緑化が進み、増えるという仕組みである。
「あれは、【デミルーン緑化農法】⁉ なんでそんな事が出来るんですの⁉ 彼らは本当に蟻なんですの⁉」
「すごい……! 確かに理にかなっている。熱帯平原はその気候の性質上、雨季と乾季に分かれていて水の確保が不安定だ。それを解決する手がアレなんだね……」
もはやふたりは、驚きを通り越して感心してしまっていた。明らかに本能で行動する蟻の生態を大きく超えている。
「モンスター化っていうのはそこまで、生物に大きな進化を促すというのか……。世代交代をしていないのに一代でこの向上率はおかしいよ。大脳の発達率が高くなるのか……? 本能の伝承数自体が向上するの? どちらにせよすごい事だっ……!」
本来生物は子供を残し、世代交代を繰り返す事で病気に対して耐性を得たり、身体的特徴を合理化して、その環境に少しずつ適応していく事がセオリーである。【モンスター化】はそれらの要素を全て、短縮化してしまっている。
『貴重なデータ採取が出来ました。ありがとうございます』
女王が的確な指示をだし、兵隊たちはそれに従って着々と施工が完了していく。その手際は見事なもので、1時間もしないうちに終了した。
「まぁ、流石にあの連中に喧嘩を売るような輩はいないよね」
「そうですわね。しばらく外敵が見当たらなかったのは、彼らの訪問が予知出来ていたか、または定期的なイベントである為知っていたのか、どちらかですわね」
「そろそろ……退散するみたいです。気付かれてなくて、本当によかった」
「我々もそろそろお
『『そこの3匹、先程から余の周辺で何をしておるのじゃ』』
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