第23話 大討伐
カニ生21日目――――――――
木下藤吉の進化が無事に完了した。
〈状態〉
〈名前〉
HP 210/210
MP 92/92
筋力 69
頑強 60
素早さ 63
器用さ 61
知能 62
幸運 60
〈
〈攻撃
〈装備〉 黒曜石の棍棒(攻撃力+10)
竜トカゲの軽鎧(防御力+5)
パリイ・ブレスレット
――――――――――――――――
【
エルダーエンティより生まれ落ち、親の愛を知らずに生きた猿。孤独でもあり孤高であった存在は、自らの意志で己の進む道を選んだ。厳しい修行と激しい生存抗争の果てに、上位種として進化を果たす。晴天猿は【
――――――――説明終了。
「オペレーターからの説明通り、全体的な
「藤吉くん、見違えたね。エンティの時よりも一回り大きくなっているよ!」
「
「蟹江ちゃん。こやつ、新顔か?」
「あぁ、見ただけじゃ分からないよね。このバッタ型怪人は宮田悟くんだよ」
「ほほう! あの宮田であったか! 姿かたちが変わろうとも、その剛脚は健在である様だな!」
「あぁ! この身体は人間の時よりも大きくスプリント可能となっているぞ! 戦闘でも期待してくれ!」
「戦闘のスタイルから考慮して、ふたりにはコンビを組んでもらおうかな。オペちゃん。システムの更新をお願い」
『木下藤吉、宮田悟、両名のオペレーターシステムは同期とアップデートを完了しておきました。すぐにでも活動再開が可能です』
「さすがはオペちゃん。優秀だ」
『もっと褒めてくれても構いませんよ? 褒めて伸びて増長するタイプです』
「謙虚であれよぉ!」
こうして木下と宮田はチームを組み、蟹江静香は単独での探索を再開した。ひとえに、探索の範囲と効率を上げたい一心にあった。
――熱帯平原
蟹江静香は、蟻塚住宅からそのまま北上し、木下宮田チームは西側を探索する。自動車の様な速度で熱帯平原を横断していると、デスマスク特有の超視力が、人間達の大規模な団体を捉えた。彼らは広い敷地に陣を設営している。
「キャラバン……。というには規模が大き過ぎる。装備が各々違う所から察するに、軍隊の様には見えない。何が目的なのだろう」
『ざっと50人は人間が居ますね。何かの大討伐でしょうか?』
「この辺で縄張り争いをしているボスは結構倒しちゃったし、その中に討伐対象の大物が居たのかもしれないね。かなり美味しかったからレベルも高かったと思うよ」
『もし、彼らがそれらを狙って団体で遠征しているとしたら、大変ご苦労な事です。肝心の対象が既に胃袋に収められているとも知らず……』
「何か情報を得られるかもしれない。物陰に隠れながら様子を探ってみよう」
慎重な行動が求められる。隠密判定【3】【4】 成功!
体が大きくなっているとはいえ、小蟹時代から培ってきた隠密行動はお手の物。見事、気付かれることなく、超視力が活用できる範囲にまで近づく事が出来た。
天幕の数は多く、人間の数も50人と少なくない。統率がとれているのか、それぞれが思い思いの行動を取っている。食事を用意したり、草刈りをしたり、装備の点検を行う者もいた。
「この図体ではこれ以上近づけないか……」
『そうですね。この大きさが目に入らない様なポンコツは冒険者としてやっていけないと思われます』
軽自動車程もある生物だ。大きさだけでも十分に目立つ。
「岩に擬態とか出来ないかな? 泥とか被れば行けそうじゃない?」
『良い考えですね。私の計算では泥で全身をコーティングする事で、隠密の成功率が60パーセント上昇すると出ています』
「それはゲーム的な仕様でのパーセンテージなの?」
『これまでの戦闘経験と、探索中の隠蔽率を独自の計算式に当てはめてみました。
「オペちゃんもなかなかに言うじゃん……。これでも
動物たちが泥浴びをしている場所に向かい、装備ごと泥でコーティングを施す。気分はさながら、ゲリラ部隊である。泥と周辺の雑草が隠蔽率を高め、まるで岩の様な存在感を醸し出してる。
『間近で観察しない限り、モンスターとは思わないでしょう。これで安心して接近できますね』
「よーし! バレない様にこっそり近づくぞー!」
【マスク判定】【マスク判定】
いざ潜入開始と意気込む最中、蟹江静香の脳裏にある不安がよぎる。
「外敵の気配を察知したりする
数多くの戦闘経験と探索経験から、蟹江静香はその可能性を導き出した。
『人間との戦闘経験が無いので今まで考慮していませんでしたが、その可能性は十分にありますね。いかがいたしましょうか?』
「人間に出会えた嬉しさでつい舞い上がってたけど、切り上げよう。この集団相手に戦闘ともなれば犠牲者を出してしまいかねない。相手が友好的とも限らないし……」
【マスク判定】【マスク判定】
その時、デスマスクの超視力が陣の中から一点の光を見つけ出した。
「あの光! まさか望遠鏡⁉ 逃げ……!」
次の瞬間、盛大なラッパの音と共に、群衆の叫び声が響いた。距離にしておよそ100メートル。逃げるのに十分な距離がある。そう考え蟹江静香は踵を返した。
「【サンダーブレイク】」
『不意打ちです!』
「なんの!」
対不意打ち判定【2】【3】 持ち前の知能と機転で魔法のダメージを軽減!
咄嗟に全ての脚を地面に突き立て、浴びせられた電撃を地中へと流した。この対応により、ダメージの軽減と麻痺の回避には成功したが、電撃によって泥のコーティングは全て剥がされた。その時点で、隠密効果が失われる。
「ふぅん……。随分と頭が良いねぇ……。流石はカルチノーマの子供だ……」
続けて四方からの攻撃! 対不意打ち判定【1】【4】 成功! 四方から放たれた鉤縄が鋏と脚に絡みつく。
「この程度のロープ! 切断してやる!」
カルチノーマの鋏を発動させ、ロープを腐食させる。いかに頑丈に編み込まれたロープであろうとも、物体の耐久性そのものを低下させる腐食には逆らえない。
「ふむ、やはり抵抗するか……。やれ」
未だ姿を見せない相手が、合図を送ると、さらに鉤縄が追加される。無尽蔵に放たれる鉤縄に、蟹江静香も驚きを隠せないでいた。
「こんなにたくさんの鉤縄を一体どうやって……! 私がこの場にいる事が既に察知されていて、泳がされていたというの……⁉」
『周囲に人の気配はありませんでした。しかし、
「オペちゃん! なんとかならないの⁉」
『危機的状況の対応に関してはサービス対応外とさせて頂きます。ご了承願います』
「ご了承できるかぁっ! うぉおぉ! 縄が締まるぅ!」
脱出を試みるも、鍵縄の数は多い。全力で力任せを行う。
筋力抵抗判定 自動失敗!
筋力の抵抗判定を行うべき相手が多過ぎるため、判定は自動的に失敗となった。いかに蟹江静香がモンスターとして強力な個体であったとしても、集団となった人間の力には勝てない。純粋な筋力の足し算と、人間の作る道具によって、彼女はその場に拘束されてしまった。
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